絵本の部屋

鈴木まもる「鳥の巣研究所」別館

「なにしてるの?」

2020年11月07日 | その他の本

『なにしてるの?』
鈴木まもる作 
ポプラ社 32ページ 1000円+税  
2020年11月刊

とびら

 

「パンやさん なにしてるの?」
「パンを やいてるんだよ」
「どうして?」
「パンを やくのが すきだからだよ」
「どうして?」

 

「たべてごらん」
「おいしい」
「おいしいって いってくれると パンやさんは うれしいんだ。
だから パンを やいてるのさ」

 

「おばあちゃん なにしてるの?」
「あみものを してるのよ」
「どうして?」
「あみもの あむのが すきだからよ」
「どうして?」

「このマフラー ちょっと まいてみて」
「あったかい」
「だれかが あったかくなると おばあちゃん うれしいの。
だから あみものを してるのよ」

 

裏表紙

 

帯あり

 

<制作ノート>

『なにしてるの?』ができるまで

ある日、遠方に行く仕事で羽田空港から飛行機に乗ることになりました。僻地に住んでいるので、時間に遅れてはまずいので、いつも早めに搭乗口に行くことにしています。その日も飛行機の見える大きな窓のはじっこで、絵を描いて時間をつぶしていた時です。後ろから「なにしてるの?」と、かわいい声が聞こえました。
ふりむくと、小さな女の子がぼくを見ていました。
「絵を描いているんだよ」と答えると、
「どうして?」と聞かれました。
「絵を描くのが好きだからだよ」
「フーン」
女の子は、お母さんに呼ばれたのか、スッと人ごみの中に行ってしまいました。

ただそれだけだったのですが、そのことが頭に引っかかり、「なにしてるの?」というフレーズとその子が、その後、ちょくちょく頭に出てきて、膨らんでいきました…。
そして出来上がったのが、この絵本です。
自分は、なんのために、なにをしているのか…
自問しつつ絵本の世界を作っていく過程で、どんな人たちを登場させるか考えていくと、結局、衣食住に関わること、そして自然や物つくり、文化、芸術に関わる生きることの根本のことにつながっていくことなのかと思いました。
まず、好きであること(これは個人差があることです)。そして、それを、どう世の中と接点を持たせ、目的化して自分の存在を正当化していくことにつながるのか…。
それらを、最後に、小さな読者にわかる言葉で、いかにまとめるのか…。
標語や説教っぽくならない表現ということで、最後の「みーんな」という言葉に行きつきました。

昨今、スマホなどで検索すると、世界の隅々のことがわかる(ような)気がしますが、実は皆身近な自分がわからないから、「いかに生きるのか」というような古い本が売れているのでしょう。「なにしてるの?」という小さな子の問いかけに答え応えられるよう生きようと思いました。
飛行場で会ったあの子に「あなたのおかげで、こんな絵本できたんだよ」と渡したいけれど…かなわぬことです。どこかの書店か図書館で手にしてくれることを願っています。

鈴木まもる

 

関連リンク

「大切な人へ」想いを贈る絵本『なにしてるの?』(ポプラ社こどもの本編集部)


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