武の道へのこころざし

大道塾の横須賀・湘南支部の責任者が、日々の活動に関する出来事や想いを綴っていきます。

子供の心を殺してはいけない

2018年09月08日 | 武道の心


「武道」を学ぶことで、護身の為の術(すべ)を身に着け、日々の稽古で心身を継続的に鍛えることで、精神修養になります。もう少し柔らかく表現すると、身を守る技を身に着け、稽古を続ける中で体力や精神力が向上し、そこに、子供たちに対する教育的な側面が存在し、社会人に対しては、生涯武道としての学びの場となり、スポーツとしてのやりがいがあり、体力向上や健康増進、大切な仲間づくりなどのより良い側面が備わっています。

元々のそうした武道を学ぶ上での目的や利点を見失ってしまう原因に、武道の過度な競技化があります。他のスポーツと同じように、競技で競い合い、勝ち負けを決めることに終始する練習体系に流されてしまうことで、武道本来の良さが薄れて、いったい何のために武道を学んでいるのか、また指導者やその親御さんたちは、何のために武道を学ばせているのか、という視点が大きく欠如してしまう危険性をはらんでいます。

私が指導する支部内の大人の稽古生の大半は、”次の大会のために頑張る” という方はかなり少数派で、日々の稽古を継続する中で、自分の技や心を磨くことを心がけておられると思います。そのため、多くの稽古生がいる中で、大会にはあまり出場されない方や、元々、大会出場を念頭に置いておられない方も多くおられますが、ある意味でそうした方々が大半であることが我が道場の強みでもあります。逆に時々大会に出場したり、競技に積極的に取り組んでいる人もいて、そうした稽古生がいることで、共に稽古をする方々の実際の実力のバロメーターにもなっており、またそうした方々が大会で活躍されることが、稽古生の皆さんの励みにもなっています。



子供のジュニアクラスでも、多くの稽古生は日常の稽古を継続する中で、定期的に審査会を受験することを目標を定めて、実力の維持と向上に努めています。そんな中でもジュニアクラスの一部の稽古生は選手クラスに所属して、定期的に大会に出場して実力の向上に努める努力を継続しています。

問題は、他の支部や他の多くの武道団体が、競技にあまりに重点を置きすぎて、武道の本質を見失っているのではないかと思われるところです。

競技は、お互いに技を競い合い、実力を測るための一つのバロメーターになるものであり、競い合う楽しさを得られたり、明確な目標を持てるなど、いい点もたくさんありますが、本来は ”武道の技を競い合う” という事は、相手を直接的に攻撃しあう事であり、方向性を一歩間違えてしまえば、悪い人間を育てることに繋がりかねない恐れがあるということです。また、どのようなスポーツにしろ、子供の健全な育成という観点から考えると、健康を害するほどの過度な負担を子供に強いることは、正しい方向性であるとは言えません。

しかし、道場に所属する中学生や高校生が、学校の部活動で、骨折や靱帯損傷など、大きな怪我をする子が実に多いのがとても気になります。一方で、空手のようにとても激しく見える武道であっても、私の指導する道場内では、稽古中に骨折などの大きなけがをする小中学生はほとんどいません。

逆に学校の部活動で怪我をする子が多く、その時はしばらく道場を休会することになります。また部活動で痛めた体をかばいながらも、できる範囲で稽古に参加している中高生の子供たちを見ていると、実に健気であり、感心するばかりです。決まって私が口にするのは、「怪我に注意ようね」という言葉ばかり。





ところで、9月初旬に大道塾の大会があり、横須賀湘南支部から大人の稽古生を含め、13人の稽古生が大会に出場しました。


今大会の主催者側の意向で、小中学生はすべて男女混合での、大きなくくりのトーナメントとなりました。

女子にとって、格闘競技で男子と同じ土俵に上がるのは厳しいはずですが、皆一応に健闘を見せてくれました。

大会には勝敗がつきもので、多くの関係者の方々は、誰が勝ったか、どの支部の稽古生が勝ったのか、何人が入賞したのかなど、その勝敗にばかり目が向きがちですが、大切なのはその勝負に臨む選手たちの姿勢です。私自身も若い頃は勝敗にこだわる一競技者でもあり、自分の成績と、自分が指導する稽古生が勝つか負けるかばかりに目が向いていましたが、長年の指導を通して、今はかなり視点が変わってきており、大会に出場している選手や他支部の方々の様子、審判員などの役員の方々や運営者側の様子など、その中身をかなり落ち着いて見られるようになりました。

