ピストンエンジンは永遠か!な?

バイクを中心に話題を紹介します

アイアンスポーツのクラッチ

2005年09月16日 | メンテナンス
ワタシはアイアンスポーツは乗ってはなかなか面白いと思いますが、メンテナンスはあまり積極的になれません。
一口で言うとかなり厄介です。今回は数少ないチャンスがあったので、何回かご紹介いたします。
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これは、クラッチのプレッシャースプリングです。このような大きいコイルスプリングは他では見た事がありません。
組み上げるにはこれを縮めなくてはなりません。
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使用頻度が多ければ専用工具を作りますが、そうでもないので今回は非常手段です。
あまりこのやり方は紹介したくなかったのですが、非常手段と割り切れば「どのようなこともできるという見本」としてあえて紹介させていただきました。
*決して同じ作業をしないようにお願いします。もし怪我をされたり、部品の故障を招くことになっても責任は負いません。


エンジンの焼き付き②

2005年09月16日 | エンジンの怪
エンジンの焼き付きは現在ではほとんど見られなくなりましたが、もし起るとしたら「間抜けな理由」しかありえないのでしょうか?
2サイクルエンジンは現在の排ガス規制により、すでに絶滅に近い状態ですが、1990年ころにはスゴいレーサーレプリカブームというのがありまして技術的にも一つの頂点であったのでしょう。
その背景には、1973年にアメリカの環境保護委員会が2サイクルに不利な規制をしたことにより途絶えてしまった2サイクルエンジンを、ヤマハが水冷にしてオイルスモークを大幅に減らしたRZシリーズのリリースにあります。
毎回転ごとに燃焼行程をもつ2サイクル(2ストローク1サイクル)エンジンは、4サイクルエンジンに較べてパワーは同排気量だったら2倍近く(理論上)あるし、カムで動かすバルブなどないので構造が簡単でコストも安く済む、小型軽量、高出力安価という理想的なエンジンなのですが、構造上どうしても潤滑オイルを燃料に混ぜなければならないので、排ガスに炭化水素が多く含まれしまい、それを克服できないと規制に対応できないので姿を消してしまっています。
水冷とともにオイルスモークを大幅に減少させた分離給油の技術の出現以前は、ガソリンスタンドには混合ガソリンといって予めオイルを混合させたガソリンを売っていたのですよ!!いまもレーサーは混合ガソリン使っていますけどね。
ロードレースもモトクロスも今や4サイクルに取って代わられようとしていますが、ワタシの知り合いに、S80という趣味?のロードレースに、以前のモトクロッサーの2サイクルエンジンを使って自作のレーサーを作って、出場し続けているチューナーがいます。彼のエンジンのシリンダーは2時間しか持たないそうなので、ガソリン代よりシリンダー代のほうが高くついてしまいます!!
初期の航空機エンジンで、重さで考えるとバルブの消費量が燃料より大きかったというのがあったそうですが、これは100年も前の話です。

熱で変形!

2サイクルエンジンでは、シリンダーに開いた穴(ポート)が4サイクルエンジンのバルブの替わりの役目をいたします。
レースエンジンは、吸排気をダイナミックに行いたいので、この穴を大きくするのです。一つの穴を大きくすると、そこにピストンリングが嵌ってしまって動かなくなりますので、複数の穴を設けますが排気ポートの場合は大体2つですね。その穴の間はどうしても狭くなってしまいますが、両脇を高熱の排気ガスが通っているし、水冷でも水が通らないのでココがどうしても熱を持ってしまうのです。アルミの熱伝導が良いといっても熱の伝導は断面積に比例するので、空冷エンジンのフィンのような形状(薄くて長い)は意外と熱の伝導は悪いのですね。
特に熱膨張率の大きい金属でできた部品は、形状によりその膨張による変形があります。シリンダーなどはそういったことが起ると都合が悪く、適切と思われていたピストンクリアランスも、想定外に変形してしまってはなにもなりません。
もう一つ余談ですが、1960年代にグランプリレースで大活躍した、某メーカーの時計のように精密だと評されたエンジンでも、マグネシウム製のクランクケースが熱変形でオイル漏れが止まらなかったそうです。

熱以外でも変形!

