夜空にたしかにあった、その青い城をぼくは見つけた。昨日までそんな城があったのか。確かにあるはずである、ぼくの町には城があって、それはあくまでもレプリカ、復元されたものであったのだが。夜に城を見て日本酒を飲む、なんて粋なことをしないし、昼でも町を歩いていて城を見る、こともないような気がする。城は現代においては低くなってしまい、というよりも周りの建物が伸びて埋もれてしまい人々の注意を引くものではない。しかし現に、ぼくの目の前に城は凛として、青々と燃えるように輝いている。ぼくはそれを誰かに確認したくて、携帯電話を取り出す。着信履歴を見て誰に伝えれば良いのか考える。しばらくそうやっていると風が吹いてきて、体は冷たくなってくる。そのうち、履歴を全部見たけれど、誰に伝えていいのか分からない。誰もいないことに気づく。青い城であることを確認すると言う行為も、なんとなくばかばかしい気もする。青かろうが、青くなかろうが、ほとんどの人々にとってどうでもいいことだ。ぼくは携帯電話をジーンズのポケットに入れて、そのふくらみをなぞりながら、城を見上げる。やはり城は青く輝いている。
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