長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『レディ・プレイヤー1』

2018-04-26 | 映画レビュー(れ)

こんなデタラメなスピルバーグ映画は初めてじゃないだろうか?冒頭『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンと『AKIRA』の金田バイクがカーチェイスを繰り広げ、その行く手に『ジュラシック・パーク』のT-REXとキングコングが立ちはだかる。何だそりゃ?

全編この調子でポップカルチャーネタの絨毯爆撃だ。
本筋に絡む重要キャラもいれば、セリフで言及されるネタ有り、そして画面の隅々にまさにイースターエッグの如く隠されたキャラも多数だ。これは舞台となるヴァーチャル空間OASISの創設者ハラデー(マーク・ライランス)が自身の生まれ育った80年代アイコンを盛り込んだからだ。目も眩まんばかりの勢いは中盤スタンリー・キューブリック監督
『シャイニング』の狂気的とも言える徹底再現でピークに達し、思わず「凄い」と息が盛れた。3D-IMAXで鑑賞したのだが、まるで映画の世界に入り込んだような錯覚である。
ネタの1つ1つが一丁噛みで終わらない“わかっている”仕事っぷりであり、ゲームファンも映画ファンも思わず頬が緩んでしまう。そのクライマックスを飾るのがメカゴジラVSガンダムというまさかの2大日本アイコン。「オレはガンダムで行く!」の名台詞についつい「オレもガンダムで行くよ!!」と応えてしまうほどだ(しかもRX-78ガンダムなのにポージングはなぜかZZガンダム)。そこまでジョン・ウィリアムズ調のスコアを披露していたアラン・シルヴェストリもここは伊福部サウンドをフォローだ。

 80’sリバイバルブームがさけばれてしばらく経つが、決定打となったNetflixの『ストレンジャー・シングス』はじめブームの根底は80年代スピルバーグ映画へのオマージュである。当のスピルバーグの70年代末~80年代はTV、映画の大量生産期であり、多くのポップカルチャーアイコンを生み出した時代だ。劇中の創始者ハラデーはまさにスピルバーグそのものであり、そういう意味でも本作はリバイバルブームの総決算とも言えるだろう(現スピルバーグにとっての演技アイコンであるマーク・ライランスをキャスティングした理由もおそらくそこではないだろうか)。

 そんな時代を楽しんだ側ではないスピルバーグの一歩引いた視点は物語の舞台設定にも見受けられる。2045年の未来は経済破綻により国民の多くが貧困状態にある。ヤヌス・カミンスキーによるカメラはSFディストピア映画『マイノリティ・リポート』と同様、曇天のようにくすんだ銀残しだ。御年71歳、好き放題に遊んでみても未来を楽観視できない姿勢は同時期に『ペンタゴン・ペーパーズ』を撮り上げる創作衝動を持った御大ならではである。


『レディ・プレイヤー1』18・米
監督 スティーブン・スピルバーグ
出演 タイ・シェリダン、オリヴィア・クック、ベン・メンデルソーン、マーク・ライランス、サイモン・ペッグ
 

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