第156回天皇賞回顧~万国共通の“幹の力”

2017-10-30 11:42:53 | 血統予想

◎9.ソウルスターリング
○2.サトノクラウン
▲7.キタサンブラック
△10.ミッキーロケット
△12.ステファノス
ソウルスターリングの母スタセリタは仏オークス(芝2100m)、ヴェルメイユ賞(芝2400m)、サンタラリ賞(芝2000m)、ジャンロマネ賞(芝2000m)、フラワーボウル招待S(芝10F)、ビヴァリーDS(芝9.5F)と6つのG1を勝った名牝。ただしヴェルメイユ賞は1位入線のダーレミ降着による繰り上がりの勝利で、主戦だったルメールは2000mがベストだったと言っている。
ソウルスターリングも桜花賞の予想のときに「マイラーの加速には見えない」と書いたのだが、毎日王冠後にルメールは「1800mは微妙に忙しいかも」とコメントしており、フランケルよりもスタセリタに似た体型や走りからしても、母同様2000mぐらいがベストの中距離馬だと私も思う。
桜花賞の敗因はマイルの緩みないペースで追走に脚を使ったからで、血統的には少々馬場が渋ってもOKのはずで、サンデーサイレンスの血を全く引かない血統からもむしろ少し時計がかかる決着になるのはプラスだろう(毎日王冠はスローに落としすぎたことによる鋭さ負けとみている)。ドイツ血脈モンズンを1/4異系とする「3/4ノーザンダンサークロス」で、フランケル産駒としても配合は最高に近い。
重馬場想定なら2400mぐらいをこなすスタミナの裏付けを重視したいところで、サトノクラウンとキタサンブラックは阪神内回りよりは東京がベターなストライドでもあり、まずはこの2頭が相手。ヒモ穴で拾いたいのがミッキーとステファノスで、渋った東京2000mはともにベストコースだろう。

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昨日も京都競馬場で一日打ってましたが、カシオペアのパドックは2周ほど見て早めに切り上げ、モニターで天皇賞のパドックと返し馬を入念に観察し、ブログのコメント欄にも気づいたことは書いていくつもりだったのですが、けっきょく書き込んだコメントは「キタサンは宝塚とは雲泥の出来」という一言だけ

それぐらいもう素晴らしい体で出てきて、「まるでエクリプスの肖像画のようだ」というコメントがありましたが、私はこれは彫刻のモデルにしたいよなあ~とうっとり見てました

春の3戦でも大阪杯のパドックが抜群に良かったので、休み明けでも自分で体をつくるのでしょうが、その大阪杯のときよりも更に筋肉の浮かび上がり方が美しく見え、宝塚の大敗から見事に持ち直してきただけでなく、これは更に進化し強くなってるのかも…という驚きがありましたね

サトノクラウンはいかにもナスキロホースという体質ですから筋肉の隆起でアピールするタイプではなく、しかし+10キロでも馬体は研ぎ澄まされ、何より走る気に満ち満ちていて気配が抜群で、こちらも体調の良さがうかがえました

返し馬の映像を観ながら、ヤンチャ馬券オヤジと
「不良馬場の秋天って、マックイーン圧勝のとき以来かな?」
「そやろな、ブレクラスニーが繰り上がりやけどな」

あの秋天もメジロマックイーンの強さばかりが際立って、2000mのG1でもここまで馬場が悪くなるとまずスタミナの差が顕在化するんかなあ…とふと思ったんですが、春天連覇のキタサンブラックと香港ヴァーズでHighland Reelを差し切ったサトノクラウンの、歴史に残るものすごい叩き合い

そして3着に追い上げてきたのは菊花賞2着レインボーラインで、スタミナ値や長距離適性の高い3頭が上位にきた、という結末でもありました

今年の『サラブレ』4月号で、キタサンンブラックとサトノクラウンの配合の類似点を書いたのを思い出したので、ひとまずそこから再掲





<キタサンブラックの父ブラックタイドは名馬ディープインパクトの全兄で、サトノクラウンの父Marjuは女傑Salsabil(愛ダービーなど欧クラシック4勝)の3/4弟。MarjuとSalsabilの母Flame of Taraは略図のようにHyperionの強いクロスを持つが、ブラックタイドとディープインパクトの母ウインドインハーヘアもHyperion的なスタミナの血を強く受けている。

抜群に鋭い脚はないが粘着力と成長力に富むのがHyperionの特長といえるが、こうしたHyperionらしさはディープインパクトよりもブラックタイドに強く伝わったといえるだろう。ディープの場合はHalo≒Sir Ivorのニアリークロス(2×4)譲りのしなやかさ俊敏さのほうが強い。

ブラックタイドのように粘着力を主として伝える種牡馬は、母父にマイラーやスプリンターの血を入れ、先行力を増すような配合にするのが望ましい。母父のスピードで先行してこそ、父の粘着力が活きるというわけだ。テイエムイナズマ(母父Danzig)が好例だが、母父にスピードが入る配合が実際よく成功している。

サトノクラウンの全姉Lightening PearlはチェヴァリーパークS(英G1・芝6F)勝ち馬で、母父Rossiniはロベールパパン賞(仏G2・芝1100m)勝ち馬。筆者はセレクトセールで実馬を見て「好配合のマイラー」と紹介したが、牧場関係者も当時はそう考えていたようだ。