2サイクルエンジンではシリンダーとヘッドをクランクケースに固定するのに貫通スタッドボルトは使いません。ハーレーのショベルヘッドエンジンのように別々にボルトで固定します。その理由は貫通スタッドでシリンダーをサンドウイッチみたいにはさんで締め上げると、アルミ製のものは変形してしまうからなんです。
2サイクルエンジンのシリンダーのように、構造上変形しやすいものは固定方法をかえて解決できましたが。それは2サイクルエンジンはシリンダーヘッドが小さく軽いはという利点がありました。4サイクルエンジンでは簡単にはいきません。
600cc単気筒OHCのエンジンでは、ヘッドはシリンダーの倍の大きさがあり、重さはそれ以上です。このエンジンはシングルレースと呼ばれたビッグシングルエンジンだけで行われたにレースで人気が高く、ワタシも使った事があります。やはりサンドウイッチ方式だとビッグボアのシリンダーが変形するのを嫌がったのか、ショベル方式で上下別々の固定方式をとっていたのですが、レースの過酷な状況ではよくシリンダーがパックリ割れていました。
4気筒エンジンではシリンダーの剛性が高いので、ほとんど貫通スタッドボルトですが、見た事があるひとは気付いているかな?と思いますが、スタッドボルトのネジ以外の部分はネジ径より細くなっています。これは細くしてあるところが捩れてオーバートルクを防止してあるのですね。
ドラッグレース用のゴリラシリンダーなどを使う場合は、用意されているクロモリ製のごついスタッドを必ず使用してください。
ハーレーのエンジンではエボ以降は貫通スタッドを採用しています。それにより、新車組み立てのコストは下がったようですが、ピストンのサイズアップのためにボーリング加工する場合には、トルクプレートなるものを使って使用状態と同じ条件で切削加工しないと、くみ上げた場合に変形してしまいます。
ワタシが10年以上前になりますが、スズキグース350を450にボアアップしてレースに使ったときも、シリンダーの1部がガスの吹き抜けで溶けたようになっているのを解消した方法がトルクプレート使用のボーリングでした。

エボリューションエンジンの怪

ハーレーエボエンジンの整備において、ワタシが何回も経験したことをここで紹介しましょう。
今話題のアスベストはその昔はペーパーガスケットにも含まれていて、いまのアスベストフリーのガスケットより性能がよかった気がします。ガスケットの性能とは、遮断性能が持続することにありますが、エボのシリンダーベースガスケットは純正部品でも3年くらいで弾力を失ってしまい、オイルが滲んできてしまいます。それはガスケットを取り替えれば簡単に修理することはできますが、時々、外したシリンダーを良く見ると縞模様になっているのがあります。その縞模様はスタッドボルトが通る穴の付近が、模様をつくっている変色度合いが強いですね。
このことを考察してみると、鉄のスタッドボルトは熱の影響はさほど受けませんが、シリンダーはアルミで、しかも熱の影響は多いに受けます。そこに想定外のオーバーヒートで許容範囲外の熱膨張をしたとすると、オーバートルクでスタッドを締めたと同じ事になってしまいます。縞模様の変色部分は異種金属の溶接跡はありませんでしたから、シリンダーがオーバートルクで締められると、樽型に変形してガス抜けした高熱での変色が残ったと考えられます。
当然ですが、このストライプシリンダーをそのまま組み上げても、決して調子の良いエンジンにはなりません。
ワタシも最初は無視して組んでしまったら、やはり「甘く見るとろくな事は無い」を実証してしまい酷い目にあいました。


あまり焼き付きの話になっていませんが、まだ続きます。