うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

おもに運動に関して、気ままに話したいと思います。
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男子ハンドボール日本代表、3大会ぶりに世界選手権の出場権を獲得

2010年02月20日 | 団体球技(室内)
◆第14回男子ハンドボールアジア選手権(2010年2月6~19日 @レバノン・ベイルート)

・今大会の日本の成績
予選ラウンドB組                       本戦ラウンドA組              
2月 7日  vsイラク ○35(19-13)21           2月13日 vsカタール ○29(15-10)20
2月11日 vsバーレーン ○31(16-12)27        2月14日 vsサウジアラビア ●26(12-15)28
〔日本は2勝で予選ラウンドを首位通過〕         2月15日 vsイラン ○36(21-11)23 
                                 〔日本は2勝1敗で本戦ラウンドを2位通過〕
準決勝
2月17日 vs韓国 ●23(12-14)30

3位決定戦
2月19日 vsサウジアラビア ○33(14-12)30
                 (延長3-2、3-1)

・最終順位
優勝・韓国、2位・バーレーン、3位・日本、4位・サウジアラビア、5位・カタール、6位・シリア
7位・イラン、8位・レバノン、9位・中国、10位・イラク、11位・UAE、12位・ヨルダン

※韓国は2大会連続8度目の優勝。
  3位までに入賞したチームは、来年1月にスウェーデンで開催される世界選手権の出場権を獲得。

大会の詳細の成績
日本ハンドボール協会の今大会の関連ページ


                          *  *  *  *  * 


あれれ、あの国の名前が無いよ!?

世間は先週開幕したバンクーバー五輪一色です。日本勢も現時点でメダルを3個獲得したこともあり、一気に盛り上がってきました。このよい流れを、これから戦う選手達へ繋いでいきたいものです。しかし、バンクーバーとは遠く離れた中東のベイルートの地で、日の丸を背負った男達が世界への切符を賭けた戦いがあったのをご存知でしょうか。2年前の今頃、「中東の笛」騒動で一躍有名になったあのスポーツです。そうですハンドボールです。

今大会の参加国は12ヶ国です。大会で3位以内に入ったチームが、来年1月にスウェーデンで開催される世界選手権への切符を手にできます。日本は2005年チュニジア大会以来、3大会ぶり12度目の出場権が懸かってました。下馬評では、昨年の世界選手権12位で大会最多優勝を誇る韓国が優勢。日本は中東勢と残りの切符を賭けて争う構図でした。日本は予選ラウンドではクウェートとバーレーンと同組でした。

ところが、国際オリンピック委員会(IOC)が、今年の1月1日付でクウェートオリンピック委員会を資格停止処分とした為、今大会へのクウェートの不参加が決定となるハプニングが発生。クウェートが処分された理由は、いま流行?の「スポーツへの政治介入」だとか・・・。クウェートは無尽蔵のオイルマネーでアジアハンドボール連盟(AHF)を牛耳り、数々の悪行を引き起こした国です。中でも、アジアオリンピック評議会(OCA)会長でもあるシェイク・アハマド王子は、スポーツの域を超越した巨大な権力を有してます。クウェートは事実上の一族独裁の絶対君主制の国なので、スポーツは王族の玩具に過ぎません。過去の犯罪行為を考慮すれば当然の処分ですし、むしろ遅すぎるぐらいです。


意外とまともだったらしい大会運営

有力候補だったクウェートの不参加のアクシデントがあり、日本の予選ラウンドの組にはイラクが代わりに入りました。日本にとっては中東の地は完全にアウェーです。しかも、AHF主催の大会だけに運営が心配されてました。ただ、実際の試合は見られませんでしたが、伝えられた話によると今回はクウェートが不参加だったこともあり、特定の国を露骨に有利にすることはあまり見られなかったようです。審判も国際ハンドボール連盟(IHF)から欧州の審判員を派遣してました。ただし、予選ラウンドの組み分けが開催国のレバノンが有利だったようですが・・・。

