絵本の部屋

鈴木まもる「鳥の巣研究所」別館

「鳥は恐竜だった 鳥の巣からみた進化の物語」

2022年07月11日 | 鳥の本

『鳥は恐竜だった 鳥の巣からみた進化の物語』
作・絵 鈴木まもる
アリス館 48ページ 1800円+税
2022年7月刊

いろいろな形の鳥の巣に出会って、そのおもしろさに、ぼくは夢中になりました。
どうしてこんな形をしているのだろう?
この疑問が、恐竜から鳥への進化のふしぎにせまるカギとなったのでした。
(カバーそでより)

 

とびら

 

p2-3
<はじまり>
世-界中には9000種以上の鳥がいます。
みんな巣をつくり、卵をうみ、ヒナを育てています。

巣をつくる場所は、地上、やぶの中、水辺などいろいろです。
木の穴の中に巣をつくる鳥もいれば、木に自分で穴をあけて巣をつくる鳥もいます。

もちろん、たくさんの鳥が、木の枝に巣をつくります。
(略)

 

p6-7
<恐竜と鳥>
むかしむかし、地球上には恐竜はいましたが、鳥はいませんでした。
今、鳥はいますが、恐竜は絶滅していまい、いません。
鳥は、恐竜から進化したといわれています。
恐竜も鳥も、巣をつくり、卵をうみ、子どもを育てます。
巣と卵と、子育てのちがいをしらべれば、なぜ恐竜が絶滅し、鳥が生きのこったのかがわかるのではと、ぼくはかんがえました。

p8-9
<恐竜の巣を想像してみよう>
マイアサウラなど、大きな恐竜の巣の化石はたくさん見つかっています。卵をうむ場所が、巣です。

卵は栄養があるので、きっと卵をねらう敵もいたことでしょう。
どんな親も、自分のたいせつな卵をまもろうとしたはずです。

でも、あいてが自分より大きくて強い恐竜だったら、卵だけでなく自分も食べられてしまいます。
小さな恐竜は、敵に見つかりにくいやぶの中や、水辺、木の上などに巣をつくり、卵をうんだのではないでしょうか。
(略)

*****

<制作ノート>

30年以上前、家のすぐそばのやぶで小さな鳥の巣を見つけたのが、そもそもの始まりでした。
その美しくかわいい形に魅了され、山階鳥類学研究所や鳥類学者の方のところへ行きつつ、野山で使い終わった鳥の巣を集めたり調べたりするようになりました。

日本で繁殖する鳥は約250種、世界には9000種以上の鳥がいるということで、必然的に世界の鳥の巣へと興味は広がっていきました。
今までの鳥類学の世界では、それぞれの学者さんが、研究する鳥の「巣にいくつ卵が産まれているか?」「テリトリー内にいくつ巣があるか?」「10年前と巣の数が増えたか減ったか?」と、いわゆる国勢調査的に数を数えることが主でした。もちろんそれは大切な事ですが、あまり形に興味を持つ人はなく、まして海外の鳥の巣に興味を持つ方はいないようでした。

自分は絵を描き、物を創る人間なので、「なんてかわいくて美しいのだ、どうやってつくるのだろう?」「なぜアフリカには10mもある巣や、偽の入り口のある巣があるのだろう」と、今までの鳥類学者の方と根本的に違う興味で鳥の巣の世界に迷い込み、アフリカや中米、ニューギニアなどの密林をさまよい、海外の鳥の博物館に足しげく通うようになりました。
(もちろん巣だけではなく鳥本体も大好きです)

鳥の巣というと、ボサボサで汚いとか、フンで汚れているとか、マイナスのイメージが多いですが、親鳥が卵を産み、ヒナが育つ大切な場所で、鳥にとってなくてはならないものです。その大切さ不思議さ、美しさを伝えようと、鳥の巣の展覧会をしたり、絵本を描いたりするようにもなりました。
そして今回、「なぜキムネコウヨウジャクの巣の形が妊婦さんのおなかの形とそっくりなのか?」ということをテーマに絵本にしようと取り組み始めました。

鳥の巣の形態の変遷を知るために調べ始めると、鳥が出現する恐竜時代までさかのぼることになり、改めて恐竜の世界から調べ始めました。すると、いまだわからないこと、知られていないことがたくさんあり、それらを調べるほどに、「これはひょっとして、鳥の巣は恐竜学も鳥類学も気づいていなかった、ミッシングリンクのようなものではないか…」ということを感じ始めました。

恐竜学の世界では、発見された化石からいろいろな推察をします。鳥類学の世界では鳥と卵の研究はされています。でもどちらも、鳥の巣の研究はされていないから、「なぜ、恐竜が飛べるようになったのか」「なぜ、巨大隕石が衝突した後、恐竜は絶滅し、鳥は生き延びて今の世界に生きているのか」が謎のままだったのではと確信するようになりました。
鳥の巣というピースをはめ込むと、すべての謎が解決できるのではと、今回の絵本となりました。

だれにも教わらず本能の力で作る鳥の巣。なぜ鳥の巣を作るようになったのか、どうしていろいろな形になっていったのか? それは単なる気まぐれで作ったわけではなく、一番大切な、子孫を残すという生命の強い動機から作りはじめ、世界の多様な環境への適応だけでなく、進化という時間の中で形成されてきたのだと思います。
自然の形態で、意味のない物はありません。
鳥が先か卵が先か? と言われますが、鳥の巣が先なのだと思います。
化石になっていなくても、今、鳥が作っている鳥の巣は、いろいろなことを教えてくれているのだと思います。
                  
鈴木まもる

 

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