絵本の部屋

鈴木まもる「鳥の巣研究所」別館

「あるヘラジカの物語」

2020年08月29日 | その他の本

『あるヘラジカの物語』
星野道夫・原案/鈴木まもる・絵と文
あすなろ書房 1500円+税
2020年9月刊

アラスカに暮らす写真家、星野道夫は、ある日、川でふしぎな頭蓋骨を見つけました。
2頭の大きなヘラジカの角が、からみあったまま骨になっています。
角ははずそうとしてもはずれません。
多くの野生動物の姿を写真におさめた星野道夫は、1996年、事故によって世を去りました。
同じ動物好きとして星野道夫と親交のあった鈴木まもるは、 ある日、突然このふしぎな写真が夢にでてきて、絵本を創ろうとひらめき、アラスカに飛びました。
そしてできあがったのが、この絵本です。 
大自然で暮らす動物たちの壮絶な生活と、生命のつながりを描いた絵本。
(初版オビより)


とびら

 



p.2-3
ここは北のくに アラスカ、デナリの山のふもと。
もうすぐ 冬がやってくる。
1とうの おおきなオスのヘラジカが、
たくさんのメスと くらしていた。
ある日、このむれに、みしらぬオスがちかづいてきた。

p.4-5
オスどうしの はげしいたたかいが はじまった。
ガシン ガシンと おおきなつのが ぶつかる。
グオッ グオッと うなりごえが ひびく。

 

p.6-7
2とうのヘラジカは、どちらも まけてはいない。
たたかいは ながいじかんつづいた。

(文章は一部です)

 

裏表紙

 

<制作ノート>

今から20年以上前、偶然、星野道夫君と出会いました。年齢が同じということもあるし、アラスカと日本の山ではスケールが違いすぎますが、二人とも、自然の中で暮らし、動物が好き。ぼくは絵を描き、絵本を作り、星野君は写真を撮影し写真集を出版するということで、表現形態は違いますが、似ている部分も多く、すぐ仲良くなりました。
でも、その頃のぼくは、まだ世界の鳥の巣のことまで解っていない段階で、アラスカの鳥の巣のことを聞いたり、世界の鳥の巣のことを話せる状態ではありませんでした。今思うと本当に残念です。その後、星野君の住むアラスカに遊びに行こうと思った年、彼はヒグマに襲われてしまいました…。
昨年の8月の深夜、寝ていて「この写真の絵本を作ろう」と目が覚めました。すぐ仕事場に行き、画用紙を切って全体の場面構成を考えダミー(見本)本を作りました。彼が写真のキャプションに「こんなことがあったのだろう」と書いていることを、ぼくなりに膨らませて一つの物語を作りました。表紙から、ほぼ全体の構成は心の中にできていて、あっという間に絵本の形になりました。
ダミー本を星野君の奥様に送り、絵本化の許可を得ました。あとは実際のアラスカに行き、現場を取材し光や風を感じようと思いました。すぐ旅行会社に行き、アラスカに行く計画を具体化しました。絵本の舞台となる10月のデナリ国立公園は、もう閉鎖されています。でも自己責任で入ることはできるということです。10月に展覧会もあり、慌てないで1年後に行こうかとも思いましたが、その後コロナが発生し、あの時行っておいてほんとに良かったです。
10月、シアトル経由でアラスカに入国しました。紅葉は終わり夏の観光客のいない雪原のアラスカは、まったく今回の絵本のヘラジカの繁殖期でした。絵本に出てくるヘラジカ、ヒグマ、オオカミ、コヨーテ、カンジキウサギ、オオヤマネコ、南の国に飛んでいく渡り鳥も見ることができました。マイナス50度の世界は体験できませんでしたが、長い長い冬が始まる真っ白な銀世界も見ることができました。帰国後、現場で感じたことから、いくつか場面や構図を変更、修正、絵を完成させました。
この写真を写真集で見たのは20年以上前でしょうか…。なぜ、今回このような形で夢に出てきたのかわかりません。
彼の見たアラスカや撮影した写真とは比べ物になりませんが、絵本の形にすることで、1枚の写真から星野君が伝えたかった、大きな自然の中での生命のつながり、死ぬことと生きること、生命ドラマを、小さいお子さんからでも星野くんの世界を感じられるようになってくれれば嬉しいです。
(鈴木まもる)

 

関連リンク

NetGalley

「アラスカ便り」(星野道夫事務所公式HP)

第2回親子で読んでほしい絵本大賞

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