午後、吾妹は親しい翻訳者の友人のお見舞いに出かけた。
僕も、燕岳をはじめ何回か山行きを一緒にしたとても活動的な女性である。
ガンを疑われていたのだが、手術の結果は良性だった。
本当に良かった。
その後、吾妹は大学時代の友人と会う約束だったが、久しぶりだというので夕食を誘われたと電話があった。
一人ならどうにでもなると、夕方早めに走ることにした。
走り始めてみると、けっこう蒸し暑い。
どうしようかと思ったが、不忍池に着いてみれば暮れ方の池畔の雰囲気が予想以上になんともたまらない。
ユリカモメがネコか赤ん坊のように鳴き交わし、小さな蝙蝠たちが餌を求めて上空を乱舞するのを眺めながら、けっきょくまた3周半してしまった。
海のように池面を埋め尽くした蓮の葉の間に、わずかに一、二輪、花が咲き始めたのが見えたのもうれしかった。
上野公園からの帰途はそれなりにキツかったが、なんとか走りきった。
時間は93分。
焦ることはない。
徐々に距離を伸ばしていこう。
その自信だけは、生まれた。