成瀬たかこブログ

まちづくりや日々のあれこれ、不定期発信しています。

可決成立してしまった住民投票条例

2015-12-18 | 日記

東浦町議会12月定例会は本日最終日を迎え、東浦町住民投票条例(発議第5号)は賛成多数で可決成立しました。

以下の討論の中でもわたしは述べていますが、この発議第5号は議案提出から(正確に言うと提出前から)そのプロセスにおいて問題だらけの条例案でした。真っ当な議会ならあり得ないようなことを平然と行い、強引に今定例会中に可決成立へと持って行った、住民不在の中で進められたものです。その暴走を止められなかったことが本当に悔しくて悔しくてたまりません。…そこまで言っておいて、ではなぜ成瀬は賛成したのか?とのお声が来ることは覚悟しています。
採決前の討論原稿そのままをこちらに載せますので、ご一読いただけたら幸いです。

 

2番議員 成瀬多可子です。

 発議第5号 東浦町住民投票条例の制定について 賛成の立場から討論します。

 賛成の理由は常設実施必至型の住民投票条例が町民にとって、必要な制度であるからです。
 内容については、現在の東浦町にとって身の丈に合った条例と判断しました。前回も私主張しておりました絶対得票率の導入については、審査の過程でやはり難しいとの判断に至りましたので、原案賛成とします。

 賛成しますが、

 今回の住民投票条例の議員提案から本日の議決に至るまで、まっとうな議会であれば起こり得ないことが数々行われました。条例制定に賛成することは、この数々のあってはならないことをも認めることになるため、本当は賛成したくないです。が、この数々のあってはならないことがいとも簡単に起こってしまうこの東浦町議会だからこそ、それがまさに町民がこの条例を手に入れておかなければならない理由なのです。

 以下に、起こってはならないどのようなことが起こったのかを説明します。ここでは4点申し上げます。

 まず一つめ、前回執行部提案の住民投票条例を否決した「議会としての」理由を、提案者においては当時の会議録も確認することなく「首長発議で議決なしに住民投票が実施できるとしていた点」であると決めつけ、討論において1人の議員からも述べられていないことを否決理由だと言い及び、都合の良いように論点をすり替えようとしたこと。

 そして二つめ、本年6月定例会、本会議での小松原議員の一般質問に対し「再度提案する」と執行部は答弁しました。本会議で執行部答弁を引き出すという行為は、執行部に約束させる、ということで、約束する相手は、町民です。本会議場において執行部から町民に約束させておいて、その質問をした議員自らが今回の議員提案に向けて中心となって動いたことも説明がつきません。執行部からの再提案が明らかになったのだから、議会がすべきだったことは、前回のような事態にならないよう勉強して準備し万全の態勢で審査に備えることと、提案を受けたら十分に審査し、より良いものに完成させて町民みなさんの前にお出しすること。先を争って条例案を提出することでは決してありません。一般質問は「一議員」の勝手な言い分ではなく、「議会」から執行部への政策提言ですから、議場で執行部からの住民投票条例再提案を約束させたのは「一議員」ではなく、「議会」であります。
 今回議会が行っていることは、「自ら約束させておいて、その約束が果たせないように横取りする」行為に他なりません。われわれ議員に議案の提出権が与えられているのは、こんなことをするためではないはずです。行政では目の行き届かない、議会・議員だからこそ拾い上げられる声を集めて立法事実を積み上げ、政策提言をしていくことこそが議会の役割です。そこに議員の力を結集してこそ住民の福祉に貢献できるというものではないでしょうか。

 さらに3つめ、議案提出手続きも完了していない一部の議員の「私案」の状態の時に、「議会として」住民投票条例を提案することになった、とあたかも議員全員が提案に賛成しているかのような表現で議会ホームページによる広報が行われましたがこれは議会の私物化にあたります。

 最後4つめ、前回執行部案に際しては「手間ひまかけて住民とのコンセンサスが必要」「時間をかけて住民と議会と話し合うべき」と断じておきながら、11月28日の「議会による住民投票条例説明会」は会場使用許可が下りたのは24日でしたから開催決定から周知期間わずか4日で開催され、ホームページによる条例案の公開と意見募集に充てられた時間はたったの2週間。その説明会と意見募集で寄せられた住民からの意見・質問に議会として回答してもいない。この11月28日の説明会に出席された町民から苦言を呈するメールが議会あてに寄せられたことは委員会審査でも取り上げたとおりです。

 一連のあってはならないことを容認し、一議員、一会派の暴走を止められなかった議長の責任も重大であるとあえて言わせていただきます。

 15日の総務常任委員会における提案者の発言の数々は、質問者によってその内容が二転三転し、いかに安易な姿勢で条例提案に臨んだかが露呈することとなりました。これが執行部提案だったら、このまま議案を通すことなどあろうはずもないのに、身内には甘いお手盛り審査。
 
委員会としては異例の10名もの傍聴人の中にはこのまま条例制定に進んでいくことに大いに不安を抱いた方もおられことと推察します。それでも、継続審査にする必要はない、と総務常任委員会は結論付けました。

 議案として議会に提出される前にも、審議入りしてからでも、議決前なら何回でも立ち止まり、検証し、間違いを認め立て直すことは可能であったのに、我々議会にはそれができなかった。むしろ、しようとしなかった。
 この時点で、すでに議会は機能不全状態。いざとなったら数に頼んで結論をどうにでもコントロールできるのが議会というところです。住民が望んだ時には必ず住民投票が実施できる状態にしておかねば危険なのだということを、我々議会自らが示すこととなったのです。

 最後になりますが、委員会でも福嶋浩彦氏の著書から引用させていただきましたが、大切なことなので、繰り返します。「住民投票はとにかく何でもやればいいというものではありません。慎重に使うものです。そして何より、使う市民の側が力をつけないといけません。住民投票で、新たにもっとも重い責任を負うことになるのは市民自身なのです。」
 この、住民投票というものの意味、そして条例の内容をこれから住民みなさんに経過を含めて どう説明していくのかが議会に残された課題です。
 本日ここに議決の日を迎え、提案者始め賛同議員の皆さんは、ほっとしているかもしれませんが、議決がゴールだとはわたしは考えていません。ここからがまさに議会の真価が問われているところなのです。議長はじめ、各議員におかれては、議会として説明責任を果たすことからくれぐれも逃げないでしっかりと向き合っていただくよう申し上げて、発議第5号、東浦町住民投票条例の制定について、誠に残念ですが賛成の討論とします。(ご静聴ありがとうございました。)

 

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