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油をめぐる水辺のせめぎ合い(3)〜コートジボワール・ガーナ領海係争が結審

2017-10-04 07:30:38 | アフリカ情勢
ンボテブログでは過去2回にわたって話題にした、コートジボワールとガーナの国境紛争。その行方に答えが出た。

油をめぐる水辺のせめぎ合い
第一話 ガーナ・マハマ大統領、コートジボワールを電撃訪問
第二話 国境画定はハンブルグの法廷へ


ギニア湾に並んで隣り合う二つの国。地域では比較的大きな国で、両国ともそれなりに開発が進む。地域での主導権を握るある意味ライバル国どおしだ。

しかしその関係はアシメトリック(非対称的)。コートジボワールは仏語圏。地域の多数派で、域内の成長ハブを担う。他方、ガーナは英語圏、周囲を仏語圏三カ国に覆われている。同じ英語圏のナイジェリアとも微妙な関係。地域では結構一人ぼっちなところがある。


両国沖では石油、天然ガスの埋蔵が確認され、開発が進められてきた。ガーナは一歩先行、ロシア系のLukoilや米Vancoなどが採掘を行うほか、他の鉱区でも探査が続いている。一方のコートジボワールは日産4.5万バレル、わずかな量だが一応、炭化水素の生産国入り。2020年までに20万バレルの生産を達成するとの目標のもと、石油開発を進めるパートナー探しに躍起だ。

そして鉱区がぶつかり合うのが、皮肉にも両国の領海の境界域であった。

ガーナ政府とコートジボワール政府は、それぞれ異なった国境線画定の方式を主張している。前者は「等距離基準線方式」、後者は「中間線方式」に依拠。後者によれば、ガーナが権利を与え探査が進む鉱区が、コートジボワール領海にあたるとの主張につながる。



コートジボワール政府は、本件の裁定をハンブルグの国際海事裁判所(TIDM: Tribunal maritime international du droit de la mer)に付託した。

両国のこじれた関係を修復しようと、両国大統領は往来。コートジボワールのワタラ大統領は、「(国境線確定をめぐる)係争と、揺るぎない友好関係は別」と述べ、友好関係を慮った。一方のガーナもガーナは結審までの間、当該海域での資源探査は凍結する、という紳士協定を表明。しかし国境線確定に関する議論では、両者譲らず、合意することはなかった。ギクシャクする両者の間を、コフィ・アナン元国連事務総長が仲裁を試みたが、これも失敗に終わっている。


そして先の9月23日、4年に渡る両国の係争にTIDMの裁定が下された。判決は判事の全会一致でガーナの勝訴、「ガーナの資源開発はコートジボワールの主権を侵害していない」と結論づけた。

裁判所は海洋法に関する国際連合条約(Convention des Nations unies sur le Droit de la Mer)を援用。両国の国境線は明確に確定はされていなかったものの、ガーナは2007年、この海域における鉱区をすでに石油会社に割り当て、資源開発を進めてきた。コートジボワールが同海域の権利を主張し始めたのは2013年、しかも必ずしも根拠ははっきり示されていなかったという。その上で判事は、ガーナの主張する「等距離基準線方式」を妥当とした。


コートジボワールは冷水を浴びた格好だ。ともあれ20億バレルの埋蔵と言われる石油鉱脈が、みすみす手からすり抜けていったコートジボワール、ショックは隠せない。

しかしアフリカの歴史は、資源が国を激しく対立させ、人々を引き裂くことを警告してきた。コートジボワール政府は、交渉でこそ柔軟な対応は見せてこなかったものの、係争を横目に、ガーナとの信頼情勢に努めてきた。そして判決後も差し当たり大人の対応を見せている。

これはコートジボワールにとっての不幸中の幸い、といえる出来事ではないだろうか。資源の罠にはまったり、資源により人々が引き裂かれたりするような事態に陥るよりは、100万倍いいのだから。

(おわり)

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