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業界最高年齢社長Halのゲーム日記 その517 久しぶりにSF編

2012-06-11 09:14:00 | 本と音楽
最近の本から。

ネアンデルタール ジョン・ダーントン ソニーマガジンズ
エサウ フィリップ・カー 徳間書店
海竜目覚める ジョン・ウィンダム 早川書房

「ネアンデルタール」と「エサウ」はよく似た内容のSFで、いずれも新種の動物(人類?)の発見をめぐるアクション風の冒険談であり、美貌で気丈なヒロインが大活躍するのもそっくりさんである。 あまりにも似ているので2つを1つにまとめてご紹介。

ヒマラヤで新種の生物らしきものが発見される。 探検隊が組織され現地を調査することになる。 苦難の末その生物を発見する。 その生物は(ここで少し違う)ネアンデルタールの方は題名通りネアンデルタール(人類)であり、エサウの方は人類と類人猿の中間的存在ということになっている。

フィリップ・カーはナチス時代のベルリンを舞台にしたスリラー「ベルリン レクィエム」や、ハイテクパニック「殺人摩天楼」などでこの作以前からかなり知られた存在である。

それに比べてジョン・ダーントンはこれが処女作ということで、他に2作程邦訳されているが、知名度から言えばカーよりは大分落ちる。 しかし読後感の爽やかさはこの「ネアンデルタール」の方が大分上だった。


「海竜目覚める」は星新一の訳で、昔(初版?)の邦訳題名は「海魔目覚める」ではなかったか? 今回のものは昭和52年の出版だが、その遙か前(昭和30年代か40年代)に読んだようなおぼろげな記憶が残っている。 (注 星さんの後書きでは昭和41年に日本での初訳が星さんによってなされている。 私が読んだのはこれであろう。)

昭和30年年代に私がSFに目覚めた頃には、SFの邦訳は至って少なく、それどころか「SF」という名称さえ一般には定着していなかった。 数少ない話題の中で良く出て来たものが、「ウィンダムという英国作家の『トリフィードの日』というSFが凄い」というものがあった。

もう一つ名作という噂が高かったのが、クラークとかいう作家の「地球幼年時代の終わり」である。 無論あの「幼年時代の終わり」のことである。

その「トリフィードの日」も「幼年時代の終わり」も、邦訳されるSFは年に数作程度という時代なので中々読むことができず、かなり後になってようやく読むことが出来た。 読後感はトリフィードの方はかなり良いという所だったが、幼年時代の終わりは鰍ッ値無しの超名作だと思った。

その後ウィンダムの別の作品を読むことが出来た。 それがこの「海竜目覚める」である。 いきなり目玉のシロモノを目の前に差し出すのではなく、じわりじわりと搦め手から見せてゆくといういかにも英国風の作風であり、トリフィードの日よりもこちらの方がウィンダムの本来の作風ではないかと思う。

内容的には、特に科学技術的ファクトに関してはかなり古くなっているが(なにせ半世紀以上前の作品だからしょうがないだろう)、見せ方のうまさ、お話しの持って行き方のうまさは、現代ではかなり貴重なものだと思う。

大西洋上に現れた赤い光球が海に落下し、その後船舶の難破事故が続発、やがて南極北極の氷が解けて水位が上昇し始める。 というような内容で、ウィンダム得意の破滅ものの一つであるが、私にはトリフィードの日よりこちらの方が面白かった。 今回の3作の中では最もお奨めできる。