MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

フランスの大学生

2005-05-27 | 雑記
掲題の本を読みました(角川文庫)。
作家の遠藤周作さんが1950年から3年間フランスに留学した思い出を書いたエッセイです。

有名なフランス留学モノというと他に永井荷風の「ふらんす物語」がありますね。
「ふらんす物語」は100年前の話、遠藤周作さんの留学も50年前になります。
こうした本を読んでみると、フランスの描写が懐かしいと共に、時代の変化が感じられます。

「フランスの大学生」で言うと、「ああ、分かる分かる」と共感してしまうのがフランス社会の自己認識です。

自己認識の一方にあるのは、とてつもなく高いプライド。
「フランスは全てにおいて世界一で、言うまでもなく世界の中心」だという「信念」です。
今でもこうした考え方はフランスでは「常識」の一部になっていると思います。
今のようなグローバル化が進む前なら、さぞそうした自信は強かっただろうと思いますね。

ところが、自己認識のもう一方に、老衰して将来に不安を抱えた国、という像があります。
現代を考えれば、そうした見方はさもありなんとうなずけます。
米国主導の「グローバル世界」の形成、EUの成立、とフランス一国での影響力が見えにくくなっているからです。
「実は俺たち、自分たちで思ってるほど大したことないんだよね…」
という見方はフランス人MBA学生もホンネとして持っていたようでした。
数百年の間に植民地から収奪した富と文化遺産で食いつないでいるだけ?みたいな感じです。

で、面白かったのは50年前の掲題のエッセイもこの点を指摘していたことです。
当時でさえ、ソ連とアメリカに挟まれ、戦争で国土は荒廃し、「もう我々はダメなんじゃないか」、といった見方があったというのです。

もしかすると、フランスの社会はずっとこうしたアンビバレントな思いを持ち続けているのかもしれませんね。
過剰なまでのプライドを持ちつつ、同時に「本当に実体が伴っているのか?」と悩む、といった感じで。

こうした、同時に相反する何かが並存する雰囲気、というのはフランスの特徴のように思います。

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