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TPP、不安定雇用、原発・・・、すべてに安保が・・・

2012-01-05 | 海外通信/外交/平和運動
TPP、不安定雇用、原発・・・、すべてに安保が・・・

1951年、日本は米国と「安保条約」を結び、1960年に「改定」されました。旧条約は全5条、新条約は全10条の短いものですが、そこでは、実は日本国憲法とは全く対立する約束がされています。
 その安保にしばられて進められている政治は、今日では安保条約の条文上の約束にさえ大きく逸脱したものとなっており、「日米同盟」と呼びかえられています。


民主党の政策転換の背後に

 「壊国」「亡国」「日本農業を、いや、日本の国そのものを滅ぼす」「米国の罠」などと究極の言葉で保守的な方々からまで批判されている環太平洋経済連携協定(TPP)に、野田首相は既定方針どおり参加を表明しました。
 なぜ?TPPへの参加も安保の約束にしばられているからです。

 半世紀をこえ安保条約を国是あつかいにして政治を続けてきた自民党政権は、安保政治が生み出した貧困と格差、ひきつづく社会保障の改悪、国民生活全般の悪化という事実に怒った国民によって政権から追放されました。

 「国民の生活が第一」のスローガンで誕生した民主党政権の鳩山首相は、誕生直後の09年9月24日、国連総会に出席。そこで「FTA、金融、通貨、エネルギー、環境、災害救援などできる分野から、協力し合えるパートナー同志が一歩一歩、努力を積み重ねることの延長線上に、東アジア共同体が姿をあらわすことを期待します」と、東アジア重視の新しい日本外交の方向を表明しました。

 驚いた米国は、同年11月14日、横浜で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にオバマ大統領をおくり、次のように演説させます。「米国は、広範囲にわたる締結国が参加し、21世紀の通商政策にふさわしい高い水準をそなえた地域合意を形成するという目標をもって、環太平洋経済連携協定(TPP)諸国と関与していく」と。
 ここには明らかに、日米間に「国際経済政策におけるくい違い」(安保条約第二条)があります。

 このくいちがいをめぐって、何がおきたでしょうか。
 内外の安保政治推進勢力による鳩山つぶしが進められました。後をついだ菅首相は「東アジア共同体路線」を受け継ぐと所信表明(2010年6月11日)。ところが、舌の根もかわかぬ1週間後に閣議決定した『新成長戦略』では、TPPに加盟して、TPPをアジア太平洋自由貿易圏に広げていくと、政策転換しました。

この立場は、2010年4月に発表された『経団連成長戦略2010』と同じ立場であるとともに、APEC横浜会議でのオバマ演説をうけて、米国の立場を受け入れたものです。菅首相は消費税引き上げを口にして惨敗した参院選直後の施政方針演説で「第3の開国」と位置づけて、「TPPへの参加」を国会で表明しました。

 なぜ、日本の政治はこのように豹変するのでしょうか。日米安保にしばられているからです。現行の新安保条約第二条では次のような約束がさせられています。

 ~日米安全保障条約 第二条~
 締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに務め、また、両国の間の経済的協力を促進する。

「締約国はその国際経済政策における食い違いを除くことに務め、また、両国の間の経済的協力を促進する」
 「東アジア共同体づくり」と「環太平洋経済圏づくり」。明らかに「その国際経済政策におけるくい違い」が日米側にありました。しかし、それを「除くこと」が安保条約で求められているのです。


 その上、新安保条約第四条では、

 ~日米安全保障条約 第四条~
 締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。

「この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する」と約束されています。この間、日米間で密かに「随時協議」が行われ、その結論にそって日本政府は態度を変えたのです。

 日本は、国と国民にとって重大なことを独自に決定できないような屈辱的、対米従属的な取り決めを安保でしているのです。日本国憲法前文の「自国の主権を維持し、他国と対等関係に立つ」つという条項にまったく反する条約、それが日米安全保障条約なのです


日本政府の政策を指示・点検

 08年9月、リーマンブラザーズ(投資銀行)の倒産によって引き起こされた世界同時不況で、日本で進められていた正規雇用労働者の非正規化・不安的雇用化が、年越し派遣村として表面化し、大きな社会問題となりました。

 この不安定雇用を生み出した原因は、日経連(当時)が1995年5月に発表した提言・「新時代の『日本的経営』」にそって進められた雇用の3グループ化だと解説されますが、そこにも安保の影があります。

 提言のでた1995年が、なぜ、「新時代」なのでしょうか。「新時代」は、いつから始まったのでしょうか。
 1991年12月、ソ連邦が崩壊し、「冷戦」に勝利したと宣言した時から支配者階級は、「新時代」と考えているのです。米国は唯一の超大国としてアメリカ型資本主義をグローバル化(地球規模)させるため、その後17年間、独善的に振舞いました
 日本に対しては安保をテコにして、アメリカ型資本主義、アメリカ的社会に日本を「構造改革」するための干渉を強めました。

 たとえば、橋本内閣の進めた「金融改革」、大規模小売店舗法の廃止(アメリカのおもちゃ会社「トイザらス」の日本進出)。さらに、小泉内閣の進めた「構造改革」―郵政民営化法の成立、製造業で派遣労働をおこなって良いとした派遣の自由化などです。この派遣の自由化がいかに労働者の雇用と生活を壊したかを示したのが年越し派遣村でした。

 これら日本政府の諸「改革」を背後から指示していたのが、1994年から2008年まで毎年出されていた「年次改革要望書」という公式文書です。
 日本社会を「このように『構造改革』しろ」と、秋に要望書を日本に渡し、翌春、進行状況を点検して米国議会に提出する。こんなことが15年間もおこなわれていました。

