ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

ベラルーシ人ジャーナリストによる壺井栄ロシア語訳作品集の感想

2023-01-05 |   壺井栄
 昨年、チロ基金が出版した壺井栄ロシア語訳作品集「二十四の瞳」の感想をベラルーシ人ジャーナリスト、エッラ・ドゥビンスカヤさんが寄せてくれました。
 オリジナル全文はベラルーシ人向けロシア語版ベラルーシの部屋ブログで公開しています。こちらです

 一部抜粋になりますが、日本語に訳しましたので、こちらのブログでご紹介します。

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 数十年にわたるベラルーシと日本の文化交流活動を続けて

 日本人の辰巳雅子さんは、ミンスクで27年暮らしています。ミンスク市ウルチエ地区のミンスク市立第5児童図書館日本文化情報センターの所長を務めています。同センターはミンスク市立中央児童図書館に移転しました。

 辰巳さんは、ボランティア団体チロ基金が行っている出版プロジェクトで、世代を問わずベラルーシ人に書籍が持つ遺産と読書の楽しみを紹介しています。 またベラルーシ語からヤンカ・クパーラヤクプ・コーラス、リホール・バラドゥーリンの作品を日本語に翻訳しました。2005年にはフランツィスク・スカルィナのシンボルのもと、音楽プロジェクト「月と日」を立ち上げ、日本人作詞家による歌詞がベラルーシ語に翻訳され、演奏されました。

お茶会、生け花展、日本語講座、子供向けの折り紙ワークショップ、ボロヴリャヌィ市にあるSOS子ども村での内部被曝検査とサプリメント支援、ベラルーシ共和国立小児外科センターへの内視鏡手術器具の購入と寄贈、これらのボランティア活動は全て、辰巳雅子さんとその家族、およびチロ基金の善意によって行われてきました。ここ数年、辰巳さんは日本の人気児童文学作家の本をベラルーシ語とロシア語に翻訳しています。2016年には新美南吉の作品集「ごんぎつね」のロシア語訳が出版され、さらに童話集「手袋を買いに」は、日本人の独創的な考え方や世界観をベラルーシ語で読者に伝えました。

2021年には新たな文学翻訳プロジェクト、壺井栄ロシア語訳作品集「二十四の瞳」が出版されました。収録された作品は懐かしい子ども時代と家族の世界、日本の伝統文化、日出ずる国の独自な自然と歴史が綴られています。日本とベラルーシを結ぶもう一つの新しい文化の架け橋となる本です。
岬の村に若い教師、大石久子が赴任してきます。 子どもたちは伝統的な着物を着ているだろうと想像していましたが、実際には洋服を着て高い教育を受けた若い教師が自転車に乗って颯爽とやって来ました。そしてすぐに生徒たちの人気を集めたので、偏見の目で見ていた村人たちも変わっていきます。若い小石先生が地平線に現れると、二十四の瞳がその姿を追いかけます。富士子、松江、小ツル、早苗、ミサ子、吉次...たちの瞳です。 
 
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 辰巳雅子さんに、ベラルーシ読者向けに出版された壺井栄の作品集についてお話を伺いました。

―作者の壺井栄は本当に日本で人気があるんですか?

「はい、とても有名です。 壺井栄は1899年8月5日、小豆島の坂手村で10人の子供を持つ樽職人、岩井藤吉の第5子として生まれました。 勉強がよくできたのですが、中学2年生までしか勉強を続けることができず、その後、父親の海運業を手伝って働いていました。16歳のとき郵便局長に書道の腕前を見せ、その筆跡の良さから郵便局に就職することができました。 その後、村役場で働いていた時期もあります。 26歳で詩人の壺井繁治と結婚し、東京に生活拠点を移しました。 1928年、短編小説を書き始め、文学コンクールに挑戦し、思いがけず賞を受賞しました。 壺井栄は遅咲きの作家ですが、38歳からは作家としての成功を収めてゆきました。壺井栄原作の映画が撮影され、ミュージカルが上演され、漫画化もされました。壺井栄は家族の物語、小豆島の美しさ、東京での生活について書き続けました。

―ロシア語訳作品集のロシア語訳を担当した人について教えてください。

「2007年以降、日本語文化愛好会メンバーが日本文化情報センター日本語教室で勉強しています。 まず当センターで日本語翻訳の実習を受けたミンスク言語学大学の学生3人が壺井栄のいくつかの短編を日本語からロシア語に翻訳しました。 その後、さらに日本語教室の生徒が22人加わり、計6作品を翻訳しました。 25人が本の翻訳に参加したことになります。
 『畳』はい草、『佃煮』は小魚の醤油煮、『豆腐』は豆乳から作ったチーズ、『着物』は伝統的な和服であるなど、ベラルーシ人の知らない日本語の単語や表現を用語集して巻末に加えました。 そして『先生』は教師に話しかけるときに使う呼び方です。」

―「二十四の瞳」の登場人物が学んでいた時代、日本にはどんな学校があったのでしょうか?

「20世紀初頭、日本には2種類の小学校がありました。 そのうちの一つでは、現代の日本の小学校のように6年間の義務教育で無償でした。 別のタイプの学校では、8年間教育で、うち6年は小学校で無償義務教育。その後2年間の中等教育が受けられました。これは有償で義務教育ではありませんでした。一般的な中学校の他、男子校と女子校があり、入学試験もありました。このような中等教育は5年間で、義務教育ではなく有償でした。 卒業証書があれば、高等教育機関への入学試験を受けることができます。」

―登場人物のモデルはいますか?

