第14回公演『元号狂騒曲』、無事に終了いたしました。
多くのお客様にご来場頂きました。誠にありがとうございました。
今回は6年ぶりの新作長編、さらにウチには珍しくコメディというのもあり、約2か月間の稽古期間を設けてじっくりタップリ作っていきました。
恒例、作品解説です。
【恋おちとコメディ】
コメディ作品とは距離を取り続けてきた劇団恋におちたシェイクスピア(以下、恋おち)。作者・長内のユーモアセンスがちょっとシニカル過ぎるということ、そして稽古場で生まれるギャグの鮮度を保つことの難しさが理由ではあったが、今回は稽古期間冒頭から途切れる事なくネタを投入し、鮮度を保つ事に成功。日常では決してお目にかかりたくないセクハラ、パワハラ上司達を徹底的にカリカチュアして役を作り上げていった。コメディをやるために必要なのは技術的な成熟と人間への洞察=ヒューマニズムなのだなと再確認した次第。
【原案『元号狂騒曲』はどんなの?】
漢学者・東野役の飯田慎治が2010年頃に執筆した短編。オフシーズン稽古の題材にと長内が再読した事で、今回の公演に繋がった。
オリジナル版は新元号発表の準備に追われる官僚達の数時間を描いた三谷幸喜風シチェーションコメディで、本公演『元号狂騒曲』とは一部の登場人物の名前が共通している。より時代性のあるリライトをと思い、全く別物のブラックコメディへと書き上げられた。
【キャラクターと配役について】
主人公・大友絵夢はオリジナル版でピュアな新米官僚として登場。本作では入省6年目に変わっており、セクハラやパワハラを断罪していく。演じた原田美穂はこれまでも短編や朗読公演に出演してきたが、本公演は初。主に舞台美術など裏方として活動してきた。
佐藤課長は原案では男性であり、長内版の初稿でも絵夢と不倫関係にあったが、湯澤千佳の参入によって女性へと変更された。湯澤には英女優オリヴィア・コールマンの演技を参考にするようにと『フリーバッグ』や『女王陛下のお気に入り』が宿題として渡されている。所属劇団であるtea for twoでは穏やかな役柄を演じる事が多いため、長内は全く別のキャスティングを狙った。ちなみに劇中で妹が使う紙芝居は湯澤が構成、作成している。
漢学者・東野も原案では女性だったが、男性へと変更された。
飯田慎治はこれまで無職や犯罪者など、どういうワケか年収200万以上の役を演じて来なかったが本作でその慣例(?)が崩された事になる。
新元号選定特別大臣(そんな役職はない)籾田は完全オリジナルキャラクター。某、元・防衛大臣をモデルに執筆されたが、稽古期間中から某・元女優議員の要素も加わり、独自色が強くなった。強烈な印象を残すキャラクターだが、登場時間はわずか10分程度に過ぎない。演じる金子香里は『いつまでも同級生?』に続き着物芝居となった。
「妹」と「お兄ちゃん」もオリジナルキャラクターである。彼らが劇中で事件、事象を解説する構成はリーマンショックを描いたアダム・マッケイ監督の社会派コメディ『マネー・ショート』が参考にされている。この映画では専門用語が出てくると泡風呂に入ったマーゴット・ロビー(本人役)が解説するなど、ユニークな構成が取られていた。
また妹についてはTwitterのbotアカウント「ネトウヨ兄のデマを正す妹bot」から考案されている。
妹役の冷水優果は声優として活躍。大学1年生の時に恋おちの応援ブログを書いていた事もある(今は閉鎖されている)。朗読公演『風のたより』に続いての出演となった。
【参考作品】
執筆にあたって参考にしたのはロバート・アルトマン監督『マッシュ』や前述のアダム・マッケイ監督『マネー・ショート』『バイス』、アーマンド・イアヌッチ監督『スターリンの葬送狂騒曲』、スーザン・ストローマン監督『プロデューサーズ』など、選曲にあたってはクエンティン・タランティーノ監督作品を参考にした。エリック・クラプトンの『Layla』については…スミマセン、ただのダジャレです。
【政治的じゃない生き方なんてない】
本作は政治風刺コメディであり、数々の時事ネタが投入されているが、それらはTwitterのような表面的なものであり、テーマはラストシーンで妹の口から語られるように「対話」である。どういうワケか政治的な話がタブー扱いされる今日において、僕達はもっと自分の事としてカジュアル(いや、セクシーに?)に語り合うべきではないのか?本作がその入り口となれば嬉しい。
(なので劇中で触れた時事ネタについての解説はここではしません)
【続編『五輪狂騒曲』】
当日パンフレットでも触れた続編『五輪狂騒曲』。稽古中も与太話として「籾田大臣が再登場」「IOCから連絡が来るシーンのBGMはバッハ」などアイデアが飛び交った。実現させるのなら来年7月までがタイムリミットとなるだろう(本作『元号狂騒曲』はいささかタイミングを逸しており作品構造上、再演も効かない)。本作とは全く違うストーリーテリングを構想中。実現はあるのか…。
こんな所だろうか。
もし「あのシーンはどういう意味なの?」「稽古中の役者さんはどんな感じだったの?」など質問があればお寄せ下さい。
次回公演は12/7を予定しています。
近日中に詳細を発表します。
↑2日目終了後に。