以前から予告していたとおりと言えばそうなのですが、ハッカー(集団)と思われる「サイバー・パルチザン」が9月20日、約1000人分のベラルーシの治安部隊員の個人情報を流出させました。
氏名、誕生日、勤務地、所属、肩書きなどが、ネット上で閲覧できる状態です。
あっという間にネット上で拡散。個人情報のリンク先を掲載するサイトも多数です。クリックすると「閲覧できません。」というエラー表示が出るサイトも多いですが、すっと閲覧できるサイトもあります。
このように一気に拡散すると、政府が完全にネットを遮断しない限り、無限に閲覧できます。それに個人のPCに保存されて、しばらくしてからまたネット上に出てくるでしょう。もう止められません。
サイバーパルチザンは「治安部隊のみなさん! これだけではなく、あなたの電話番号も把握しています。(身柄拘束を続けるなら、それも公開しますよ。)それと、一部の人については愛人との会話なども記録を収集しています。(奥さんにばれてしまいますよ。)」と表明しています。
さらにサイバーパルチザンは
「前もって警告しますよ。目出し帽の下に素顔を隠し続けることはできないことを。ベラルーシ大統領、内務大臣、大統領事務局長、血に飢えた将軍たち(軍人たち)は法的だった治安部隊を法外な悪党集団に変えました。そして法外な行動(拷問)をしてもよいという命令を出しました。これは平和なベラルーシ一般人に対する宣戦布告ですよ。」
というメッセージも添えました。
この1000人のうち、サイバーパルチザンが特に「ベラルーシ人の血に魅入られた12人」については、乗っている個人使用の乗用車の車種やナンバー、マンションの部屋番号はありませんが、自宅住所などがおおよそ流出しました。
また7人については携帯の電話番号も流出しました。
この個人情報流出により、(よくないことではありますが)特定の個人に対する個人的な攻撃や私刑もこれから起きるかもしれません。
その家族は、特に子どもは学校でいじめにあったりするかもしれません。
想像してみてください。同じクラスに、親が反政府デモ参加者を警棒で叩いているという子どもと、親がデモ集会に参加していた、あるいは近くを歩いていただけで、殴られ、留置所で拷問を受けたという子どもがいっしょに勉強している光景を・・・。
この1000人の個人情報を流出された治安部隊員からは悲鳴が上がりました。
自分の名前をこのリストから消去するよう1日でこのうちの200人から要請が出ました。要請先は自分たちの勤務先、内務省です。
サイバーパルチザンは当たり前ですが匿名のハッカー集団なので、消去してくださいと頼みたくてもどう頼んだらいいのか分かりません。
それで内務省に要請したのですが、内務省のトップも、サイバーパルチザンにどうやって頼めばいいのでしょう? 命令などできませんし、できたとしても、サイバーパルチザンの要求は「これ以上、反政府派デモ参加者を身柄拘束するな。」です。
「今日また身柄拘束を一人でもしたら、個人情報を流出させますよ。」と一週間前に予告していたのです。しかし、連日身柄拘束が行われ、とうとう今日、サイバーパルチザンが予告通りに1000人分の個人情報を流したのです。
今頃、内務省が「個人流出をやめてください。」と頼んでみて、サイバーパルチザンが何と答えるでしょう?
「だったらこれ以上身柄拘束や逮捕はやめろ。」・・・でしょうか?
それとも内務省も頭脳を使って、ハッカー集団の居所を突き止めて逮捕するのでしょうか?
このサイバーパルチザンを名乗るハッカー集団は、いかにもベラルーシ国内にいるベラルーシ人のような印象ですが、実際にはアメリカに住むベラルーシ人集団らしいという未確認情報が流れています。
それが本当だとしたらベラルーシ内務省は、サイバーパルチザンを逮捕することは難しいでしょう。
一応内務省は、サイバーパルチザンの正体を突き止め、厳しく罰すると言っていますが、国外にいるハッカー集団をどうすることもできないらしいというのは、とっくに知られています。
8月9日から3日間、ベラルーシ国内でインターネットが遮断されたのは、外国からのサイバー攻撃であり、ベラルーシ政府が止めたのではない、とにかく外国人が悪いと表明し、その正体を突き止めたこともなく、いまだに不明のままだからです。3日の間、自分たちは外国からのハッカー攻撃を回避、ネット環境改善をすることもできませんでした。
ちなみにベラルーシ内務省の公式サイトはハッカー攻撃を受けてからいまだに閲覧できない状態です。もう何日放置されたままなのでしょう。全く復旧されていません。
上記の200人の個人情報をばらされ、なおかつそれを何とか消去してほしいと内務省に訴えている200人の治安部隊員ですが、消去ができず個人情報が垂れ流し状態のままになるのなら、もう退職すると言っているのです。
こうして治安部隊をやめる人がどんどん出てきたら、身柄拘束も思うようにできなくなります。
最近治安部隊の人数が多すぎてこれはおかしいので、ロシアから助っ人がベラルーシへ来ているという情報もあります。
この人たちに給料を払っているのはベラルーシです。そしてそれはロシアから借りた借金が充てられます。こうしてロシアのお金がロシアへ戻ってゆき、ベラルーシ人は国の借金を返すためにこれから重税が課せられる可能性があります。
それがいやだというベラルーシ人は次々と国外へ出て行くでしょう。
ちなみに治安部隊員だった人が、「もういやだ、個人情報もれまくってるし。仕事やめる!」とやめたところで、どこで再就職できるのでしょう?
他のベラルーシ人は、リトアニアやウクライナ、ポーランドで人道的援助が受けられ、就職できます。
しかし元治安部隊員はこれらの外国での再就職は不可能、それ以前に出国もできないでしょう。
ロシアへ出稼ぎに行くのでしょうか? ロシアの警察なら喜んで再就職を受け入れてくれるでしょう。
こうして、ベラルーシではロシア人がベラルーシ人を取り締まるようになり、ベラルーシ人の元治安部隊はロシアで警察の手伝いをするようになるでしょう。ねじれた社会構造です。