絵本の部屋

鈴木まもる「鳥の巣研究所」別館

「戦争をやめた人たち 1914年のクリスマス休戦」 

2022年05月10日 | その他の本

『戦争をやめた人たち 1914年のクリスマス休戦』
鈴木まもる 文・絵
あすなろ書房 32ページ 1500円+税
2022年5月刊

銃弾ではなく歌を。大砲ではなくサッカーを。
兵士を変えた、一夜のできごと。
第一次世界大戦中、戦場であったほんとうの話。

とびら

 

今から100年以上前の1914年7月。
ヨーロッパをはじめ、多くの国をまきこむ戦争がはじまりました。
第一次世界大戦です。
イギリス、フランス、ロシア、日本などの連合国軍と、
ドイツ、オーストリアなどの同盟国軍が戦ったのです。
(略)

 

その夜も、イギリス軍の兵士は、一日じゅうつづいた
ドイツ軍とのうちあいでつかれはて、
ざんごうで休んでいました。
(略)

「なにかきこえる。なんの音だろう」
若い兵士は、ざんごうから顔を出しました。

 

それは、むこうのドイツ軍のざんごうからきこえる歌声でした。
ドイツ語なので、なんといっているのか、わかりません。
でも、そのメロディーはわかります。
クリスマスの歌、「きよしこのよる」です。
(略)

 

裏表紙

 

<制作ノート>『戦争をやめた人たち』について

『人と戦争』をテーマにした絵本を描きたいと、ずっと思っていました。
 今までに多くの『戦争』を扱った絵本や童話があります。過去に戦争を経験された方が、その悲惨な体験を書かれたものがほとんどです。それは語り継いでいくことは大切な事だと思います。でも自分は戦後生まれで、実際に体験していないので、そういうものは描けません。
 一方、「平和は大切、戦争反対」というメッセージをダイレクトに伝える絵本もありますが、それもちょっと自分のしたいこととは違う気がしていました。悲惨な現実だけでもなく、表面的な言葉だけでもない表現で子供たちの心に「人と戦争」を伝える方法をいろいろ模索していました。
 昨年の夏、偶然、第一次世界大戦の時に起こった「クリスマス休戦」という史実を知りました。戦争になっても人の心の持つ優しさ、いとおしさを感じ、「伝えたいのはこれだ!」と思いました。
 あっという間に1冊の絵本としての全体の構成などが頭の中に出来上がり、見本の形にして出版社に送りました。賛同を得て、無事企画が通り、今年の2月3日から絵を描き始めました。
 人のぬくもりを出したいということで、色鉛筆という素朴な画材を選び、いつものように物語の最初から絵を描き始めました。絵の明確なイメージができていたので、どんどん絵はできていき、2月25日、最後の「あとがき」の部分の絵を描いているとき…、なんとロシアがウクライナに侵攻を始めました。まさか今の世の中でまた戦争がはじまるとは思っていませんでした。
 100年前と今とでは兵器が違う分、被害は甚大で、日に日に悲惨な状況になる現実に愕然となりました。でも使われる兵器は違っても、やっている人間の行為は同じです。それならば、この絵本で伝えたいことは間違っていないし、戦争をやめるための答えも同じはずです。それを「今」表現することが大事だと思い、さらに絵に向かいました。
 描きはじめた当初は、戦争なんて遠い過去の事だから、最後は自然環境や隣人への思いやりといった言葉で幕を閉じようと思っていたのですが、実際に戦争が起きてしまったので、最後の言葉を書き替えました。
 戦争をはじめるのも人ですが、戦争をやめられるのも人です。
 国や宗教、言葉を越えて相手を思う想像力と、音楽やスポーツ、芸術活動(もちろん絵本も!)など、その人なりに自分らしく生きるという創造力、それらを行動で表す勇気が戦争をやめる力を生みだすのだと信じています。
この絵本が、ウクライナの人たちの幸せに少しでもつながるよう願っています。
                      
2022年4月 鈴木まもる

 

 

カバーそでより(マミジロノビタキ)

 

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