また出場する選手に対しては、その結果は全体の中での一つの側面であり、その子が大会出場するまでの稽古の時の心がけ、大会に臨むその意気込み、前回の大会出場時からの変化、試合に勝った時や負けた時の様子、そして大会後の道場での様子などをしっかりと見守ってあげる必要性があります。

そうした全体のサイクルを通して、成長の一助になるような工夫を重ねているのですが、大会出場する子供たちのことを考える時、周りでサポートする大人の方々に、一番求めたいことは、


  「子供の心を殺してはいけない」


という事です。



競技に勝つ子でも負ける子でも、心が死んでしまうようになってはいけません。

指導者や保護者の方々にとっては 「そんなの当たり前だ!」 と思われそうですが、親や指導者にとつて無意識的にでも、”子供の心が死んでしまうのではないか” と、私自身の目で見て、心配させられる様子が多く伺えるのも事実です。

簡単な表現を使えば、「燃え尽き症候群」しかり、「もうだめだ、、」という、諦めの気持ちを持ってしまう事や、元々のその子の性格が格闘性の強い競技に向いていなかったり、向いているかどうかも分からずに、意味も分からず蹴りやパンチを繰り出して、激しい攻防に身を費やすことで、気持ちがすさんでいくようになることを危惧しています。

また、こうした競技にたまたま素質があったり、実はそれほど好きではなくても、勝って賞を取ることで、自分の好きなこと、自分のやるべきことだと錯覚して、周りの応援もあって辞めるにやめられずに、何となく続けていくことで、他のスポーツや習い事など、自分の可能性の範囲を狭めてしまうことも危惧されます。

一方で、こうした格闘競技が好きで、素質もある人であったとしても、いつも試合に勝って周りからも盛大に応援をされていく中で、人としての本来のあり方を忘れ去ってしまう危険性も考えられます。


自分の実力を過信しすぎて、自分が偉い人間になったように錯覚することで ”天狗” になってしまえば、どの世界でも自分が評価されるものだと勘違いしてしまうかもしれず、将来、別の世界に足を踏み出すことができず、自分の力を評価してもらえる小さな世界で、裸の王様になってしまうかもしれません。

また、大会でそうした武道の ”技を駆使する” ということは、ある意味で人を痛めつけることにもなりますが、そうした競技性を何も考えずに継続していく中で、人の痛みに鈍感になりすぎると、相手に対する配慮がなくなり、人の気持ちを自分に置き換えて考える力が弱くなってしまいます。人の気持ちがわからないものが、人の世の中で役に立つとは決して思えません。

勝負に勝ったことで相手を見下したり、有頂天になって喜ぶよりも、負けた相手への配慮があったり、負けた仲間へ思いやりを持つことができているか。試合に負けることでクヨクヨし、もう人のことなんでどうでもいいやとばかり、仲間の応援一つできないようでは、皆で一緒に頑張って稽古をして、皆で大会に参加した意義が薄れるばかりで、チームの皆の心もばらばらになってしまいます。


勝負は、


  「勝って奢らず、負けて悔やまず」


と言われます。



勝つには勝ち方があり、勝った時の心構えがあります。

また、負けた時にはその負け方があり、負けた時の心構えがあるというものです。

そこをどう考えているのかが、武道家であるのか、ただの野蛮な格闘家、もしくは偏ったスポーツ偏重主義に陥った競技者や利己主義的な人間になるかの瀬戸際です。


  「心を殺す」


というのは、少々恐ろし気な表現ですが、、、


大人である我々は、こうした競技を通して、決して ”子供の心を殺してはいけない” と今大会を見ていて改めて深く考えさせられました。



手前味噌ですが、我が支部の選手たちは、一般もジュニアも含めて、皆一様にいい戦いができていたと思います。

何よりも心が生きていました。

そういう意味で、正々堂々と精いっぱい戦った選手のみなに感謝です。



少々悪い表現を使っていますが、他の支部でも良き指導者や、とてもすがすがしい綺麗な心で大会に臨んでいる、目標となるような選手もいるものです。高みを求め、謙虚な姿勢で高い向上心を持って頑張っていきましょう。







