2021年3月6日、ネット上で感動ストーリーと紹介されている話です。ある人がある図書館に行き、バルザックの本を借りて、中を開くと見返し部分に前にこの本を借りていたらしい人の手書きのメモがあるのを発見しました。
それによると、この本は、反政府活動を行ったことにより、逮捕されて３ヶ月間刑務所に入れられていた若い女性が、刑務所の中で読んでいた、ということが判明。メモを撮影して画像をネットに上げると反響がありました。そして、このメモを残した若い女性の祖母を名乗る人からコメント欄に書き込みがありました。
それによると、この女性は図書館で本を何冊か借りていましたが、その後反政府活動に参加し、逮捕されてしまいました。しばらくして、「貸出期間が過ぎているので、返却してください。」という連絡が図書館から自宅へ。祖母は孫の代わりに本を持って図書館へ行ったのですが、「１冊足りませんね。」と司書に言われました。その１冊は孫娘が刑務所に持って行っていて、そこで読んでいたことが後で分かりました。３ヶ月の服役中に読んでいることが鉛筆で書いてあり、「このメモを今読んでいるあなたが新生ベラルーシで暮らしていますように。」と締めくくられていました。
その後、孫娘は釈放され、返すのが遅くなってすみません、と自ら図書館へ返しに行きました。司書は、見返しの鉛筆書きのメモに気づいて、誰かに消されないように透明なセロテープを上から貼りました。そして黙って本棚へ戻し、それを新しく借りた人が画像に撮って、冒頭のネットへの投稿につながったのです。
この本のタイトル、図書館名、借りた人の氏名、テープを貼った司書の氏名は当然ですが伏せられています。テープごとメモ書きが剥がされる可能性もあるからです。
メモの内容もそうですが、消されないようにテープを上から貼った司書も賞賛されています。
この感動ストーリーを読んで、私が思ったこと。「この図書館は私が勤務している図書館である可能性はほとんどない。」
そして「私が勤務している図書館で同じようなことが起こったら、どうなるか。もし館長が気がついたら、血相を変えて消しゴムでこのメモ書きを消すだろう。しかし館長は自分で貸し出し業務をすることはないので、返却された本の見返しのメモなどに気がつくことはない。」そして「こんな落書きして！と怒りながら消しゴムで消し始める同僚Aさんや、こっそり透明のセロテープを上から貼って、本棚に戻すであろう同僚Bさん、こんなところにこんなものが・・・どうするう？と大きい声で同僚に見せ、きまじめに館長に報告しに行って「何これ！ 今すぐ消しなさい！ 他の本も全部チェックして！」と自分が落書きしたわけでもないのに、館長から大声を出され、余計な仕事（所蔵文献の落書き消し）を増やして、周りの同僚から顰蹙を買うCさん・・・などの顔」が思い浮かびました・・・・・・。
第７１回ベルリン国際映画祭が開催され、昨日ベルリナーレ・スペシャル枠で、ベラルーシ映画「Courage」(アレクセイ・パルヤン監督)が上映されました。
これはドキュメント映画という扱いですが、俳優が脚本に沿って演じているシーンと、実際の映像の両方をモンタージュしています。実際の映像というのは、昨年8月に起きた反政府デモのようすです。
タイトルのCourageは「勇気」という意味です。原題はベラルーシ語です。
第７１回ベルリン国際映画祭公式サイトやTouTubeのベルリン国際映画祭チャンネルでこの映画の予告編が見られます。（１分３０秒ほどですが。）英語字幕付。
YouTubeのコメント欄には多くのベラルーシ人が書き込みを残しており、ここではいちいち日本語に訳しませんが、一言でまとめると「泣いている人が多い」です。
映画祭での上映後、評論家がいろいろな感想を述べているのですが、私はこの映画を全部見たわけではないので、何とも言えません。しかし、映画評論家の言葉を拾い上げてみると、この映画はベラルーシが抱える問題をテーマにしているが、その問題が今も現在進行形で、つまり解決していない点を挙げ、したがって監督は、まだ解答（あるいは歴史的な結果）の出ていない問いを視聴者に投げかけている・・・そうです。
