navikuma のブログ 陽炎のようにゆらめく景色のなかを走行中です。

ユーラシア大陸の端っこからのたわごとです。

”フェアープレイですか?”憂いごとです。

2008年09月22日 | 日記
ちょうどいまから3年前, ウクライナからの帰路でポーランド・ドイツ国境を通過してさらにベルリンへ向かう途上のアウトバーンでのことです。*(車)**(ダッシュ)*

白樺の林の中を延々と貫くアウトバーンから開けた時右路肩にけっこう大きないままで見たこともない看板が現れました。
青地に大きな白の大文字で唯“FAIR PLAY”とだけ書かれていました。
その区間は道路標識さえ稀にしか現れないような閑散とした耕地と雑木林風景の続くそれほど交通量も多くない所だったので“あれっ”と思いました。しかも地元の“ドイツ語”ではなく“英語”表記でした。
なぜアウトバーンで “フェアプレイ”??
しかもドイツ語ではなく英語表記にしてまで??*(グッド)**(はてな)**(驚き)*

でもそれを見た瞬間に私にはその文字が言わんとすることが良くわかりました。
元々はスポーツ用語ですがほかの場面でも良く使うことがあります。
それからベルリン近郊まで行く間に3回ほどそれと同じ看板を見かけました。
この風変わりな看板は他ではまったく見たことがなかったので今でも良く記憶に残っています。

話は変わって先月,アナトリアへの往き帰りにE-ルートと呼ばれる各国のアウトバーン上を何千KMも走ってきました。同時にその何千KMの距離を走りながら幾度も遭遇したある体験と“フェアプレイ”の意味をずっと考えていました。

いわゆる“アウトバーンのような高速道路を走る上での心がけまたはマナーについて。”といったことです。
特にドイツのアウトバーンを走っていれば必然的に起き誰でもそれから避けようがない場面でどうすべきかということです。
強いて言えばアウトバーンでの強者とも言える常々高速度で走ることが多い乗用車や高性能SUVなどを運転している人たちに対してです。

端的に言うと“無理がなく安全な追い越し・追い抜き / 追い越され・追い抜かれ方の作法とその実践”です。

核心へ入る前にまずアナトリアへの往き帰りに通過したそれぞれの土地のアウトバーンでの現状を言い表すと以下のようになります。

オランダ:マナーはまあまあである。制限速度が100~120km/hと低いので全体的に流れがゆっくりしている。傲慢・横暴な輩に時々出くわす。一応規律らしきものを感じられる。

ドイツ:マナーは他国よりも良いが走っている車の速度差が大きすぎて危険。ただし理性で抑えきれていない部分が運転者のマナーの端々に荒々しくほとばしり出ている。今のところ生々しくも限度ぎりぎりのマナーでなんとか形になっているがストレスが大きい。

オーストリア:マナーはおしなべて良く走りやすいが時々とんでもないばかがいるので注意が必要。

スロベニア:マナーはぎりぎり第及だが少なくない外国車の振る舞い(もちろん悪い)が目につく。

クロアチア:絶対的な交通量が少ないので走りやすいが少数の成金車乗りたちの無謀運転が見られる。

セルビア:血の気が多いようでマナーは良くない。成金車乗りや崩れ成金車乗りのマナーが悪い。
加えて平民車乗りや真性平民車乗りでもマナーが悪いのがいる。絶対的な交通量が少ない点で救われている。

ブルガリア:マナーはまあまあ。ただし首都ソフィアとその近郊のアウトバーンでは成金車乗りのマナーの悪さは最低かつ深刻である。外国旅行者へ与える悪いイメージも深刻。

トルコ:イスタンブールとその周辺とそのほかの地域では状況がまったく異なる。 
まずイスタンブールとその周辺ではマナーという尺度は無意味。
激烈かつ混沌としておりサバイバルあるのみ。
ルールやマナーは意味を為さないので自分の身を護るためには野性的な勘と反射神経での運動能力を駆使する必要あり。これができないとこの地域で運転をするのは危険である。  

そのほかの地域では交通量が少ないので走りやすいがここもルールやマナーよりも現実・現況を反映した走りが必要。
アウトバーンの路上には馬車・牛車・放牧の羊・ロバ・牛・馬をはじめ野良犬や亀さんと多様。
さらにアウトバーン横断中あるいは散歩中の土地の人・逆走中の積み荷満載トラックやトラクタそして炸裂したタイヤ片・落下物も日常茶飯事。
時々ダンプカーや高速バスでも150KM/Hぐらいで疾走している者がいる。

