オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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1976年のバーリーの新製品騒動の話

2022年06月05日 22時37分34秒 | メーカー・関連企業

頂き物の、デジタルデータ化された古い業界誌を眺めていたら、「コインジャーナル」の1976年6月号23ページに、奇妙な記事を見つけました。その冒頭では、米国バーリー社の子会社だった「バリージャパン」の社長が、「バーリーサービス」、「エスコ貿易」、「マックスブロス」などバーリー社製品の大手ディストリビューターと、バーリー社の新製品について会談を行った、とあります。

さらに記事を読み進むと、バリージャパンが「ブル・マーケット」という6カードビンゴ機の定価を公表し直販に乗り出すかと見られる動きに出たため、ディストリビューターたちが「輸入の総元締めが定価を公表するのは業界事情を無視している」と反発し、バリージャパンの真意を問い正すという内容でした。

この記事を見て、業界紙「ゲームマシン」が、1976年7月1日号(第51号)のフロントページに掲載されたバリージャパンに対する謝罪広告をハタと思い出しました。そこでは、ゲームマシン紙が6月1日号(第49号)に掲載した広告においてバリージャパン社のレターヘッドを無断で使用し、またその内容が、2号前(第47号)に掲載されたバリージャパン社の広告を無断で訂正したことに対して、ゲームマシンの出版元であるアミューズメント通信社の名で謝罪が表明されています。

ゲームマシン第51号に掲載された謝罪広告。

そこで、第47号を見てみると、そこにはバリージャパンの名で、6カードビンゴ機の新製品「BULL MARKET」の全面広告が掲載されていました。

ゲームマシン紙5月1日号(第47号)に掲載されたバリージャパンの広告。

一方、謝罪の素となった第49号には、第47号の広告と体裁が非常によく似た別の広告が掲載されています。

謝罪の原因となった第49号の広告。「バーリーサービス」が広告主と思われる広告が、第47号とよく似た体裁で掲載されている。

改めてこの両者を見比べると、まず、問題となった第49号の方は、第47号とほぼ同じデザインを採りながら、広告主が「バーリーサービス」であるかのようになっています

更に、第47号では「定価¥775,000.-」と記載されているところが、第49号では「定価¥775,000.- (標準小売価格¥1,295,000)」と改変されており、広告の最下段では「本紙47号で価格面で誤解される広告をしました。訂正してお詫びします。」と追記されています。

ワタシがこの紛糾を知ったのは、2019年のことでしたが、何が何だかわからず放置したまま現在に至っていました。しかし今回、コインジャーナル紙の記事を知って改めて調べ直してみて、その騒ぎの本質がなんとなく想像が付いてきたので、「たぶんこうだったんじゃないか劇場」風に述べてみようと思います。

バリージャパン:ワタシたちのペアレントカンパニーが作った「ブルマーケット」というニュープロダクツの広告を載せてクダサーイ。値段は77万5千円デース。これが原稿デース。(第47号の広告)

ディストリビューター一同:ちょ、あんさん、待っとくんなはれや。なんやねんこの77万5千円ちゅうんは。あんさん、わいらディストリビューター通さずチョクで販売始めるつもりでっか。

バーリーサービス:これじゃオペレーターがこの値段で買えるもんと思ってまうがな。それじゃワシらディストリビューターは商売にならんがな。よしゃ、ワシが訂正の広告出したれ。えーと、77万5千円は51台以上の東京渡しの値段でっせ、普通に買おう思たら129万5千円でっせ、と。これだけじゃ不安やさかい、最後にもういっちょ付け足したろか。「本紙47号で価格面で誤解される広告をしました。訂正してお詫びします。」っと。これでよっしゃ。

アミューズメント通信社:訂正広告でっか。なら、前回と同じ体裁にした方が訂正とわかり易いんやないやろか。
バーリーサービス:せやな。ほな、47号の広告の体裁にこれ載せといてんか(第49号の広告ができる)。 これで51号まで3回連続掲載で頼むで。

バリージャパン:オーノー! あなた、なんでワタシたちのレターヘッドのデザイン勝手に使いますか。しかもワタシたち訂正する気なんてナッシングね! Don't licking us! ワタシたち舐めないでクダサーイ!
アミューズメント通信社:こりゃえろうすんまへん。謝罪広告載せよりまっさかい、どうか穏便に頼んます。

アミューズメント通信社:バーリーサービスはん、うちらえろう怒られてもうたがな。
バーリーサービス:そやけど、前の体裁に合わせた方がいい言うたんはあんたはんやないか。でもまあ仕方ないさかい、デザインは変えまひょ。(第50号、51号の広告ができる。)

第50号、51号の広告。問題とされたレターヘッドが消され、値段とお詫びの文章も削除されている。

ワタシの想像がどこまで事実と符合するかはわかりません。しかし、なにかしらのてんやわんやがあって、バリージャパンとディストリビューターの間で話し合いがもたれたという事のようです。

コインジャーナル1976年6月号に掲載された、バリージャパンとディストリビューターの間で会合が持たれたという記事。

バリーサービスが提示した値段が、誰を対象とした値段なのかはわかりませんが、77万5千円で売れればそれで良いというわけではありましょう。一方で、ディストリビューターを介すると129万5千円にもなるときくと、ずいぶん乗せているんだなあという感想は抱かずにいはいられません。


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2 コメント

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bingos (caitlyn)
2022-06-07 12:02:49
「ブルマーケット」と「ニューヨーカー」はどちらもバリーが日本向けに作ったビンゴゲームでした。
「ニューヨーカー」のアートは「ウォールストリート」と同じようです。
「ニューヨーカー」は「ウォールストリート」よりも多くの機能を備えています。
「ニューヨーカー」と「ブルマーケット」は、バックグラスにまったく同じ機能とオプションがあるようです。


"Bull Market" and "New Yorker" were both bingo games made for Japan by Bally.
The art for "New Yorker" seems to be the same as "Wall Street".
"New Yorker" has more features than "Wall Street".
It looks like "New Yorker" and "Bull Market" have the exact same features and options on the backglass.
Unknown (nazox2016)
2022-06-07 22:50:14
Thank you for your interesting comments.
At that time, Japan was an important market for Bally.
But I didn't know that Bally made Bingo Pinball for the Japanese market.
Sigma had some arcades dedicated to Bingo Pinball, but I rarely saw Bingo with six cards.
This is just a possibility, but I suspect that many 6-card bingo machines were used in the underground market, except for a few small arcades.

The 6-card bingo I remember was the Ticker Tape at a bowling alley near my house in 1972 or 1973.

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