「登場人物の原型は、壺井栄の家族や親戚、親しい人々でした。 例えば、短編『まつりご』に出てくるおばあさんとお嫁さんは壺井栄の祖母と母がモデルとされています。壺井栄は子どもの心理と子沢山の家庭の人間関係をよく理解していました。 『まつりご』では、孤児のトシと仙吉が引き取られることがテーマになっています。壺井栄の両親が実際に孤児を養子にしていたことから、実話が作品の下敷きになっていると言えるでしょう。 また登場人物の多くは作品中で、子どもを育てるには心に無限の愛が必要だということを体現するように書かれています。」

―壺井栄の作家像とは。

「壺井栄は、家族愛、貧しい人々への優しさと同情、戦争への憎しみについて書きました。 彼女は文学が持つ言葉の力を信じ、それを通して自分の考えを表しました。自然や花、海の美しさ、夜に船から見る山上のともしびなどの描写が作品世界を彩っています。」

―壺井栄の作品は日本で映画化されたことがありますか?

「1954年、木下惠介監督が『二十四の瞳』を映画化しました。 この映画は大成功し、第12回ゴールデングローブ賞を受賞しました。 映画の大ヒットによって、原作がベストセラーとなり、多くの観光客が小豆島を訪れるようになりました。」

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 日本文化情報センターは、1999年にチロ基金創立者碓井博男氏をはじめとする日本人の支援により設立されました。
 そして「二十四の瞳」はすでにベラルーシ国立図書館に届き、蔵書の一冊となっています。 女性の読者にぜひ一読することをお勧めします。

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2023年1月5日。ウクライナ侵攻から317日目

2023-01-05 | ベラルーシ旅行・長期滞在・留学注意情報
 2023年1月5日。
 雪がほとんど溶けた昨日。夜の間に雪が降って朝起きたら、また雪が積もっていてびっくり。そこへ小雨が降ってきて、また雪が溶け始めました。と思ったらその雨がだんだんみぞれになり、そして雪になりました。このままホワイト・クリスマスになりそうです。

 ロシア大統領がキリル総主教の訴えに耳を傾け、クリスマスに停戦することを軍部に指示しました。
 よかったです。しかし期間が2023年1月6日の現地時間12:00から24:00までなんですよね。12時間だけですか。
 と思ったら、実際は36時間だったようです。こちらの速報では12時間だったのですが。
(後記です。キリル総主教が12時間の停戦を訴えたところ、ロシア大統領がそれを受けて36時間の停戦を決定したということでした。)
 正教では1月6日のクリスマスイブも大事な日です。殺生なことをしている場合ではないですよね。


 今日はキリル総主教だけではなく、ロシア大統領がトルコ大統領とも電話会談をしました。トルコ大統領府によると、エルドアン氏はプーチン氏に対し「平和と交渉を呼び掛ける際には、一方的な停戦と公平な解決策への展望を示すべきだ」と促したそうです。
 このような説得をロシア大統領が聞いたということでしょうか。トルコ大統領の顔を立てなければならなかったのか。あるいはロシア軍を立て直すための時間が必要なのか。だから36時間なのでしょうか。


 ロシア大統領は「ウクライナにも多数の正教信者がいる」として、ウクライナ側にも停戦に応じるよう求めました。
 ウクライナ大統領府長官顧問は今日、ツイッターで、ロシアのプーチン大統領が呼びかけた一時休戦について
「ロシアが占領地から撤退して初めて停戦できる」
と述べ、反発しました。
 
 でも、ウクライナが去年から決めたクリスマス、12月25日もロシアは祝日でないから、激しくロシア軍が攻撃していましたよね。同じ論理で考えるなら、1月7日はウクライナは祝日でないから、ウクライナ軍はロシアを攻めていいということになります。

 ウクライナ大統領も
「ロシアはクリスマスを隠れみのにして、ドンバス地方での我々の反撃を中断させ、兵士や武器を送り込もうとしている」
と批判しています。


 今日はロシアでまた動員令が出るという噂が飛んでいたので、ビクビクしていましたが、実際にはクリスマス停戦の話が出てほっとしました。少なくとも動員の話はクリスマスが終わるまで出ないでしょう。


 ベラルーシからの報道によると、2022年のノーベル平和賞を共同受賞したベラルーシの人権活動家アレシ・ビャリャツキ氏と同氏の同僚3人に対する初公判が5日、ミンスクの地区裁判所で開かれました。
 ロシアの有力紙「独立新聞」によると、「社会秩序を破壊したグループへの資金提供」などの容疑をかけられており、有罪が確定すれば、7~12年の自由剝奪の刑を科される可能性があります。ビャリャツキ氏らは容疑を否定しています。
 ノーベル賞を受賞しても裁判にかけられるのですね。


  ベラルーシ国防省は今日、国内でロシアとの地域合同部隊を強化すると発表しました。安全保障や防衛の向上が目的だそうです。
 国防省は「ロシアから軍事要員や兵器、特殊装備が引き続きベラルーシに到着する」とし、軍事演習のほか、戦闘に絡む調整活動を計画しているとしました。