おかまのよろめき

現役おかまのお店日記&趣味のはなし

鍋の思いで

2009-03-05 14:54:04 | Weblog
昨夜、はす向かいのPに遊びに行ったら

レイコママが「アンタ、野菜足りてないでしょ

鶏鍋してあげるから食べなさい」と

いつもの強引さでテーブルにカセットコンロを持って来た

今日は出勤前に野菜たっぷりの焼きそばを作ったので

少々胸焼け気味なのだ

レイコママはお構いなしに春菊とえのきを鍋に放り込んだ

「ママ凄い量ね!」

「これをポン酢で食べると美味しいのよ」

自分が食べたくて作ったようだ

「そろそろ良いわよ、アンタ毒見して」

私の取り皿に山のように野菜を入れた

口に運ぶと鶏のおダシがしっかりきいていて美味しい

しかも身体があったまる

私の足元に置かれた電気ストーブが邪魔だ

「ママ、美味しいわ!」

口の端に春菊の欠片を付けたまま叫ぶ私

「こんなの簡単なんだからアンタも家で作りなさい」

「そうよね~!今度やってみようかしら」

絶対やらないと思うけど…


お鍋で思い出すのは大阪時代に遡る

当時の私は色んなバイトで食い繋いでいた

バスの添乗員、喫茶店、ゲームセンター、日焼けサロンと

どれも長続きしなかった

そんな私がビデオ屋で働く事になった

店長は当時30代半ばだったと思う

色黒で大きな瞳が印象的な遊び人風だった

小さな店だったので食事の時以外は

ずっと私ひとりで店番を任されていた

店長はその間、近所の雀荘で遊んでいるのだ

夕方から夜にかけて少し忙しくなる程度で

昼間はホントに暇な店だった

私一人で十分なのだ


ある寒い夜、閉店時間を過ぎても店長が帰ってこない

行き先は判っているが

連絡するのも野暮なので

取り敢えず帰り支度を済ませ待っていた

30分近く経ったところで

「すまん、遅なって!」

店長は、私のブスッとした態度に気付いたらしく

「鍋でも食おか!」

そう言って自分のマンションへ私を連れて行ったのだ

奥さんとは離婚していて

店長はワンルームで一人暮らしだった

「寒かったやろ、今アツアツ作ったるから待っとけよ」

キッチンで野菜や豆腐を切っている

とても料理なんかしそうにないタイプなのに

私の機嫌を取ろうと慣れない包丁を握っている

私も単純だから、そんな後姿を見せられただけで

一気に気分も晴れて鍋が出来るのを待っている


部屋の中はいかにも男の一人暮らしを物語っていて

女の気配はまるでなかった

またそこが私には嬉しかったのかもしれない

たまに別れた奥さんから店に電話がかかってくるが

あまり感じの良い印象ではない


鍋が出来た

湯気の向こうに店長の優しい笑顔が見える

紅葉おろしまで用意しているではないか

れんげで豆腐をすくった

「よく作るんですか?」

「今コレにはまってんねん」

店から帰ってきて一人で鍋をつついてる姿は寂しい

今日の麻雀は勝ったのだろうか


グーグルマップのストリートビューで

あの店を調べてみたが

今はゲームショップになっていて

名前も変わっていた

こんな寒い日に店長はまた一人で鍋をつついているのだろうか

























コメント
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