リッスン・トゥ・ハー

春子の日記はこちら

微笑む声が僕のものじゃなくなる瞬間

2007-08-23 | 東京半熟日記
(ほんのちょっち山口編5)

海を見るわけでもなく、猫は寝転ぶ優雅を身にまとって。

木陰は猫のものだから、わたしはその猫の狭い額をなでてあげて、譲ってくれるかな、ってつぶやいたら、にああ、と怒ったような鳴き声で、わたしの手を舐めた。塩辛いわたしの手を舐めた、汗が滲む手の平舐めた。
もう一度にああと鳴いて、猫は立ち上がって言った、
「ようこそ島へ、案内しようか?」
わたしは呆然としてゆっくり首を振り、何にもいえないで首を振り。
「遠慮しないで、さあ肉球を、ぎゅうと握り締めてごらん」
「何が起こるの?」
「にぎりしめてみればわかるだろう」
「怖い」
「何も怖がることなどないさ、さあ」
と近づいてくる男爵、鼻に強く漂う粒子をとらえて
「猫くさっ!」
「何を言う?」
「猫嫌いじゃ」
「ああ、神よ」

猫は絶望して海に飛び込んでララバイ。
ララバイ。

島は狭く、そのだいたい3割の土地を猫が占領していた。
占領軍はずいぶんのんびりしていた。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
チェシャ猫か (三四郎)
2007-08-24 23:39:30
これはチェシャ猫の遠縁ですね。島を案内してくれるという申し出に加えて、肉球まで握らせてもらえるなんてうらやましい。ああもったいない。
返信する
Unknown (なゆら)
2007-08-25 05:35:54
猫好きですね?

猫に対する免疫がないもので思わず逃げてしまいました。

たくさんの猫が寝転んでいました。
とてものんびりとしていてうらやましいわあ。

でも猫も猫なりにいろいろあるんでしょうね。
返信する

コメントを投稿