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2018年秋季 関東地区交流試合

2018年09月07日 | 大会記録


今年の秋は世界大会が開催される関係で、全国大会は開催されません。そうした中で、秋の予選会は交流試合に置き換わり、開催されました。

支部からは一般部、シニア、ジュニアの小中学生の合計13名が大会に出場しました。




ジュニア小学生の部には、初出場の小学5年生が3名と、小学六年生の女子が1名が出場。

初出場ながら、皆一様にしっかりとした頑張りを見せてくれていました。

他の支部は、5歳くらいからでも大会へどんどん出場してくる中で、大会へ出場する年齢が遅い横須賀湘南支部の稽古生は、初出場の時はみな、とても厳しい負け方をしまうことが多いのですが、比較的実力の合う子が多かった今大会。みなかなり善戦といった様子でした。それでも小学生の5,6年生の部に出場した初出場の小学5年生にとっては、なかなか簡単に勝つことはむつかしいものです。

横須賀湘南支部の選手たちが大会へ初めて出場するのが遅くなるのは、私の指導方針によるものです。


他の支部では、幼稚園児や礼法も何もわからない入門して間もない子供でも、”経験を積ませる” とばかりに大会にどんどん出場させている支部も多くあります。大会では4,5歳の幼い子供たちや小学低学年の子供でも、相手に激しくパンチキックを繰り出して、中にはとてもいい動きを見せている子たちもいます。しかし私が指導するクラスでは、たとえ十分な素質があったとしても、園児や小学校の低学年の子供たちには組手は一切させず、まだしばらくは基礎練習を繰り返す稽古を続けることになります。まずは挨拶。続いて礼儀作法や稽古における体と心の姿勢作り。そして技の基礎を身に着ける稽古の中で、楽しみと協調性を持ち、ともに稽古を続ける仲間を大切にする心を弥位なってもらいます。入門初期の頃のそうした継続的で地道な稽古が、人づくりという観点からとても大切だと考えているからです。



さて、話は中学生の試合の様子に移ります。


中学生のクラスは、全体で12人出場したトーナメントの中で、残念ながらベスト4に残ったのは1人だけ。残りの3人も1、2回戦で負けてしまいました。

今大会は何と、中学生の部も男女混合となり、12名のトーナメント。中学生くらいになると男女の体力差がものをいうので、女子にとってはとても厳しいところですが、それでも出場した3人の女子は皆とても健闘した戦いを見せてくれました。

この階級には男女三名ずつが出場しています。12名中、半数が横須賀支部という事になります。久里浜所属、中一男子のY君は、初戦で実力のある千葉県香取の選手と対戦。開始序盤、相手の圧力を真正面から受け止めながら、徐々にペースアップ。後半は技の手数、圧力、タイミング共に完全に相手を押し切って完勝。二回戦で同じ横須賀支部の先輩である女子の実力者、Rさんと対戦し、動きを知られているだけに、いいところをすべて封じられて敗退しましたが、中学生に入った初めての試合で、これだけの戦いができれば十分。何よりも、試合前後のまっすぐに相手を見つめるその姿勢に大きな成長と逞しさを感じました。これまでの大会では、いつもやや伏し目がちで、少々弱気のもたげるY君が完全に生まれ変わったようで、うれしい限りでした。

二人目の男子は久里浜のR君。いつもきれいな戦いで、鋭いハイキックで勝ち星を収める技巧派ですが、まだ大会では入賞に手が届いていません。そして、中学生のクラスに初めて出場する今大会で、一回戦の相手はやや大柄のパワーのある選手。体重で10キロ近い差がありながらも、延長まで持ち込んで好勝負を演じました。延長で上段回し蹴りで効果を取られていましたが、それほどのクリーンヒットではなく、さほどの大きなダメージはなかったようで、今後はこのパワー不足の解消が課題となりそうです。パワー不足と言いながら、このトーナメントで優勝した、大きな体重差のある選手と好勝負を演じたことは、本人自身にとっても大きな自信に繋がっていると思います。

もう一人の男子は追浜所属の中学2年生、K君。冷静な彼は激しくラッシュを掛けながら攻めてくる相手に苦戦しながらも、何とか対抗しているといった様子。支部内の稽古生ではあまり見られない、強引な攻めに苦慮している様子。寝技では一度馬乗りのマウントポジションを取られるも、腰の強さを生かしてひっくり返す。しかし、再度返されたところで寝技の時間が終了して再度立ち技からの再開。最後は押し相撲さながらな、相手の強引な押し込みに、いい技が返せず、ポイント負け。

