絵本の部屋

鈴木まもる「鳥の巣研究所」別館

「ウミガメものがたり」

2016年05月17日 | その他の本

 

「ウミガメものがたり」 鈴木まもる作・絵

童心社 32p 1500円+税
2016年5月15日 

母ウミガメが砂浜にうめた卵からかえった子ガメたち。
砂の中からはいだして海にむかいます。
でもそこはゴールではなく、長い長い旅のはじまりなのです。
子ガメたちの旅は、大きな地球の豊かさや厳しさ、そして
自然の不思議さを知ることにつながる、命のものがたりなのです。

(初版オビより)

 

 とびら

 

だれも いない なつの すなはま。
うみの なかから なにかが やってきました。
ウミガメの おかあさんです。
(p2-3)

 

 

 

でた でた! でてきた でてきた。
うまれたばかりの 子ガメは 5センチくらいしか ありません。
(p6-7)

 

子ガメたちは だれにも おそわらず うみに むかいます。
(p8-9)

 

 

 

子ガメは まだ ふかく もぐることができません。
ういている かいそうなどの なかに かくれ、
おおきな さかなに みつからないようにするのです。
(p14-15) 

 

うみの なかには、たてに ながい さかなも いるし、
ひらべったい さかなも いるし、とげのある さかなも います。
そらを とぶ さかなも いるし、さかなではない いきものもいます。
(p20-21)

 

20ねんくらい いきると、ながさ1メートルいじょう、
おもさも 100キロいじょうになります。
そして また 10000キロ はなれた 日本に かえろうと
およぎはじめます。
(p28-29)

 

 裏表紙

(引用文は本文の一部です)

 

<制作ノート>

 子どもの頃、だれもいない海岸で、ウミガメの白骨化したのが
打ち上げられているのを見つけました。頭蓋骨も甲羅も全身真っ白で、
とても美しかったです。今だったらどうやってでも持って帰ったと思いますが、
子供だったので、残念ながら大きすぎて持ち帰ることはできませんでした。
でも、その光景は心の中の引き出しにしまわれました。 
 大人になって、水族館に行ったら、近所の砂浜で生まれた子ガメが
水槽でたくさん泳いでいました。生まれたばかりの子ガメと白骨化したウミガメ。
ぼくの心の中で2つのエピソードが出合いました。
 暗い夜の砂浜でウミガメのお母さんが卵を産んで、そこからかわいい子ガメたちが
はい出して大海原にむかう…というのは、ニュースや本などで、よく見慣れた光景です。
「あの小さな子ガメは、どこに行き、どんなものを食べて、どんな暮らしをして、
あんな大きなカメになるのだろう?」という疑問と、心の中にあった2つのエピソードが
まざりあって、この絵本を描きたくなりました。

 今回は内容的にいろいろな要素があるので、1見開き1場面では表現できないと思い、
コマ割りの画面を使ったり、大きな絵で見せたり…。
 長い長いウミガメの旅と、大きな地球と自然の神秘や不思議、
元気に生きていく生命のたくましさを感じてもらえると嬉しいです。

 新しい生命を産むために、太平洋を横断して産まれた砂浜に戻ってくるウミガメ。
南の島から鳥の巣を作るためにやってくる渡り鳥。どちらも、誰に教わるわけでもなく、
地球という大きな自然の中で、自分の本能の力を信じて長い長い旅をして、
自分の生きる場所を見つけて生きているんだと思います。

 

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ウミガメものがたり
鈴木 まもる
童心社 2016年

  

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