エデン(新潮社) / 近藤 史恵
前作「サクリファイス」はロードレースと言う特殊な設定とそれを最大限活かしたプロットとラストの衝撃的でかつ胸に刺さる真相を知ると「サクリファイス」=「犠牲」というタイトルに込められた意味が最後にわかる素晴らしい構成で近年読んだ中でもかなり上位に来るほど好きな作品の続編。
今回は舞台をロードレースの絶対的最高峰のツールドフランス。実際に2009年には新城という選手が日本人としては十何年ぶりに出場して話題にもなりましたが、ヨーロッパでは絶大な人気スポーツのロード。
今作は正直前作のミステリ路線を期待して読むと肩透かしを喰らいますが、イチスポーツ小説として読むのであれば、そこそこ面白いです。他のスポーツには無い利他的なアシストというポジションの存在やチーム内の戦略や本来敵対するライバル同士の利害関係とリスペクトの混じった複雑で人間味のあるやり取りなどこの競技の奥深さを知ることが出来ます。
今回は主役の白石誓はむしろ物語のナビゲーターであり中心となるフランス人の新星ニコララフォンこそ主役なのかもしれない。物語の中盤の山岳ステージの白石誓との駆け引きとアシストとして白石誓が下した決断には前作のあの事件があったからなのか。個人的には今作の中で一番のシーン。
今作から読んでも支障は無いですがダンゼン前作「サクリファイス」を読んでから読むべし。なんかまた続きがありそうな気もする終わり方なんで次回作もあるのかな?ちなみに僕個人はママチャリすら乗りませんよ。
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