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ndd a.k.a NO-DOUBTによるレビュー。音楽中心に徒然と。微力でもアーチストや表現者への還元に繋がれば。

未来型サバイバル音楽論/津田 大介 牧村 憲一(中公新書ラクレ)

2010年12月29日 | BOOK/MAGAZINE
未来型サバイバル音楽論―USTREAM、twitterは何を変えたのか (中公新書ラクレ)
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津田氏本人(@tsuda)のTwitter上での読後ツイートをリツィートしまくるという過剰なソーシャルメディアプロモーションも賛否ありましたが、ちゃんとこうやって購入する人間がいるんだからまあ効果がないわけでもないのかな。

なんかTwitter原理主義者みたいな立ち居地になってますが過去の名著「だれが音楽を殺すのか?」などからもわかるようにこの人メディア論者と呼ぶのが正しい気もします。

本著はまさにここ10年の音楽産業の衰退(というか変化)の要因、過去と現在そして未来を点ではなく線で包括的にまとめているので90年代のミリオン連発とか「渋谷系」って何?みたいな若い人には貴重なアーカイブとしても機能。しかし音楽は水よりも安いなんて誰かが言っていたけど3000円のアルバムが100万枚売れる時代じゃないし、販促費を抑えてwebを主戦場に300円で100万ダウンロード目指しますなんてモデルのほうが時代には合うのかも。

レーベルと言う概念を新たにアップデートすべき時代においてその先端である取り組みとして教授のcommonsを取り上げているのでそのあたりの話題も必読。

色々と興味深い考察や提案もあって「ひとり一レーベル」というわかりやすいフレーズが象徴しているようにマイスペは元よりTwitterやUSTなど既存のソーシャルなインフラを使えばこれまでのいわゆるメジャーの資本がなくても、作り手自身が直接OneToOneマーケティングできる時代であるのは確か。その活用の提案と言う意味でも音楽に限らずクリエーターが自分をメディア化することは一度トライしてみるべきかも。まつきあゆむ氏や旅人などブレイクスルーした例も紹介されているし。やはり聴かれて、観られて何ぼだしね。

2010年のオリコンのシングルチャートが嵐とAKBで占領されているのは音楽として売れたと言うよりは、CDも嵐やAKBというソフトを構成する一部で曲と言うよりグッズとして買われているだけでしょう。だって嵐の曲なんて1フレーズも思い出せんよ。CDの販売数で計るのではなく実際個人(店舗等含む)に聴かれている時間を評価基準として数値化したら全然違うでしょう。

終章のほうで津田氏がフェスが一時的に音楽を繋いでいく機能を果たしていると言及していますが、まさに知らないアーチストの曲を聴く機会になるし、若手のミュージシャンが大御所と共演できて横と縦に繋がる場という視点はすごく共感できる。また一方でフェス乱立により淘汰も起きるだろうというのはおそらく始まっている。タイトルのすげ替えだけで似たような出演者のフェス多いもんねこれからはコンセプトがしっかりしてないとフェスもサバイヴできないだろうし。

「もう音楽がおいしい商売ではなくなる」というような発言があるのだけど、それでも人は音を楽しみ愛すからきっと音楽で食べていける新しいビジネスモデルが生まれるでしょう。

未来型サバイバル音楽論―USTREAM、twitterは何を変えたのか (中公新書ラクレ)


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