【COP10本会議にて】
10月22日の"ホットスポッターズライブ"明けの一幕。
主催一同が「オオッ!」と声をあげてどよめき、抱き合って喜ぶニュースが舞い込んだ。
「COP10議長国である日本の上関で、今まさに悲劇が行われている」
COP10本会議にて、議長自らが上関のことに言及したというのだ。
本会議という最上ランクの議題として、扱われたことは非常に大きい。
NGO、NPOの必死の働きかけ、ヘラルドトリビューン紙への意見広告など、様々な方面からの力が功を奏した形となった。
国際世論の表舞台に引きずり出された「上関原発問題」。
日本国内の世論が形成されるまでは、まだ時間がかかるのだろうか。
祝島にまつわる二本のドキュメンタリー映画だけは、機会を逃さず観ておいて欲しいところです。
【そしてパレード】
名古屋市内、栄のパルコ前に集ると、100人ほどの人々が集っていた。
かつて忌野清志郎のスタイリングを務めていた「ルーちゃん」が、何十人もの人々の装いを飾っていた。
「でもでもでも、デモじゃないよ~♬」
「パレードなの!」
前の週に、パリでも同じことやってきて帰って来たばかりのルーちゃんの意気は高い。
パリではこうしたアピールや表現は、街頭で好意的に迎えられる。
確かに、どってことない格好で集るよりは、徹底的に楽しんだ方がいい。
ルーちゃんのおかげで僕らは変身することが出来て、パレードそのものが特別なものへと深まっていった。
デモの申請して通れば、警察隊に護られながら、白昼堂々大通りをアピールして歩けるのだ。
先日の、渋谷での初めてのデモ行進の時にも思ったのだが、この公共サービスは、なかなか素晴らしい。
僕らはジェンベやギターをかき鳴らしてトランペットを吹く人が居る。大きなひとつのリズムを奏でながら名古屋市内を練り歩いた。休日の街頭で、人々は好奇の目で僕らを見たが、何せファンキーな格好してる集団が、しかも謎に音楽的素養が高いもんだから、見てる人たちが笑顔になっていく。カメラを取り出して、撮影を始める人が続出する。
俺は、作りかけの『祝島帰り』という曲のフロウを確かめるように何度もうたった。歌詞が解らないでもメロディーについてくる人が何人も居て、コール&レスポンス。声が、パルコの看板や信号機をふるわせて響き渡る。
無頓着に消費の海を彷徨う休日の人々に、せめて「COP10を名古屋で今、やっている」ことだけでも伝われい、と願う。
「ねえー、ルーちゃん、ところでこのパレードは何を訴えているの?」
ほろ酔いで尋ねると後ろの列からルーちゃんが答えた。
「今日はLOVE & PEACEだけ!」
あ、簡単って、大事。
こうした解りやすい「市民力」のアピール。
これはこれからの時代を切り開く、ピースで愉しい、強烈な方法だと認識した。
「市民力」。
これは民主主義でもなく社会主義でもない、新しい市民政治の時代のキーワードだ。
ファイヤーダンスが出来たり、ベリーが踊れたり、サンテリアが叩けたり、カポエイラが踊れたりする人たち。
三味線が弾ける、三線が弾ける、ギターが弾ける、太鼓が叩ける人たち。
ホーミーが出来たり、詩吟が出来たり、コーラスワークできたり、叫んだり出来たりする人たち。
歩ける人たち、走れる人たち、逆立ち出来る人たち、車いす運転できる人たち。
旗つくってきたり、手製のメッセージボードをつくったり、衣装つくったり出来る人たち。
オイシイもん作って来たり、呑ませたり出来る人たち。
デモっていうか、パレードっていうか。。
実はこれは、いつもクラブや野外パーティで遊んで来た俺たちパーティピーポーのためにある表現行為なんじゃないだろうか。
周りには芸術家が溢れている。
ワールドワイドにみて、そのストリートのレベルは高い。
この路上の表現の世界にも、多くの才能たちが面白味を見出して顔をのぞかせに来るに違いない。
ストリート出のアーティストたちは、路上で行われてることが大好きなんだ。気になってしようがないはずだ。
地下街のカルチャーよ、昼間の街に飛び出してしまえ。
世の中にファンキーを教えるんだ。
犬も首に草飾りでお洒落です。
【3トンの船を動かす「人手」】
広場の中央には、巨大な「アシ(葦)船」が鎮座している。