もう一度ドイツのアウトバーでの“フェアプレイ”に戻ります。
マナーは良いが速度差が大きすぎて危険であると述べましたが,そこのところを詳しく説明します。

ドイツのアウトバーンはたいてい2車線・3車線・もしくはそれ以上の車線数で構成されている。
速度制限がある区間(他車線との合流あるいは車線数減少区間・都市-住宅地近郊区間・工事区間・登板‐下降区間・渡橋区間・雨天や氷結路時など)と有名な速度無制限の区間が設けられている。
制限速度は低い方から50km/h・60km/h・80km/h・100km/h・120km/hで速度制限が無い区間でも推奨速度として一応130km/hの標識がある。
貨物車両やトレーラー車両のみ対象の速度制限区間もある。
走行している車両は貨物トラック及びトレーラートラック / 乗用車及びSUVと呼ばれる車両 / それらが牽引しているキャラバンかモーターホーム(キャンピングカー)‐旅客バス - 二輪車 などである。

ドイツの地形は北部から北東部は平坦なところが多いが中部から南部にかけては高低差が連続する丘陵地帯や森林・山岳部が広がる変化ある地形である。そこをなぞる様にアウトバーンが四通八達している。
夏以外の季節では雨降りや濃霧の天候の日が多い。特に南部は積雪がある。
交通量は通常朝夕に多くなり交通渋滞が頻繁に起きるほど。
特にゲルマン民族の大移動となる夏のホリディシーズンは南下するルート上で絶望的な渋滞が起きる。日本のゴールデンウイークやお盆の渋滞のようなもの。

ここで取り上げる問題は比較的すいているアウトバーンでは起きないが交通量が多くなってくるにしたがって発生し深刻さを増す傾向がある。
一方渋滞かそれに近い混雑状態では起きない。

では典型的な一例を上げてみます。
ややゆるやかな登り勾配が続く3車線道路でいちばん右側の第一車線である走行車線は大型貨物トレーラ-がつながって走っている。(第1車線走行組と名づける)
その隣の第2車線の追い越し車線には乗用車や小型貨物車が110km/hぐらいで走っている。(第2車線走行組と名づける)
いちばん左側第3車線の追い越し車線へ2台の乗用車が追い越しのために130km/hぐらいで相次いで車線変更して追い越し始めた。
その後方から200~220km/hのスピードで追い越し車線を疾走してきたこれも普通の乗用車3台が急接近してくる。(第3車線専門走行組と名づける)
当然,第3車線はすでに追い越し中の車がいるために急制動をしつつその車のすぐ後ろ(数メートル)に接近しつつ数珠繋ぎ状態でしばらく走ることになる。
そこへ別の普通の乗用車がこれまた230km/h以上のスピードで急接近し急制動しつつさらにその後尾へくっついて走り始める。

先頭の乗用車が追い越しを終えて第2車線へ進路変更しようとサインをだして車線変更し始めたちょうどその時,上り坂でスピードが上がらない前の大型貨物トレーラーを追い越すためにすぐ後を走っていた大型貨物トレーラーの一台が急に第2車線の前方に飛び出してくる。その大型貨物トレーラーのスピードは70km/hぐらいである。
第3車線の先頭を走っている乗用車はいま第2車線へ戻るとその大型貨物トレーラーの後を走ることになって減速せざるをえず今までの追い越し努力が元も子もなくなってしまうのでそのままもう少し前方の地点まで走り続けることになる。さらにほかの大型貨物トレーラー2台が我らもと第2車線へ飛び出してくる。

その第2車線で起きた変化に対応するため第2車線を追い越し中の大型貨物トレーラーに前を塞がれてスピードダウン余儀なくされそうな車が2台(110km/hぐらいで走行中)そしてさらにもう1台も続いてすでに数珠繋ぎになっている第3車線へ飛び出してくる。
その第3車線後方にはやはり200~220km/hぐらいで急接近そして急制動しつつある乗用車とSUVが3台せまってきている。
そのうちの2台はずる賢しこくも減速しながら一度第2車線へ入って大型貨物トレーラーの直後まで走っていきそれから強引に数珠繋ぎ状態の第3車線へ割り込む輩である。
第1車線と第2車線を追い越し中の大型貨物トレーラーらと平行してこの第3車線を数珠繋ぎになって130~150km/hぐらいのスピードで追い越し中の10数台の車を運転している人たち(自分も入ることがままある)はそれぞれにストレスが高揚していくことになる。

時間にすれば約60秒長くても90秒ぐらいの出来事なのだが特に先を急ぐらしい第3車線専門走行組である乗用車やSUVの面々はストレス=欲求不満によるイライラ感は高くなる一方である。やっと前方がすくとそれこそ全力疾走モードになって再加速し高速度(200~230km/h)で走行しつつまたその先に待ち構える次の数珠繋ぎ車列への性急な突入をくり返すのである。

