大田区が寄付を受けたり購入したりして入手した大田区中央5丁目(佐伯山)の土地11,400㎡は、「緑地」として整備され、一部の敷地に「認可保育園」が建設される計画です。
この土地は、佐伯山と呼ばれる緑豊かな山で、佐伯栄養専門学校の土地でしたが、一部が民間開発事業者に売却されマンション建設計画に地域住民から反対運動が起きています。マンション開発が計画された土地は、山が切り崩され樹木も切り落とされたのちに建築確認が取り消しになり、その後、大田区が購入しています。
先日、この土地の整備に関する住民向け説明会が行われました。説明会は、過去にも開催されましたが、保育園建設についての説明を住民が要望したため、再度開催されたものです。
大田区の説明
区は、この地域に待機児童が多く(新井宿管内に30名)保育ニーズが高い地域であるとし、取得した土地の一部990㎡を私立の認可保育園建設用地として活用し、残りを都市計画公園として整備すると説明しました。公園は豊かな自然を守り、もとに近づけた整備をを行っていく。よう壁を設置する。敷地と大森大三中学校との間は幅6mの道路として整備する。としたうえで、都市計画決定の詳細なスケジュールまで示しました。
区民の意見
大きく分けると区民の意見は以下の通りです。
①がけの安全を確保してほしい
②待機児解消は別の方法で行い、この場所は緑地として活用してほしい
③保育園を建設してほしい
待機児解消に保育園建設が最も有効な手段か
大田区は、保育園建設により60名の待機児解消する。保育園開園は平成24年10月を予定していると説明しています。
区民は、小学校の空き教室など既存の施設を活用した待機児解消策はどうかと提案しましたが、区は不可能であると答えています。
しかし、翌日行われた議会において、所管のこども家庭部は、大田区立保育園の定員見直しにより266名の定員増が可能であると答弁しており、待機児解消が必ずしも施設建設によらずにできることがわかっています。
経済状況が相変わらず低迷しているなか、子育て家庭の就労ニーズは高く、待機児解消は待ったなしの現状です。建設に2年を待つのと大田区立保育園の定員見直しとどちらが待機児解消に効果的であると区民のみなさんは判断されますか?
区は十分な情報提供と説明責任を
区は、新井宿出張所管内に待機児30名という数字を示し、この地域の保育ニーズが高いと説明しましたが、周辺の保育園の待機児童数は必ずしも多くはありません。
確かに、保育ニーズのそれほど高くない低い地域でも、待機児が314名もいる現状では、遠くからも通う子どもたちで保育園はいっぱいになります。
しかし、これほどに広い地域の待機児童数をもって保育ニーズが高いことを示そうとする区のデータの出し方には大いに問題があります。
しかも、翌日の議会答弁で区立保育園の定員見直しによる266名という数字をだしていながら、他の方法での待機児解消策について全く答えなかったのは不誠実極まりない姿勢です。
区は、その持っているデータをきちんと示し十分な説明責任を果たし事業を遂行すべきです。
もっと知りたい方へ
◆これまでの経過◆
この土地は、佐伯山と呼ばれる緑豊かな山で、佐伯栄養専門学校の土地でしたが、3度の別々の経緯を経て大田区が取得しました。
最後に大田区が取得した土地は、平成17年に民間開発事業者に渡りマンション建設が計画されました。マンション建設計画が明らかになってから周辺住民は緑地・環境の保全の視点から反対運動を行ってきました。この時点で住民から大田区に対して、緑地保全のため土地を購入してほしいという要望もあがりましたが大田区としてマンション紛争の土地は購入しないとの姿勢から購入しなかったものです。
その後、大田区の斜面地条例に抵触し確認取り消しとなり、当初の計画どおりの建物を建設することができず建設がストップしていました。
昨年6月に前所有者であるオリックス不動産より大田区に土地購入の依頼があり、大田区がそれに応じて購入したと大田区から説明を受けています。
面積、購入金額などは下記のとおりです。最後取得した土地は、既に一部建築が進んでいますが、鉄筋などの地下構造物は崩壊防止になるため埋設したまま購入しています。
一方で、盛り土は売主が行うことになっています。今後の調査により、盛り土の安全確保のための費用が生じた場合には、売主負担になるのでしょうか。
◆土地取得スケジュールと条件など
①平成12年3月に相続に伴う寄付により取得 3,000㎡
②平成20年5月(佐伯栄養専門学校より購入依頼があり)土地開発公社が購入
5,500㎡ 約16億円 29万/㎡
③平成20年11月(オリックス不動産販売より購入依頼があり)土地開発公社が購入
4,523㎡ 約12億6千万円 28万/㎡
①②の土地には、樹木が覆い繁っていますが、③は、マンション建設のために樹木はすべて切り払われ、斜面が切り崩され、土中には鉄筋が打ちこまれています。
保育園
・私立認可保育所 定員:1才から5才児まで60名
・鉄骨2階建延べ床面積700㎡
・0年の定期借地権を設定し民間事業者に貸与。建物設計から保育園運営まで民間事業者による。
・開園 平成23年10月(予定)
今後のスケジュール
・10月中旬までに都市計画案を決定し、東京都と同意の協議に入る
・10月30日から11月13日 大田区が、都市計画案を公告・縦覧
・12月15日 大田区長が「大田区都市計画審議会」に諮問
・12月末 都市計画決定
・2010年2月 認可見込 着手から5カ年かけ公園整備
当日の区民からの質疑・意見など
・(がけの安全について)オリックスの施工を信用していない。区でやってほしい。
・大田区の一人当たり公園面積は、全国平均よりも東京都の平均より少ない。緑化を更にすべき。保育園は他に作ればよい。90m先に保育園があるのに作るのか。需要のないところに作っている。もとの佐伯山に復元してほしい。
・保育園必要。
・待機児解消、別の方法でできるのではないか。
・現在、保育園待機している。
・道路拡幅しても、ヘビ玉(注:ヘビが玉子をのんだ計上に例え一部だけ拡幅された道路をこのように呼ぶ。建築基準法や開発許可の要件にあわせるために拡幅しこのようになることがあり、道路全体の拡幅計画はない場合も多い)
・結果だけ知らされるのは良くない。待機児を切り札にされると、反対派は何も言えなくなる。プロセスを大切にしてほしい。
・今年6月に保育園建設になったのはなぜか。経営戦略会議の説明してほしい。
・保育園の場所として本当に良いのか。区立の保育園では無いのか。
・ニーズの低い地域でも、保育園を作ればいっぱいになる。緑のもっと少ない地域もあり緑地要望はわがまま。
http://www.komei-ota.jp/topic_2009_5.html
自治体による正確な判断のもと事業企画がなされたのか疑問が残るところです。
駅から遠く通園が決して便利とはいえない土地で、かつ計画地から50メートルの位置に既に空きのある保育園が存在する中、この計画にムリがあるように感じています。
そして、それで何故か通ってしまっているのが現状です。
カラスはどうするのですか?
そもそも周囲の自然が破壊されて、カラスが集まってしまっているのに、この一箇所だけ自然を守っても自然保護とは言えないのでは?
むしろ人工的にメンテナンスをして、カラスたちが都心に住まないようにする(してあげる)のが、「現代の共存」では?