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映画『オレンジと太陽』予告編 イギリス・児童移民(連行)の実話 英ジム・ローチ監督

2012-05-02 | 動画 ・ 文化芸能
映画『オレンジと太陽』予告編


良い映画なんでしょう。映画自体は観てみたいと思いました。ただ、この宣伝動画を観て、なんというか「感動」なの!?と思い、少し観る気が失せた感じはしました。

 
 なんという映画だろうか。ヨーロッパ映画はまた一本の名作を生んだ。ジム・ローチ監督の初監督作品「オレンジと太陽」である。

 イギリス政府は19世紀からごく最近の1970年まで、驚くべき数の施設の子供たちをオーストラリアなどへ【移民】していた。親にも知らせず、強制的に・・・。

 映画「オレンジと太陽」は、このイギリス最大の国家的スキャンダル【児童移民】の真実を明らかにした実在の女性、マーガレット・ハンフリーズの物語である。

 マーガレット・ハンフリーズ(エミリー・ワトソン)は、イギリスのノッティンガムでソーシャルワーカーとして働いていた。
ある日マーガレットは、見知らぬ女性に「私が誰なのか知りたい。幼い頃に、たくさんの子供たちと一緒に船でオーストラリアに送られたのよ」と訴えられた。自分が誰なのか、母親がどこにいるのかも判らない、と言う。

 子供だけがオーストラリアに送られたなどという話を信じられなかったマーガレットだが、ある集まりでも同じように「弟がオーストラリアに連れて行かれた」という話を聞く。

 調査を始めたマーガレットは、やがて強制的にオーストラリアに送られた子供たちがいることを知った。そして、その児童移民がイギリス政府によって行われていたことも。

 マーガレットはオーストラリアに渡り、オーストラリアで子供たちを【保護】してきた慈善団体の集会に参加する。そこで大勢の人たちから家族を捜して、と頼まれた。

 親は死んだと騙されて船に乗せられ、【太陽が輝く美しい国で毎朝オレンジをもいで食べるんだ】と言われて連れて行かれた子供たちを待っていたのは、過酷な労働と虐待、性的暴行だったのだ。しかもその虐待には、慈善団体や教会までもが関わっていた。

 彼女の調査はしだいに大きな運動となっていったが、彼女への誹謗や脅迫行為も日増しに強まり、目隠しされた【市民】、歪められた【善意】が彼女を痛めつける―。


 この胸の張り裂けそうな実話を、ジム・ローチ監督は声高に告発するのではなく、Who am Ⅰ?(私は誰?)の問いかけに向かい合い、節度をもった静かな語り口で描いて見せる。

初監督とは思えない、熟練の技だ。ジム・ローチ監督は、イギリス映画の名匠ケン・ローチ監督の息子だというが、監督一作目にして父に並んだ。

 マーガレット・ハンフリーズを演ずるのは、1996年「奇跡の海」で女優賞を総なめにし、最新作「戦火の馬」でも話題の演技派女優エミリー・ワトソンだ。脅迫や中傷に傷つきながらも信念を貫いたマーガレットという女性を見事に演じきった。

 児童移民の一人であるレン(デイヴィッド・ウェナム)とマーガレットの関係も深く、刺激的で、観る者をドラマ世界に強く引き込む。

 恥知らずで忌まわしい児童移民の国家事業は、1970年まで続いていた。児童移民の数は、なんと13万人を越えるという。

 この映画の撮影中だった2009年11月16日、オーストラリアのケヴィン・ラッド首相は【忘れ去られた子供たち】に正式に謝罪し、2010年2月24日にはイギリス首相が児童移民の事実を認めて正式に謝罪したが、オーストラリアがイギリスからの児童移民を促進した背景には、
太平洋戦争中、日本軍がオーストラリア各地を攻撃したことによって、アジアからの防護が叫ばれたことがあったのだという。
この事件は、我々日本人にとって無関係ではなかったのだ。

 私は本誌に映画紹介を書くにあたって、昨年から何本ものヨーロッパ映画を見てきた。本誌に映画紹介を書いた作品だけでも「木漏れ日の家で」「やがて来る者へ」「少年と自転車」、そして「オレンジと太陽」。
こうしたハードな社会的テーマをもった名作が次々に作り出されるヨーロッパ映画界の底の深さに、私は驚嘆するばかりである。

 「オレンジと太陽」は、すでに4月14日から東京・岩波ホールでロードショー公開されており、順次全国で公開される予定だ。しかし公開が予定されている劇場の数は少ない。

 この映画がまず東京でヒットし、全国各地の映画館で上映され、多くの映画ファンにこの映画を見る機会が与えられることを、私は切に願う。

【学習の友 5月号】(たかはし・くにお/映演労連フリーユニオン委員長)。
オレンジと太陽
http://oranges-movie.com/