持論であるが彼らの常用走行スピードが高ければ高いほど急制動+数珠繋ぎ車列への突入のくり返しはストレス=欲求不満によるイライラ感をさらに増幅することになる。
せっかく今まで速く走って短縮した(と確信している)時間がそこで延びてしまうので一刻も早く挽回せねばと苛立つのだろう。
このイライラ感がアウトバーンでのマナーとフェアプレイに大きく影響する。
マナー違反とアン・フェアープレイの総出演になる。
たいていはすぐ前の車へ接触しそうなほど車間距離を詰める挙動を執拗にくり返す。
と同時に前の車にパッシングライトを浴びせつづける。
左右に車体移動を繰り返しすぐ後から前の車にゆさぶりをかけ続ける。
前のバックミラーに見えるように威嚇の侮蔑のボディサインを投げつける。
少しでもすき間があれば第2車線へ入って数珠繋ぎの車列の右側から追い越そうとする。

推奨速度域の130km/hプラス前後で走行している乗用車や小型貨物車たち(第2車線走行組)にとってはこれらの嘆かわしい行為を常套手段とすることが多い第3車線専門走行組は攻撃的でずる賢く横暴にさえ感じる。
彼らといっしょに走るのは正直怖い。特に大きなSUVに後から煽られると生きた心地がしない。
こんな状態から事故へ至るまではほんの数歩先にある。*(涙)**(最低)**(最低)**(青ざめ)*

実際数年前ドイツの有名な○×自動車会社のテストドライバーが上述のような運転をした結果,前を走っていた女性が運転する車が運転を誤り120km/h以上の速度で中央分離帯に乗り上げ横転同乗していた幼児とともに事故死するという痛ましい事故が起きている。

何よりも大きすぎる相対的なスピード差がその原因だと思う。
必要充分に自己抑制できないほどのスピード差が。その結果マナーの喪失にそしてアン・フェアプレイにつながるのだと思う。
誰が強要したのではないその大きすぎるスピード差は彼ら自身の意思によってもたらされるものであり第2車線走行組に根本的な責任は無いと思う。
彼らはたいてい80~100km/hあるいはそれ以上のスピード差で加速・急減速をくり返しつつアウトバーンを走っているのだ。
彼らの常用走行スピードはこの数年ますます上昇してきており現状で180~230km/hぐらいである。数は少なくなるがさらにその上のスピード域(~250km/h)で疾走する輩もいる。
なぜそうだと判るかと言われれば折々にそういう高性能車に乗る機会があるからでほぼ実態は把握できているつもりである。

自分は高性能で安全な車を運転しているのだからいくらハイスピードで運転していても安全なのだという思い違い,いや思い上がりがあるのでは。
アウトバーンではほかの車達もたくさん走っているのだぞ!
そういう大事で基本的な認識が希薄か無いのだろうか?
ここでも自分本位の人たちが多いのである。
もちろん例外もいないではないが…
そして憂うべきはアウトバーンではその総量(そういう走りができる車に乗り実際にそのように走行する第3車線専門走行組)がさらに増加中である。

疾走する傲慢でマナーを守ろうとせずアン・フェアープレイをする第3車線専門走行組は言わばアウトバーン上の高所得者(車)であり第2車線走行組と第1車線走行組は中・低所得者(車)や貧困層であり社会的弱者(車)ともいえる。

運転しているのはごくありふれた普通の良市民であるという声もどこからか聞こえてくるが,第3車線専門走行組になれるような高性能で高価格の車を所有できアウトバーンで運転を始めるとマナーもフェアプレイもどこかへ消し飛んでしまうのだろうか。
それとも車の性能と格が運転する人を凌駕しているので並みの人格ではその車に侮られ高性能に翻弄されてしまうのだろうか。
分相応でなく格負けなのか?そうと思わざるを得ないような輩が多すぎる。

思うに第3車線専門走行組であっても車が高性能ではなくかつ速度差が小さいと前述のストレスが少なくなるはずだ。
ひと昔前(15年以上前)はまだそういう状況だったのだが…

ここアウトバーン上でも憂うべき社会的現況が反映されているのかもしれない。
こういう状況が一昔前と較べてもさらに悪くこそなれ良くなる兆候が見えないのはとても憂うべきことだ。

補足であるが、それを可能にしたのが自動車生産技術の目覚しい向上でありとくに欧州市場を席巻中の高性能ディーゼルエンジン車の台頭だと想う。
ビジネスモデルである乗用車やSUVで言えば,地元ME社-BM社-AU社-VW社-PO社やSA社-VO社-RE社-AR社-PE社-FO社-RE・R社などの車達だ。まさに激戦状態である。わが日本車たちもその激戦に参加しつつある。

おしなべて加速抜群で最高速度実力値もめっぽう高くしかもディ-ゼル燃料で走り燃費が良い上に燃料代がガソリン車と較べて割安であると。
金さえ出せば誰でも買え所有できるのである。
このアウトバーンでのフェアプレイの問題に限らず,今の世相では社会的格差の広がりとともに技術の進歩と経済的発展と伸張がもたらすこのようなネガティブな側面がさらにエスカレーションするのではと危惧されます。
ドイツ以外のアウトバーンを走ってきて同じような兆候がいたるところで見られたのでつい重いため息が出ます。

地球温暖化に伴う環境異変ほどではないがそれは身近な憂いごとです。
*(!?)*