狂った果実 その1
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狂った果実は、1992年フェアリーテールから発売されたアドベンチャーゲームである。
その特徴は陰惨な雰囲気と描写にあり、内容的にはかなり暗いものがある。
主人公は、私立帝都美術大学3年生の狩野哲だが、ヒロインの少女美夏が印象的だ。
とはいえ、美夏の設定にはかなり無理があり、10歳で屈強な大人以上の膂力を持つなど、違和感はありまくる。
狩野は、教授月島の邸宅で、ガーデンパーティーに出席するが、そこで月島教授の次女秋美と三女の美夏に出会うことになる。
そして狩野は、月島教授に美夏の家庭教師を依頼された。
その後、次女の秋美と話したが、彼女は部屋に戻ろうとして階下に転落する。
下には鋭い燭台があり、秋美の心臓を貫いた・・・
その後は警察の取り調べなどもあったが、数日後月島邸に行くと、メイドの眞紀に、秋美宛に荷物が届いているのでみてきてくれと頼まれた。
荷物には格別怪しいところはなかったが、ドレッサーを開けて驚いた。
中の服は全てずたずたに切り割かれていたのだ。
眞紀にそのことを話すと、すっかり怯えてしまい、今夜は男の人がいないから泊まっていってくれという。
そしてお定まりのあんなことやこんなことが始まり、腰の痛みを覚えながら狩野は眠りについたのだった。
なんとも唐突で理不尽な展開ではある。
ありえないことが起きるのは、ゲームの常道とはいえ、そこにいたるまでにはそれなりの伏線なり前説があってしかるべきではないか?
翌朝、再び月島邸に行くと、眞紀の姿が見えず、教授にゴミの廃棄を依頼されて焼却炉開けると、中には半ばドクロと化した眞紀の死体があった。
その死体は、両手の爪は全てはがれ落ちていた。
全身の肉を焼き尽くされる熱さに苦しみ、焼却炉内を激しく引っ掻いたためである。
行方不明だった大門も、多摩川の河原で死体となって発見された。
そして先日秋美の事件で、事情聴取された刑事から電話がかかってきた。
今度は月島教授が自殺したというのだ。
哲は月島邸に駆けつける。
刑事の話では、彼に先程教授から電話があり、これまでの事件は全て自分がやったものだととのことだった。
大門が大金が入ると言っていたのは、教授を強請っていたためだった。
しかし事件はそれだけでは終わらなかった。
恋人の高瀬成子の愛猫サマンサが、電子レンジで焼き殺されたのである。
成子を自宅に保護し、教授の遺書を見せると、成子はこれはおかしいという。
秋美が家名を汚したと言っても、それだけで自分の娘を殺す人間がいるか?
それにメイドの眞紀殺しにしても、教授はキャンバスを切り裂く程錯乱していたが、錯乱状態は演技では難しい。
後は、大門以外の事件については、具体的には書かれていない。
もう一つ、教授の遺書の表現では、美夏にウェイトがかかりすぎている。
名前も「美夏」とはあるが、秋美や眞紀は名前が出て来ない。
こうして、成子と哲は月島邸に入った。
美夏の部屋ではクロッキー帳と鍵、そしてネジを見つける。
そのネジは、秋美のベランダのものだった。
クロッキー帳には、稚拙な絵が描かれていて、全て死んだ人間の絵であった。
そして最後のページには、只青い四角のみが描かれていた。
美夏は長女美鈴の家に預けられているので、哲は美鈴の家に向かったが、美夏は月島邸に戻ったと聞かされる。
月島邸には青い水をたたえた貯水槽があるのだ。
哲は、これまでに殺された女性は、全て哲に好意を持っていた者ばかりであることに気づいた。
美夏はその哲に対する歪んだ愛情と、大学生以上の知性によって、この犯行を実行したのだろう。
月島邸に急行する哲の車の前に、犬が飛び出して来た!
美夏の愛犬シェリルである。
フランスへ向かう美夏は、空港で哲とすれ違う。
「いつかかならずお前を殺してやる」と呟く哲には目もくれず、美夏は通り過ぎる・・・
これにて狂った果実は終了である。
雰囲気的には良いものがあるが、如何せん設定が無茶苦茶で、いい加減すぎる。
ラストシーンにしても、哲は事故で左目を失明した筈だが、翌日にはぴんぴんしていて、空港では歩いているのだ。
教授の首つりにしても、縄のかかった天井まで大の男を吊り上げるのは、屈強な男性であっても、相当な困難があるだろう。
それを膂力は大人並といっても、小柄な10歳の少女が可能なものだろうか?
まだあるまだある。
刑事と哲への手紙にしても、字をみれば大学教授が書いたものか、10歳の少女が書いたものかは、一目瞭然だろう。
このように狂った果実は、つっこみどころが多いどころか、つっこみどころばかりのゲームなのである。
プレイ時間は実質二時間弱。