8月10日の夜、ミンスク市内の反政府デモ集会に参加していた男性が、治安部隊に身柄拘束される際に暴力を受け、護送車に収容されたものの、気を失ってしまったので、治安部隊員が護送車から担ぎ出し、近くの路上(車線と車線の間にある草地)の上に寝かせました。(放置です。医者を呼んだりはしていない。)
周囲にいたデモ参加者が気づいて「何をしているんだ!」と騒ぎ始め、治安部隊員に「拘束するな! 解放しろ!」と叫びましたが、男性は意識がなくぐったりしています。治安部隊員の一人は、
「ほら、解放してやったじゃないか! 頭がおかしいのはお前たちのほうだ!」とデモ参加者たちに向かってクルクルパーのジェスチャーをしました。(怪我をさせて気絶した人を草地に放置して、本来なら逮捕するところを解放してあげた、と言ったわけです。)
デモ参加者のほうも気が立っているので、気絶した男性を離れたところから見て(近づくというのは治安部隊に近づくということだからできないのです。)死んだと思い込み、要するに反政府デモ集会参加者初の死者が出たと考えてしまいました。
後からこの男性は生きていたことが判明したのですが、この様子が動画撮影されていてネット上で拡散。
「ほら、解放してやったじゃないか!」の部分は静止画像になって世界中に拡散。有名な報道写真の一つにまでなってしまいました。
「AIによって治安部隊の覆面の下の素顔は分かるんですよ」の動画にもこの画像が例として使用され、治安部隊員の本名、生年月日、自宅住所、妻の氏名、生年月日がネット上で晒されました。
しかもこの治安部隊員の妻が、その世界では有名なボディビルダーだったのでその後、嫌がらせや脅迫(日本でもありますが「死ね」とか書かれたりそういうの)を山のように受けたそうです。連日、1日1000通とか・・・
それに疲れ果てて、妻のほうからもういっしょに暮らしていけないと離婚を9月中旬に切り出し、そして今月離婚成立。妻のほうが独立系メディアの取材に応じて、「離婚しました。私が出て行って、(もう別のところに暮らしていますよ。)」アピール。もう治安部隊員とは無関係になって、静かに生活したいのでしょう。
そのほうが、夫にとっても自分にとってもいいことなのだと判断したと語り、またこんなことがなければ、家族としてうまく続けていけていたはず、とも取材で語りました。
治安部隊の妻というだけで、何も悪いことはしていないのに、死ねとか言われるんですか・・・。(日本でもこういうことがありますね。加害者家族が誹謗中傷受けたり、責任取れと言われたり、代わりに謝罪したり・・・。)
この人は有名人だったので余計に大変だったと思いますし、このようにマスコミに離婚の経緯などわざと語っているというか、語るほうがいいと判断したのか、と思いました。
(有名人でも、細身の清純アイドル歌手でした、という有名人だったらこんなに激しくバッシングを受けなかったかも。ボディービルダーで筋肉ムキムキでフィットネストレーナーしてます!というすごく健康的できびきびしている女性なので、「死ね」と連呼しても死ぬわけないし、叩いても痛くないでしょあんた、強い女なんだから・・・とイメージから思われて、余計に誹謗中傷を受けたのかもしれません。
ベラルーシの一般人もですね、この社会情勢不安定の中暮らしているとストレスが溜まってくるのですよ。そのストレス発散のために、このちょっとやそっとでは死にそうにない外見の女性に、悪口を言ってやれ、という心境なのかもしれません。それで「死ね死ね」言って、すっきりストレス解消できたのでしょうかね・・・。こういうストレス発散方法はやめましょうよ・・・と思います。一方で治安部隊の妻というだけで何も悪いことしていない人にこれだけ無関係の人間が誹謗中傷するとは、驚きでした。やっぱりストレスが溜まっているベラルーシ人が増えているんですね・・・。最近路上で酔っ払っている人もよく見かけます。)
他にも治安部隊の家族の中で、意見が合わず分断が起こっているかもしれないし、離婚話もあるのかもしれませんが、それはマスコミが取材しないので、実際は治安部隊員の離婚が増えているのかどうかは分かりません。
上記のご夫婦は、いつかこの国が落ち着いたら、再び結婚していっしょに一つの家に暮らしてほしいなと思いました。
(もっとも、自分の夫がデモ参加者に暴行して護送車に入れたのに、その後調子が悪そうだから担ぎ出して、路上に放置して病院にも搬送しようとせず「ほら逮捕する代わりに解放してやったぞ。」と言った夫の人間性に幻滅しての離婚だったら、もうやり直せないでしょう。)