おかまのよろめき

現役おかまのお店日記&趣味のはなし

福寿荘

2008-03-28 08:28:37 | Weblog
瀬戸内の長閑な田舎で

18年間を過ごした私にとって

殺人事件は

あまりにも衝撃的だった

翌日の朝刊に詳細が載っていた

“殺されたのはソープ嬢”

と言うのが事件を更に浮き立たせていた


夜になると物騒な事件を思い起こし

部屋に一人で居るのが怖かった

そんな時、テレビが唯一の味方だった


確か映画を見ていた時だと記憶している

突然、何者かがドアを激しく叩いたのだ

しかも何かを叫んでいる

開けるとそこには

目を血走らせ、鬼の形相の男が立って居た

「うるせえんだよ!

      いつも、いつも でけえ音立てやがって!!」

男の迫力に声も出なかった

そこへ向かいの部屋の人が出て来た

男をなだめている

だが、男の怒りは収まらない

彼の言い分としては

階下に住む私の生活音の全てが

癇に障ってたようだ

言い訳になるが

私は決して大音量でステレオをかけたり

テレビを見たりした事はない

しかし、安普請のこのアパートでは

ちょっとした物音が騒音になるようだ

しかも階上に住む男は相当に神経過敏らしい

私はキレまくる彼にひとまず詫びた


次の日、私は不動産屋を何軒か見て歩いた

ソープ嬢殺人事件

階上の神経過敏な男

最早この部屋に留まる理由はなかった


こうして入居から数ヶ月で

福寿荘を出る事になった

都会ではよくある事かもしれない

その程度でいちいち引っ越してたら

東京では暮らしていけないのかもしれない


“福寿荘”と言う名前が皮肉に思えた










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