しかしMarjuの代表牡駒3頭、Indigenous、Viva Pataca、Chinchonは、いずれも古馬になって芝2000~2400mの大レースを勝っており、いずれも母父がマイラーなのだ。これはMarjuがHyperion的な粘着力成長力を強く伝えている証だろう。

というわけで、ブラックタイドやMarjuのような種牡馬が、母父にスプリンターの血を入れて2400mのチャンピオンを出すのは不思議でもなんでもなく、むしろ順当というべきなのである。>

下のようにブラックタイドの母母BurghclereとMarjuの母母Welsh Flame は非常によく似た血脈構成で、AureoleやAlcideを生み出した「HyperionとDonatelloとSon-in-Law」という英ステイヤー血脈の極みというべき組み合わせが綿々と重ねられています


※Fair Trial(FT)の母父とAloeの父はともにSon-in-Law

いつも書いていることですが、BurghclereやWelsh Flameのような重厚なスタミナを伝える種牡馬の場合は、母父にマイラーやスプリンターのスピードを入れて、「母のスピードで先行したり捲ったりして父のスタミナで踏ん張る」という脚質にするのが成功しやすい

そういう意味でキタサンブラックとサトノクラウンはよく似たコンセプトの配合といえ、出遅れをリカバリしたユタカの名騎乗は語り継がれていくことでしょうが、2角の入りでは中団以降だった2頭が4角では2番手で並んでいて、そこから追い合ったから歴史的名勝負になったのだ、というのが配合史的見方

そしてHyperionの絞り合いになれば前にいるほうが有利で、しかしこういう大箱で持続力が問われるレースで、サトノクラウンがまともに負けたのを、根負けしたのを初めて見た

道悪圧勝列伝に今でもあがるのがレインボーアンバーの弥生賞、レインボーラインはそのレインボーアンバーを母母父に持ち、ステイゴールドとフレンチデピュティとレインボーアンバーを通じるノーザンテースト≒Vice Regentのニアリークロス



こういう馬場が鬼なのはわかっていましたが、前日予想ではソウルスターリングもこなせる稍重~重ぐらいを私は想定してて…あの弥生賞を観ていたオヤジたちがみんな馬券にしてるのが何だか悔しい(^ ^;)

レインボーアンバーは菊花賞で2着に粘ったようにスタミナも豊富で、母父マッチウォンの母EdwinaはAlycidon×Fair Trialですから「HyperionとDonatelloとSon-in-Law」、この組み合わせのスタミナを受けた長距離好走馬が1~3着を締めたともいえます



でもここまで酷い馬場になると、「この馬も走りにくそうだったが、他の馬はもっと走りにくそうだった」というミルコが言うように、爪が小さいとか繋ぎが短いとか、可動が小さいとか首を使わないとか、そういう体型走法に因る得手不得手もあるでしょうが、脚をとられバランスを崩し消耗するのはみんな同じで、それでもメゲずに走りつづけられる根本の強さ、心身の“幹の力”のようなものが問われたレースだったとも思うのです

「強さにもいろいろある」と日曜のエントリで書いておいてこんなことを言うのもなんですが、こんな馬場を最後まで走り抜くことができる“幹の力”は万国共通やと思うし、キタサンブラックとサトノクラウンはそんな“幹の力”を世界のいろんな檜舞台で発揮できる馬やと思うし、ひいき目なしでキタサンブラックはHighland Reelより強いですよ、たぶん世界のどこの12Fで走ってもね

ディープインパクト×Storm Catの2頭は、それらしいストライドで走るサトノアラジンと、それらしくない(Kingmambo的Special的な)掻き込みピッチで走るリアルスティールとでハッキリ明暗分かれましたが、リアルスティールはこんな馬場は巧いほうだけど1800mベストなので、2000mで道悪になるとスタミナの問題が出てくる

マカヒキはクレバーさんがパドックで一番良く見えると褒めていましたが、出来は上向いていたのだとすれば、高速馬場のスローでついに復活というシーンが近いうちに見れるかもしれません

ソウルスターリングは大きく負けなかったように道悪がダメではないと思うし、スタセリタにソックリな娘ですから2000mがベストだろうとずっと書いています

ただ今日のパドックでは、やっぱり1,2着馬と比較すると、「ああなるほど、天皇賞に出てくるだけの一流の牝馬やなあ…いい馬やなあ」という、それぐらいの感想しかなかった

好配合で一流の中距離馬ですから、またどこかで大きなタイトルを手にすることもあるでしょうが、万国共通の根本の強さが問われた極限のレースで、世界的な名中距離馬2頭を向こうに回しては、パドックから少し霞んで見えたのも仕方ないんかなあ…と、そんなことを考えながら阪急電車に揺られて帰ってきました

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3 コメント

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Unknown (Unknown)
2017-10-30 14:19:13
キタサンブラックは超不良馬場を走るのにこんなに研ぎ澄まされててええのんかと思ってしまい軽視してしまいました…
Unknown (Unknown)
2017-10-30 16:35:29
ユタカの好騎乗...あのロジユニのダービーがあったからインに拘ったのかなとも思えます。あれだけ不良だとどこを走っても同じ、ペースに関係なく最内が最短ルートだと改めて教えてくれた気がします。
図鑑に出てくるような (ファン)
2017-10-30 20:34:59
前々から思っていたのですが、キタサンブラックはサラブレッドの始祖のような、図鑑に出てくるような、Pocahontasの父のGlencoeのような(絵でみたような)、そんなような気がしてました。
馬券はキタサンブラックを外してサトノクラウンから
ほとんど総流しの馬単で見事に外してしまいました。

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