宝船プロジェクトの皆さんが、人類最古の船と云われる葦舟を再現。これは後日、平和の祈りを込めて伊勢湾から出航される。
各地の活動家たちによるアピール、ロンゲストウォークやアメリカンインディアンムーブメントの指導者デニス・バンクス師(『今日は死ぬにはもってこい』著者)のスピーチ、僕らの音楽の弾き語りなどがあった後に、150人ほどに膨れた参加者全員で、3トンの葦舟を縄でひいて台車まで移動させる。
「エーサー」「ヤーホー」
ネオンの瞬き始めた夕刻の中心街に、ポッカリと祝祭の空間が形成されていった。
東北で田植えや稲刈りを50人以上で行った時にも似た感慨を感じる。人が息を合わせて、力を出し合うと、誰もがちょっとづつの苦労で大きなものが動くという基本原理。
「人手」って有り難い。
「人手」ってホッコリする。
最後にクレーンで船が吊られて、伊勢湾行きのトラックの荷台に降ろされるまで、輪になって太鼓を奏で、踊る人々。
夕闇迫る繁華街に照らし出されて、いよいよ葦舟はその偉容を増すように思えた。愚かしい現代と、賢明なる古代の交錯点が、図らずもそこに露出していて、何かグニャリとした奇妙な感覚は、達成感ともまた違う何かであった。
無事、大型トラックに据え付けられた古代舟を見届けて、僕はギターを抱えて会場を後にした。
【山口へ向かう】
その足で名古屋駅へと向かうと、山口県岩国方面までの新幹線の切符を求めた。
今から向かえば、明日の上関町での「反原発デー」の集会に間に合うことが出来る。
知ってしまったからには責任がある。
好奇心でもなく、必要以上に駆り立てられた使命感でもない。
ただ、事の起きている現場に身を置き、それを出来るだけフラットに目の当たりにしたいという気持ちだった。
本当のことが伝わらない。
どの世界でも起きている、ディスコミュニケ-ション。現代の情報の在り方の問題。
誰もが日常的に味わっている歯がゆさ。情報はこんなにも溢れているのに。
やはりそれを埋められるのは、自分自身が旅人としてジャーナリストとして、己を納得させること以外にない。
自分が一次情報になることが大切だ。 TELL ME YOUR STORY. HISTORY. YOUR ORIGINAL STORY.
お喋りな俺のことだ、いずれおもしろおかしく誰かに語り始めるだろう。
それで伝わることもある。俺がメディア。ミナがメディア。6人辿れば、バラクオバマ(に辿り着くらしい。統計学的に)。
新幹線代くらいは口座にある。
幸い、東京に帰って作曲をするか、上関の現場に行くかを選べる「自由」は在る。
こうして、伝えられるミナの存在があるということも、確実に後押しした。
多少タフな旅になっても「行っちまえ」「お前が観てきちまえ」「ナニカを持って帰ってミナに伝えなさい」と。
やり甲斐を与えてくれる互いの存在に感謝。
ANTA MEDIA
(つづく)
【追記】
ホットスポッターズライブ主催のハヤト。BIG UP.
7 GENERATIONS WALK 代表のヤマちゃん、あなたの”ハンガーストライキ”する姿を見て、また俺の意志も固くなった。
原発を推進するためにハンガーストライキする者は居ないが、阻止するためにハンガーストライキする者は居るという事だけでも、どちらに真実が在るかが解ります。
その他、ライブからパレードに、そしてCOP10開催期間中の長いアイダ、ボランタリーに集り活動したホットスポッターズの皆さんの心意気に大きな拍手を。裕福な生活とは縁もない、暇人でも何でも無い、多忙な皆さんが心意気で注いだエネルギーは、必ず世界に向けての大きなアピールになったと確信します。
*パレード詳細
「いのちのパレード」
10月23日(日) 13:00~17:00
集合: 12:00
名古屋市 栄の久屋公園 光の広場
(名古屋市営地下鉄久屋大通駅下車 地下連絡通路直通)
完成した葦舟を神輿に、新たな時代の船出に市内をパレード
予定ルート:市内中心部~国際会議場~熱田神宮~宮の渡し公園
参 加: 宝船プロジェクト 100% LOVE & PEACE PARADE、
7G Walk 生物多様性パレード on 御堂筋実行委員会
虹のカヤック隊 アースデイあいち…etc
その1