でもいいのですよ。

最終的にこうした強引な攻めに対応する術はこれから少しずつ考えていけばよく、終わった時の顔つきや表情、体の姿勢を比較すれば、勝負にはまったく負けていません。いい技を貰ったわけでもなく、強引に押し込まれただけの話なので、あとは冷静に崩しを覚えて、そこからのつなぎの打撃もしくは投げ技を覚えていきましょう。対戦相手は、横須賀支部のR君に勝った相手で、このトーナメントの優勝者。試合に負けたとはいえ、K君、謙虚な姿勢の中にも貫禄十分でした。



続いて女子のクラス。



Hさんは、女子グループのトーナメントで善戦したものの二回戦目で敗退。中学生になってから柔道部に入った彼女ということもあり、やや組技に固執しすぎのきらいがあるように感じます。戦い方を変えれば、大きく変わってくると思います。また打撃をもう少し磨くことで、得意の投げ技も生きてくると思います。足腰の強さはとてもしっかりとしたものがあり、何よりもとても逞しく、笑顔の中での前向きな意欲が彼女の最大の魅力であり大きな武器です。まだまだ中学1年生。今後に期待したいです。

一方でHさんに勝った女子は、このトーナメントで優勝した大柄の男子とそのあと対戦をしたものの、体格差と体力差は圧倒的でまったく勝負にならず、危険防止のため試合を止められましたが、組み合わせの上での検討は、もう少し慎重にすべきだと思いました。

もう一人の女子、Aさんは、まだ少年部で稽古をしている子とは思えないほどの活躍ぶり。長野県佐久支部の実力ある男子の中学生と対戦しましたが、どちらが男子かわからないほどの奮闘ぶり。いわゆる逞しい女子です。

しかし、、、

私個人としては、女子の選手にはもう少し、綺麗でかっこよく戦ってもらいたいと考えていますので、また、戦い方の工夫を稽古の中で実践していきたいと思います。


最後に、横須賀支部の選手クラスの中ではトップクラスの実力者のRさん。中学3年の女子です。

初戦は他支部の実力者を破った横須賀支部のY君との同門対戦で、相手のいいところをすべて封じた戦いで完勝。普段から稽古を通じて戦い方を心得ている様子です。1回戦シードのため、この時点でトーナメントのベスト4に入ります。しかし準決勝で総本部の実力ある男子選手と対戦し、ここで残念ながら負けてしましました。

一言でいえば、体力負け。力があり、激しい闘争心と、とても素質のある男子のパワーに押し切られた形での負けです。

またその彼を教えているのは、総本部の寮生たちであり、全国大会の現役のトップの選手たち。さらに総本部では、競技に特化した稽古をしていると思われますので、そうした選手にも負けないだけのレベルアップを目指していきたいと考えています。

これまでは体重を気にして減量に励んでいた彼女ですが、自分に合った無理のない体づくり、体力づくりをすることで、よりレベルアップ出来るはず。ましてや体力に勝る男子に対抗するには、筋力アップは必須であり、体重維持のために減量に励んでいる今の彼女には厳しい要求です。

もし女子のクラスが男子と別れていれば、間違いなく優勝をできていたはずですが、当たり前の優勝よりも厳しい勝負を通して悔し涙を流す方が、何倍も今後の成長の糧になるというものです。結果的に良かったのではないかと思います。




さて、一般とシニアのクラスでは、3人中、一人は一回戦負けとなりましたが、一般部の超重量級の選手とシニア格闘ルールの部に出場した2人が優勝メダルをいただきました。

勝った2人は、あまり負担もなく、ある意味で簡単に勝ってしまったような感じでしたが、キャリアのある二人だからこその勝利と言えるでしょう。まだまだ経験も場数も足りないジュニアのクラスの子供たちには、簡単に得られる勝利よりも、とことん努力と苦労を重ねたうえでの悔しさをかみしめて、前向きなエネルギーを大きく膨らませていただきたいと思っています。

悔し涙もありますが、最後はさわやかな笑顔で晴れやかな気持ちで大会を終えらる強い心を大切にしていきたい。



皆さん、大変お疲れさまでした。





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