白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

コンポストの中で活躍する微生物の話 其の1

2010年10月20日 | 日記

 

土壌を離れた養液栽培でも、有機物由来の肥料養液の研究が始まり、新しい有機肥料養液の利用法がいろいろ試みられるなど、昨今は有機栽培への傾向が一段と強くなっているようです。

既に、欧米の家庭園芸の分野では、養液栽培用の有機肥料培養液が市販されています。

 

慣行農業分野では、有機栽培が持続可能な農業には最も好ましい農法との認識が一般にも広がり、多量のコンポストの土壌への施用が当然のように思われています。

 

無機栄養塩類の均衡培養液を利用する新プランター栽培では、その培地にコンポストは無縁のように思われますが、微生物の根圏域での役割の観点から考えますと、コンポストによる微生物の土壌への持込がどのような事なのか大きな興味が湧きます。

 

それで、コンポストの生成に働く微生物とその施用効果について一寸考察してみました。

 

 コンポストを一言でいえば、生物系廃棄物を土壌還元可能な状態まで微生物分解させて残った腐植であり、言い換えれば、有機物が微生物によって分解され、二酸化炭素、水、熱に代謝されて、残った微生物を含む比較的安定した最終有機物の「芳香性フェノール,糖,窒素化合物などからなる高分子物質」と言う事です

 

其のコンポストの微生物分解は、好ましい条件下では、次の3つの相変化で進行します。

  1. 中温菌反応期あるいは常温状態での2日間程続く分解過程
  2. 高熱菌反応期あるいは高温状態での数日から数ヶ月間続く分解過程
  3. 数ヶ月に亘って温度が徐々に低下して行く熟成過程

 

コンポスト化に携わる微生物群は、分解の過程で消長して交代しているのです。初期の中温菌の分解期には、水溶性の低分子成分などの直ぐに分解できる化合物を急速に分解し、発生する分解熱でコンポストの温度は急速に上昇します。

 

温度が40℃を超えると、中温菌の活動は衰え、高温に耐える高温菌による活動の交代が起ります。コンポストの温度が55℃を超えると、人間や植物に病原性を持つ菌類は死滅し、約65℃を超えると多くの微生物の活動が低下し、分解作用は停止します。

 

従ってコンポストの生成過程では、温度が65℃以上に高くなり過ぎたら、攪拌して空気を送り、水分を補って適正温度になるように管理しなくてはなりません。

 

高温菌による反応では、温度が上がるので、蛋白質、脂肪、植物の主要な構成物質であるセルローズやヘミセルローズなどの炭化水素の高分子化合物の分解が促進されます。言い換えれば、反応温度が充分上がる事がコンポスト化の大切な要件です。

それらの高エネルギー化合物が消耗されるに連れて、コンポストの温度はだんだん低下し、再び中温菌の活動が始まり、仕上げ段階の残った有機物の分解熟成が始まります。

 

コンポスト化に関与する多彩な微生物

バクテリアは、コンポストの熱発生と分解の大役を担っているのが最も微小な生物であり、コンポストの中に大量に存在し、その数はコンポスト1グラムに数十億いる微生物の80~90%を占めています。


 
       ―細菌類―


コンポスト内には、変化に富む多彩な有機物を広い範囲の酵素によって化学的に分解する栄養学的には、多様なグループに属する微生物が存在します。

 

バクテリアは単細胞で、構造的には丸い球菌、棒状の桿菌、渦巻き状の螺旋菌であり、其の多くが自らの力で移動する動く微生物です。初期に活動する中温菌のバクテリアは其の多くが土壌表面でも通常見られるものです。

 

コンポストが40℃以上になると活動を始めるのが高熱菌で、バチルス属の仲間の細菌であり、バチルス属の桿菌の多様性は、50℃~55℃の間では、盛んに増殖するのですが、60℃からそれ以上になると一遍に其の数は減少し、内生胞子を作り、条件が好ましくなくなると、食料不足や乾燥、寒さや暑さに極めて高い抵抗性を持つ厚い壁の胞子の中にこもって生き残ります。バチルス属桿菌は自然界では変化自在で環境条件が好ましくなれば早速活動を開始します。

 

コンポスト内の温度が下がると、再び中温菌が優勢になります。中温性の微生物の種類や数は熟成の程度や存在している胞子や微生物、又、其の直接的な環境条件によって変わります。

 

放線菌は、土臭さの独特の臭いの元となる揮発物質を作る細菌です。放線菌は菌類に似ていますが、実際は糸状の菌糸を作るバクテリアの仲間であり、バクテリア同様に細胞核がありません。菌類のように複数の管状の繊維糸を出します。

 

        ―放線菌―

放線菌は、複雑な有機物であるセルローズやリグニン、キチンや蛋白質を分解する重要な役割を果たしています。放線菌の出す酵素は、木の幹や新聞などの頑丈な分子構造の廃物を化学的に分解します。

種類によっては、高熱分解期にも現れますが、其の他は温度の下がった仕上げ期に登場して、最後まで残った分解されにくい物質の腐植の形成に重要な役割を果たします。

放線菌は、コンポストの中を通して伸びた、灰色の蜘蛛の巣のような長くて糸状に分伎した繊維糸を形成します。これらの繊維糸は、コンポスト処理の最終段階では、表面から10~15cmのところで最も一般にみられます。時には、其の直径を次第に拡張する円形のコロニーがあらわれます。

 

菌類には糸状菌や酵母菌が含まれ、総体的に土壌やコンポストの中の多くの複雑な植物体の高分子物の分解を担っています。

 



             ー
黴菌類ー


コンポストの中で菌類が重要なのは、頑丈な分子構造の廃物を分解して、バクテリアが一度は殆ど分解してなくなってしまったセルローズ分をさらに分解できるようにしているのです。

 

菌類は、精力的に成長して細胞や菌糸を伸ばし、バクテリアが分解できるように窒素分の少ない、酸性で乾燥した有機残渣物を攻撃して分解します。

 

大方の菌類は、倒木などの枯死した物質や動植物の遺体などの有機物を分解してエネルギーを獲得して生活している腐生菌に分類されています。

 

菌類に属する種類は、コンポスト化の中温菌分解期でも高熱菌分解期でも膨大な数になります。

.殆どの菌類は温度が高い時は 外側部分で生きています。コンポストの糸状菌は、厳密な好気性菌であり、コンポストの表面で白や灰色のはっきりしないコロニーを作って目に見えない菌糸で生育しています。

 

原生動物は、顕微鏡で見る単細胞の動物です。コンポストの中の水滴部分で見つかるのですが、分解には比較的小さな役割しか果たして居ません。原生動物はバクテリアと同じ様に有機物から食料を獲得していますが、バクテリアや菌類を消化して2次消費者としての活動もしています。

 


            ―原生動物図―


ワムシは顕微鏡で見る多細胞の生物でコンポストの中の水部分フィルムで見つかります。
有機物を食料にしますが、又バクテリアや菌類も餌にします。

        

      ―コーネルコンポストの科学及び工学から抜粋―

(次回に続く。)

 


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