レイデオロとレディブロンドとTom Foolの話~『エクリプス』3月号より

2017-05-29 01:22:45 | 配合論

たぶん月曜はダービーの回顧を書く時間がとれないので、ひとまずレイデオロの配合解説をということで、キャロットクラブ会報『エクリプス』3月号の連載コラムを再掲させてもらいます(内容はいじってませんが馬名はローマ字表記になおしてます)

英1000ギニーと仏オークスに勝った名牝Highclereは繁殖としてもかなり有能で、子孫にNashwan、Unfuwain、Nayef、ウインクリューガーなど内外の大レース勝ち馬が多数出ている

Highclereの孫娘にあたるウインドインハーヘアも独G1アラルポカルに勝ち英オークス2着と活躍、繁殖に上がってからもディープインパクトやブラックタイドなどを産んで大成功。日本で一大牝系を築きつつある

このウインドインハーヘアにMr.Prospector系の有力種牡馬Seeking the Goldが種付けされ、北米で生まれた後に日本に持ち込まれたのがレディブロンドで、ロードホースクラブの服色で藤沢和雄厩舎所属で走った



股関節に問題があったために、なんと5歳夏という遅いデビューとなったが、そこから無傷の5連勝で瞬く間にオープン入り。6月にデビューした馬が10月にはG1スプリンターズSに出走し、並み居る強豪たちを向こうに回して3番人気の支持を受けたのだから驚くしかない

結果はデュランダル、ビリーヴ、アドマイヤマックスといったG1ホースと叩き合って差のない4着。今後の期待が大きく膨らむ内容だったが、そこでまた脚部不安を発症し、僅か半年の競走生活を終えることになった

ウインドインハーヘアの父Alzaoの母父Sir Ivorは英ダービーなどに勝った名馬で、その母Atticaは北米の名馬名種牡馬Tom FoolとPharamond、Alcibiades、Sir Gallahad=Bull Dogが共通するニアリーな関係



そして血統表を見てのとおり、レディブロンドの父Seeking the Goldの母父はTom Foolの代表産駒Buckpasserなので、レディブロンドはTom Fool≒Atticaのニアリークロス4×5を持っていた

Tom Foolは運動神経の良さと脚捌きの無駄のなさに定評がある血で、たとえばスクリーンヒーローの母母ダイナアクトレスは芝マイルで日本レコードをマークした女傑だが、その母モデルスポートがTom Fool≒Spring Runのニアリークロス2×3で、スクリーンヒーローが種牡馬として成功しているのはTom Fool的な走法をよく伝えていることが一つあげられる。モーリスもゴールドアクターも脚捌きがきれいなので、字面の血統よりも高速馬場への適性が高い

レディブロンドも非常にTom Fool的な走りをする馬で、その特長を産駒にもよく伝えた。父シンボリクリスエスのラドラーダはTom Fool≒Attica6×5・6。通算4勝のオープン馬だが、東京芝の上がりの競馬を鋭く差し切る一方で、中山芝でも好位差しで[1-2-0-0]と連対を外しておらず機動力にも秀でたマイラーだった

父スペシャルウィークのゴルトブリッツはBuckpasser5×4。胴と脚が長いスペシャルウィーク産駒だが、走らせるとやはりTom Fool的な脚捌きで、大井の帝王賞でも京都や阪神の重賞でも、勝つときは型どおりの好位捲りで実に危なげなかった

ラドラーダも繁殖入りするとTom Fool的な機動力を伝え、初仔のティソーナ(父ダイワメジャー)は現在3勝、阪神内1400mのマーガレットSを番手から抜け出してオープン入りを果たしている

そしてキングカメハメハが配されて生まれたのが2番仔のレイデオロで、自身はMr.Prospector3×4、Buckpasser6×5のクロス。Mr.ProspectorをクロスしSeattle SlewやNijinskyなど胴長の血が入ったことで、母より体型に伸びが出て特に脚が長くなった



とはいえTom Fool的な走りはやはり受け継いでおり、葉牡丹賞では勝負どころで少しズブさもみせていたが、ホープフルSでは3~4角で馬群を割って抜け出し、中山内回りの多頭数を器用に捌いてみせた

名種牡馬キングカメハメハは配合に素直で様々なタイプの活躍馬を輩出しているが、たとえばラブリーデイやアパパネなどはTom Foolのクロスの影響が強いタイプだろう。ともに芝内回りのG1で器用な勝ち方をしている