 こういうことをマスコミはほとんど取り上げません。小泉内閣の進めた郵政民営化がアメリカの要求に基づくことを指摘した政治評論家は、テレビに出演できなくなりました。あらゆることを徹底的に調べあげ文章を書いた井上ひさしさんさえ「年次改革要望書」を知り「驚きのあまりしばらく息が止まってしまいました」(『ふふふふ』講談社)というほどマスコミ対策もとられて、安保条約第二条の『両国の間の経済協力』は「促進」されているのです。
 

原発・エネルギーも米国依存

 福島の東電第一原発の事故も、安保がからみついています。
 自国の産業エネルギーをどう確保するかは、食料の確保とともに、国にとって一番大切な政策課題の一つです。エネルギーがなければ産業は立ち行きませんし、食料がなければ、文字通り、食っていけないのですから。

 かつて日本は、水力発電と日本の大地から掘り出される石炭を使う火力発電で産業エネルギー電力を確保していました。
 しかし、1960年、安保条約が改定され、先に紹介した経済協力条項(第二条)が約束されたとたんに、石炭よりも中東から米国がらみで輸入する石油の方が安くて効果的と圧力がかかり、石油を使う火力発電に転じていきました。60年当時、58%であったエネルギー自給率は、70年には15%、08年には4%(原子力を含めると18%)へと激減します。

 石油コンビナートづくりで日本列島各地で海が埋め立てられ、公害列島化しました。炭鉱労働者は廃坑のため失業しました(三井三池炭鉱の閉山反対闘争がたたかわれました)。
 ところが、1970年代に二度も石油危機がおき、石油の値段が高騰します。

 米国はそれをチャンスと見て、原子爆弾をつくるために生成した濃縮ウランのあまりを米国の独占的商品として商売するために、ウランを燃料とする原子力発電を日本に売り込んだのです。日本の産業エネルギーの米国への依存が、安保条約の経済条項をテコに深まるなかで、福島の原発事故は起きたのです。

 安全神話に騙されていたことに気づき、「日米原子力協定」を再分析した結果、日米安保条約を解消させないため、日本が条約廃棄を安保条約十条の規定にそって通告した際には、「米国は日本にウランの供給を止める」という秘密協約まであることが暴露されました。
 ~日米安全保障条約 第十条~
 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。
 もっとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができその場合には、この条約は、そのような通告が行われた後一年で終了する。


旧安保から60年、あなたは?

 TPPへの加入は(国のあり方全体を変えるものですが)、食料自給率の激減をもたらし、食糧はよりいっそう対米従属させられます。
 食糧、不安定雇用化の重大な原因である派遣労働、さらに産業エネルギー。これらを合わせてとらえると、日米安保条約は、米軍基地や自衛隊の海外協力など憲法九条に違反する軍事問題だけに関わるものではなく、労働者の雇用問題をふくむ労働基本権、国の食糧主権、エネルギー主権まで侵害する条約といえます。

 働いて生きるという人間生活の根本が、安保条約にしばられた政治によって、「構造改革」「規制緩和」され、安心して働けなくなり、安定した生活設計が奪われました。そのため、結婚できない、結婚しても子どもを産まない、産めないという状況のなかで、日本は人口の減る国となっています。

 働いて生きるという人間生活の根本が侵されたため、1997年以来、賃金は下がりつづけ、そのために国内総生産(GDP)の6割を占める国民の消費活動、内需が低迷。売れないからと、企業は海外移転。国内の労働者のさらなる失業増は、さらに賃金を引き下げ、内需を狭めるという悪循環をつくり、日本は主要国で唯一GDPが10年以上も頭打ちの国になっています。

 さらに、GDPとともに国の経済規模をしめす「国富」(政府と民間を合わせた国全体の資産)さえ減少しています。
 日本は中国と肩をならべて米国債を8000億ドルほども購入・所有しています(2010年2月米財務省発表)。
 今進行している異常円高のもとで、1ドル=100円なら日本円で80兆円だった米国債は1ドル=70円では56兆円です。ドル表示では同額でも日本円に直すと日本国が所有する米国債は30円の円高で24兆円も目減りしたことになりませんか。1円の円高でなんと8000億円の損失です。

 大企業は「1円の円高で○○億円の損失」と宣伝し、労働者の要求をおさえ、我慢を強要していますが、円高で一番富を失っているのは、日本国の国富です。ではなぜ、米国債を買うのでしょうか。それは、安保条約の経済条項にしばられているからです。


 リーマンブラザーズの倒産、ゼネラルモーターズの倒産、国有化は、「新時代」が来たとこの間進められたアメリカ型資本主義・アメリカ的国づくりが誤っていたことを、全世界に示しました。北アフリカでも中南米でも、新しい政治を求めて、人々は立ち上がっています。「ウォール街占拠」が全米に、全西欧に広がっています。

 私たちも長年つづいた自民党政権を倒し、政権交代を実現しましたが、民主党政権は旧来の安保政治推進勢力にからみつかれ、私たちの期待にこたえる立場を放棄しています。

 国全体がしぼんでいく状況で、労働者の生活水準の維持・向上は望めません。
 今こそ、私たちの生活不安、貧困と格差、日本社会の困難の原因を、しっかりと見極めることが大切です。

 今日の日本に求められているのは、安保条約にしばられたまま「政権交代」ではなく、日本国憲法の精神と条文に基づく政治の実現をめざす「政策交代をともなう政権交代」を実現することではないでしょうか。
 新年の4月28日、私たち日本国民は、旧安保条約発効60年をむかえます。あなたは、この日をどうむかえますか。

(しんたに・よしゆき/神奈川県学習協会副会長)