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新潟市の住宅設計事務所ネイティブディメンションズ=狭小住宅や小さい家、構造計算、高気密高断熱が好きな建築士のブログ

恒例の

2020-12-25 19:22:59 | 建築雑談
↑ガンダムペディア「ラーカイラム」より引用


気が付けば年末。

毎度のことながらあっという間の一年でした。

昨年の今頃何してたか、ちゃんと思い出せますもん。

150坪のアパートの構造計算してました。

しかも、3種類あって大晦日のお昼過ぎまで計算してたのを覚えています。

週末に依頼があって「週明けまでによろしく~」っていう社会人あるあるの年末年始バージョン。
他にも、ゴールデンウィークバージョンとか、お盆休みバージョンとか、レパートリーは沢山あります。

じゃぁ、今年の年末はどうかというと

ラーカイラムの設計をしてました。

違った。

150坪の個人住宅の構造計算をしてました。(ミニストック10個分!)

ガンダムに出てくる戦艦にしか見えないと思いながら作業をしていて、計算が終わって改めて戦艦とにらめっこしたところ、私の中では「ラーカイラム」に落ち着きました。

いや、何の話?

構造の話。

アパートの場合、大きくても規則正しく箱が並んでいるだけなので比較的構造計算は簡単なんですが、
個人住宅となるととんでもなく大きい部屋と小さい部屋が偏りながら並んでいて、リビングに大開口あり、組み込み車庫ありで、めちゃくちゃバランスとるのが面倒なんです。

しかも耐震等級3が目標。
積雪量は100cmで検討。つまり、積雪1cmで1㎡あたり3kgの重さを屋根にのっけて計算するので、1㎡あたり300kgの雪をのっけて計算するんですけど、今回の建物は水平投影面積(真上から見た面積)で300㎡弱あるので、

約90000kgの雪をのっけて耐震等級3をクリアしないといけないというハードミッションでした。
90000kg=90トン(※1)
90トンって何?って思って検索したら、飛行機を引っ張ろうみたいなニュースが出てきました。)

家の上にボーイング737型機をのっけて耐震等級3を目指す計算。

そりゃ確かにラーカイラムじゃなきゃ無理でしょうね。(※2)

ただし、間仕切り壁が沢山ある分、小さい家よりかは何とかなるだろうという安心感はあるんです。
さすがに大きいので入力に時間がかかりましたが、無事検討終了。

耐震等級3です。

まだ基本設計段階なので、プラン変更する度に構造計算を繰り返します。
この意匠と構造を並走して検討するのが大事なんです。(※3)

そして、先ほどバランスを取るのが難しいと書きましたが、結果はこうなりました。

1階

緑のポッチが重さの重心で、
二重丸が強さの重心。

この二つが近ければ近いほどバランスの良い建物という事になります。
ちなみに大きな1重の縁はここからはみ出すとペナルティっていうライン。
(可視化されると検討も楽チン)

2階

上下階とも近しい関係になっています。

実際の計算結果がこちら。

建築基準法では、この計算結果が0.3未満にしないとなんですが、

どの方向もちょー余裕。
0.3以下どころか0.03以下になってます。
1階のY方向なんて0.001

この結果が何をもたらすかというと、地震が来ても建物がねじれないという事。
昭和世代の方ならご存知かと思いますが、洗濯機の脱水でバランス悪いと、ガッコンガッコンいってエラー停止しちゃいましたが、バランスの悪い建物ってそういう状態を言います。

そういったことがなく、力に対してきれいに受け止められる建物っていう事ですね。

ラーカイラム級の美しい構造になりました。

これで、年末はゆっくり過ごせるのか!?




(※1)なお、雪が少ない地域では、積雪1cmで1㎡あたり2kgの重さで計算します。加えて積雪量も30cm程度なので、1㎡あたりの荷重が60kgと1/5の重さでしかないんです。
雪の多い地域の構造レベルが高いといわれるのは、このあたりが所以です。
でも、逆に言うと雪の少ない地域の軽快なデザインを雪の多い地域で表現するのはとても難しいです。
雑誌やインスタで見つけて「これかっこいい~」となっても、できない場合があります。

(※2)ミニストックが今回の建物の1/10という事は、ミニストックの屋根には90000kg÷10=9000kgの雪をのっけて計算することになります。
小っちゃいって言っても9トンの雪をのっけて地震に耐えられるように計算してあります。
ミニストックもなかなか力持ちなんです。

(※3)一人で意匠設計と構造設計を行うと、どの位でクリアできるというのが感覚で分かるので、基本プラン確定後の1回で構造計算が済みます。結果、人件費等のコストダウンにつながりますし、きれいな構造になりやすいです。










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