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新潟市の住宅設計事務所ネイティブディメンションズ=狭小住宅や小さい家、構造計算、高気密高断熱が好きな建築士のブログ

【ministock-10(lab)】小さい家の弱点-グランドピアノがある小さい家-

2019-03-20 17:21:17 | ministock-10(lab)
またまたグランドピアノがある小さい家の設計がスタートします。
グランドピアノがあるお住まいはミニストック-06以来です。
以来っていうほど昔でもないし、普通に設計していてもグランドピアノがある住まいなんて、そんなに巡り合いません。アップライトピアノだって数年に1回とかじゃないでしょうか。
それを小さい家しかしないネイティブディメンションズで設計するんだから世の中多様性に溢れたんだなって実感します。

作り手側も多様性に溢れる時代になりましたが、そんな中からネイティブディメンションズにお問合せいただいたMさんとは、先月からプラン提案をさせていただき、先日プランがまとまりました。
Mさんからは、
「色々と工夫いただき感謝です。我々の願いが形になってきてとても嬉しいです」
と、徐々にまとまっていく過程を楽しんでいただいたようです。


でも、これからもっと楽しくなるんですよ~。


とニヤニヤしながら書き込んでいるわけですが、そのニヤニヤが今後も止まらないように構造計算を済ませてしまいました。


そう。安全だから楽しめる。


世の中、大体そう。


スリルも楽しいけど、たまにだから楽しいわけで、日常の住まいは安全が前提。
ネイティブディメンションズはスケッチ程度の図面しかない状態で構造計算を終わらせちゃいます。

で、今日のタイトルです。
何が小さい家の弱点なのか。
ここからはちと面倒臭い話。でも、とっても大事な話

一昨年、木造の構造計算方法の改定が行われまして、吹き抜けのある建物は、構造的に弱点になるからしっかりせぇーよ。となりました。

おっきい住まいで一部が吹抜けなら大した影響もありませんが、小さい家での吹抜けは割合が大きくなるので大変なんです。
どんな住まいでも2階建て住宅なら必ず吹抜けがあります。

吹抜けとは床がないところ。

構造の世界では、階段も吹抜け扱いになります。

小さい家の場合、階段すら床全体に対して床のない割合が多くなるので、場所によってはとても歪みやすくなっちゃうんです。

計算上、吹き抜けのある部分は、吹き抜けのない場所と比べて、2倍とか3倍とかの歪みを生じます。(ちょっと分かりやすいように表現を変えています。正確には地震力が2-3倍入ってくるといいます)

単にガチガチに硬くすれば解決しますが、それじゃプランが面白くなくなります。

小さい家だからこそのワンルームを提案してるのに、壁ばっかりの家になったら何のための小さい家なのかって。

それを解決するのが設計者。

階段の順番ちょっと変えてみたり、柱の位置変えてみたり。
意匠設計と構造を両方理解しているから、使い勝手を損なわずに矛盾と無駄を解決できます。
短時間で。

結果、
1階の室内に建つ柱は6本
2階の室内に建つ柱は2本
これだけで、屋根に雪が1m載った状態でも耐震等級2をクリアさせました。

そして、これでホッとするんでなくて、

小さい家の弱点をクリアすることでいいこともあります。
基本的に建物全体が強くなるので、耐震等級3にしやすくなります。

今回、耐震等級2から3にするには、3本の梁を6cm大きくして、3枚の合板に打つ釘の本数変えるだけ。
間取りは一切変わらず。
予算にしても1万円アップするかなくらい。


長くなってきたけど、もういっこ。

単に強くすればいいだけじゃない。
階段の位置次第で歪みやすくなるっていうくらい、
建物はバランスが大事。

下の図は1階の間取りを部分的に拡大したものです。

耐震等級2の方は、●と◎が近いけど、耐震等級3は●から◎が離れました。

この二つの丸が近いほど建物のバランスがいいことを示します。
つまり、耐震等級3の方は強くしたばっかりにバランスが少し悪くなりました。

どっちの構造設計が優れているのか。
計算には表れない、設計者のセンスが求められる部分です。

で、今回はどちらが優れているかというと、
どっちも優れています。

斜線の中に入っていれば合格なんですけど、どちらも余裕をもって斜線内にあります。
どちらもバランスがいい建物です。

使いやすくもある。

快適でもある。

グランドピアノもある。

そんな住まいの設計がスタートします










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