リッスン・トゥ・ハー

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救世主は水ガラス

2011-04-07 | リッスン・トゥ・ハー
「救ってくれた!救ってくれた!」

「なんですか?」

「救ってくれたんだ!」

「なにがですか」

「水ガラス!」

「水ガラス?」

「そう、水ガラスが俺を救ってくれた!」

「なにから救ってくれたんですか?」

「あれは俺が映画館にいる時だった」

「映画館に?」

「俺は映画を見ていた」

「はい」

「映画は3時間半あった」

「超大作ですね」

「完全に飽きていた」

「駄作でしたか」

「暇を持て余した俺は手遊びをしていた」

「そうとうな駄作だったんですね」

「手遊びはだんだんエスカレートし」

「手遊びのエスカレートってどういうことですか?」

「手遊びが手遊びでなくなっていくことだよ」

「手遊びでなくなったらどうなるんですか?」

「足遊び、胸遊び、肩遊び」

「どんどん広がっていくんですね」

「やがては全身遊び」

「全身遊び」

「鬼を決めて追いかけられたり、鬼よりも高い位置にいなければならないルールを作ったり」

「それただの遊びです」

「会場の全員が全身遊びに興じていたよ」

「学級崩壊なみですね」

「そのときだ!」

「はい」

「支配人が怒鳴り込んできた」

「そりゃ怒るでしょう」

「ここは遊戯室じゃない!」

「そうです」

「俺は水ガラスを支配人に放ったさ」

「ひどい!」

「支配人は何とも言えぬ顔をしていたよ」

「複雑でしょうね」

「俺たちは高鬼を続けた」

「高鬼言うとる!」

「気づいたら映画は終わっていた」

「興じましたね」

「俺たちは大切なものを失わずにすんだ」

「つまり、救われた、と?」

「ザッツライト!」


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