とはいえ、以前ほど露骨な運営ではないからこそ、この大会で日本は真価を問われてました。日本の今回のメンバーにはスペインリーグのアルコベンダスに所属する宮崎大輔を選出させるなど、現時点では最高のメンバーを揃えました。日本ハンドボール協会のHPの戦評によると、予選ラウンド2戦と、サウジアラビア戦を除いた本戦ラウンドでは、日本は序盤から優勢に試合を進めたことが勝因みたいです。ただ、本戦ラウンドで唯一敗戦したサウジ戦は、前半序盤は優勢に進めるものの、中盤あたりから反撃を許してリードを許してしまい、後半も流れを引き寄せられませんでした。中でも、サウジが7度も一時退場したチャンスを活かせなかったのが痛恨でした。

世界選手権の切符を直接賭けた準決勝の韓国戦。韓国は白元や尹京信といった御馴染みのメンバーを連ねるなど、こちらも現時点での最強メンバーを揃えての一戦でした。しかし、日本はこの試合を23-30で完敗します。協会のHPの戦評によると、宮崎と豊田賢治が先制して幸先の良いスタートを切ります。しかし、この日宮崎が決めた得点はこの1点のみ。おそらく、相当きついマークを受けたと想像出来ます。日本はパスミスから6-6の同点に追いつかれた後、韓国に一気に引き離されてしまい、流れを掴めません。後半反撃を試みるものの、逆に韓国に加点されて突き放されます。結局、23-30で敗北。日本は残り1枚の切符を賭けて3位決定戦に臨みます。


最後の切符を賭けた壮絶な戦い

最後の切符を賭けて戦った相手は本戦ラウンドで唯一の黒星を喫したサウジ。協会のHPの戦評を読んでいるだけで、手に汗を握るほど緊迫した試合展開でした。前半は日本が14-12で折り返しますが、後半はサウジが猛反撃を加えて逆転。一時はこの日最大の4点差のリードをつけられます。日本は執念で26-26で追いつきますが、後半26分になんと日本は2人連続で退場者を出してしまい、4人対6人の絶対絶命のピンチ。日本はGK高木尚を中心に体を張って凌ぎ切り、逆に門山哲也の決めて1点リード。しかし、サウジに同点に追いつかれて、結局27-27で延長戦へ。

延長戦も一進一退の展開。延長前半は宮崎などの3連続得点で日本は30-28で折り返します。両者の勝敗を分けたのは7mスローでした。延長後半にもらった2本の7mスローを落ち着いて決め、33-30で日本が勝利。死闘の末に、世界選手権の最後の切符を獲得しました。なお、エース宮崎はチーム最多の13点も決めました。本当にこの試合は実際にテレビで観たかったですね。

やはり、現在のアジアの勢力図は相変わらず韓国がダントツに抜けている印象を持ちます。なにせ、日本は今大会の黒星で、対韓国戦は20年間に渡って21連敗と不名誉な記録を更新しましたから(なお、通算対戦成績は日本の44戦12勝30敗2分)。団体球技で日本は韓国を苦手にしている競技は多いですが、これほどまでにカモにされているのは、おそらく男子ハンドぐらいでしょう。女子だって、昨年は親善試合ですけど韓国に勝ちましたから(→詳細はこちら)。世界選手権のアジアの代表枠は3枚ありますが、五輪のアジアの代表枠はたった1枚です。世界最終予選に回ったら、欧州勢が有利なので勝ち目は薄いです。なので、ソウル五輪以来、24年ぶりの出場を果たす為には、絶対に韓国の壁を破らないと不可能です。

とはいえ、「中東の笛」など一連の不公正な運営の為、長年中東勢に阻まれた世界への切符を自力で掴んだのは大きいと思います。女子と違って、男子のアジアは弱いので世界の厳しさを感じると思いますが、何かを掴んでほしいです。そして、おそらく来年に予定されているロンドン五輪アジア予選に向けて有意義な強化をしてほしいです。

最後に、酒巻清治監督をはじめ選手や関係者の皆様、本当にお疲れ様でした。



▼ちなみに、この映像は準決勝のもうひとつの試合のバーレーンvsサウジアラビア戦です
試合終了残り7秒前、スコアは25-25でサウジ(緑のユニフォーム)のボールの場面から始まります。
まるで、昨年9月9日のサッカー南アフリカW杯予選のプレーオフを彷彿させる、凄すぎる結末なので必見です。
この映像を見ると、なぜ日本が3位決定戦でサウジに勝ったのかがよく分かります。

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