ちなみにキングカメハメハ×シンボリクリスエスの組み合わせはJRAに3頭が出走し、レイデオロとリーガルプレゼンスが勝ち馬となっている。シンボリクリスエスはNorthern Dancerの血を全く引かないので、Northern Dancerの強いクロスを持つキングカメハメハとの配合は悪くない

同じ3歳世代にはキングカメハメハ×ディープインパクト×エアグルーヴのヴァナヘイムがいるが、ドゥラメンテやルーラーシップと近い配合なのにあまりストライドで走らず俊敏な小脚を使うのは(京都内でも小倉でも4角の加速が目を引く)、Tom Fool≒Atticaのニアリークロスが遠い代でも影響を及ぼしているからではないか、と考えられる

そんなわけで、牝系特有のTom Fool的走法を受け継いだレイデオロは、脚長で体質は柔らかいので東京で脚をタメて斬れで差すこともできるし、もちろん中山内回りを捲るのはお手のものだから、非常に弱点が少ない中距離馬といえるだろう

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ということで、皐月賞の一言コメントでは“ラブリーデイのSeattle Slew炒め”と評したのですが、スローの東京2400mをピッチで抜け出してスワーヴリチャードのストライドを封じたというのは、実にそれらしい勝ち方やったと思います

あの超スローにペースダウンしたところでスルスルとポジションを上げ、ノリの番手でOKとルメールが押さえるとすぐにペースダウンし、あの俊敏かつ操縦性抜群の小脚こそがTom Foolの本領

Tom Fool的なレイデオロだからこそ出来た芸当で、Tom Fool的な脚質を理解していたルメールだからこそできた芸当だったと思います

Tom Fool≒Atticaのクロスを3世代重ねてきた配合と、デビュー戦から手綱を取りつづけてTom Foolを手の内に入れてきたルメール、今年の日本ダービーのクライマックスはあの向正面だった

混戦で難解なダービーも、終わってみれば1,2着馬はいわゆる“お手馬”、デビュー戦からコンビを組みつづけてきた人馬でした



202X年のダービー1人気馬リアルデオロ(コメント欄参照)

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11 コメント

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Unknown (Unknown)
2017-05-29 08:59:20
Tom Foolの系統といえば、メイワパッサー → スタビライザー・スプライトパッサー を思い出すオッサン世代

あれは、Tom Fool というか Busanda・Buckpasser っぽいんすかね~
Unknown (MJ)
2017-05-29 10:47:46
メイワパッサーはBusanda2×3ですからね
スタビライザーはシンボリルドルフみたいな発想の配合で、今見ても泣きそうなほどカッチョイイ
Unknown (Unknown)
2017-05-29 13:55:55
Tom Foolのwikipedia(英語版)見てたらAmerican PharoahがスゴかったのもTom Foolのおかげ。って書いてあって、MJ派は海を越える。みたいな感想が。
Unknown (MJ)
2017-05-29 14:03:17
Storm Catの母First RoseもTom Foolと7/8同血(MenowとBull Dog=Sir GallahadとAlpoise≒Rowes Bud)なんですよね
だからディープ×Storm Catのニックスの根拠(Sir Ivor≒Terlingua)はかなり強固
Unknown (MJ)
2017-05-29 14:04:20
母じゃない4代母First Rose
Unknown (MJ)
2017-05-29 14:13:19
となると、種牡馬レイデオロはディープ×Storm Cat牝馬とニックしまくる説が(仮想組み合わせ参照)
Unknown (テノリオ)
2017-05-29 22:56:09
ダービーのエイシンフラッシュの走法を思い出したのですが、エイシンフラッシュにはTom Foolないんですね(Spring Runはありますが
Unknown (宮河)
2017-05-30 02:11:53
オルフェーヴルきょうだいの6代母(=エレクトロアートの4代母)
Dynamoって、First Roseとニアリーな血なんですよね(MenowとErin≒Rowes Bud)

Dynamo‬
http://www.jbis.or.jp/horse/0000387416/pedigree/

‪First Rose‬
http://www.jbis.or.jp/horse/0000393599/pedigree/
Unknown (宮河)
2017-05-30 02:28:45
そしてDynamoはSpring Runともニアリーになるし
(MenowとCherokee Rose≒Brookdale)
Tom Foolともニアリーになる
(MenowとErin≒Equipoise)



ただいずれの場合も、Sir Gallahad=Bull Dogを絡めていないんですよね……。
Unknown (MJ)
2017-05-30 08:22:26
エイシンフラッシュは母がRed God≒Stay at Homeで自身はMr.Prospector≒Stay at Homeですね
エイシンフラッシュの一瞬の速い脚はここでしか説明できない

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