栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第163回天皇賞回顧~漆黒のドイツ牝系、最強のスタミナを証明

2021-05-03 11:01:15 | 血統予想

阪神11R天皇賞
◎17.オーソリティ
○5.ディアスティマ
▲2.アリストテレス
△1.ワールドプレミア
×3.カレンブーケドール
×7.ユーキャンスマイル
×12.ディープボンド
今年の春天は阪神芝3200(外→内)で行われる。フィエールマン、レインボーライン、キタサンブラック、ゴールドシップ、フェノーメノと、京都の春天はプリンスリーギフトで下った馬が毎年勝っているが、果たしてその頭で予想していいのかどうかだ。
阪神内3000の阪神大賞典を参考にするならば、例年少頭数であまり荒れないレースで、過去10年で6人気以下で馬券に絡んだのは5頭。うちナムラドノヴァン(9人気3着)、カフジプリンス(6人気2着)、モンテクリスエス(6人気3着)と、3頭がロベルトの血を引いている。
阪神大賞典といえば今も語り継がれるのがブライアンズタイムの2頭、ナリタブライアンとマヤノトップガンの叩き合い。阪神大賞典1~5着をコンプしたトウカイトリック(母父シルヴァーホーク)も実にロベルト的なステイヤーだった。今年の出走馬でロベルトの血を引くのは、内からアリストテレス、ナムラドノヴァン、ウインマリリン、オーソリティの4頭。
アリストテレスが一番強いと思うが、エピファネイア産駒らしい気性で馬群に入ると阪神大賞典のように引っかかるので、ルメールといえどもこの内枠は乗り難しい。◎はオーソリティ。母はエピファネイアの全妹で、有馬記念でフィエールマンに捲られたらズルズル下がっていったようにこの馬も馬群はよくない。その点外枠はアリストテレスより乗りやすいし、好位で揉まれず運べそうだ。
オルフェーヴル×シンボリクリスエス×スペシャルウィーク×サドラーズウェルズで配合は満点。ただ中距離×中距離×中距離×中距離だから完成に時間がかかったし、今でも2000の大レースではスピード的に少し苦しい。何といっても泣く子も黙るシーザリオの孫だ。それだけで春天で◎が打てる。
ワールドプレミアはひと叩きで目論見どおり良化したが、重厚で不器用なストライドで走るからこれも枠が内すぎた気がする。ディアスティマはヘイロークロスらしい燃費のいい走りとディキシーランドバンドのハイペリオン的な体質を受け継いで、ディープ産駒にしては斬れは並だがトボトボと実直にいつまでも走れる。シュヴァルグランのようなイメージだ。北村友とも手が合うタイプで、イン番手でぐるっと2周回ってくるだろう。

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例によって、NETKEIBAの血統解説より1~3着を再掲

ワールドプレミア
ワールドエースの全弟でヴェルトライゼンデの3/4兄で、ジャックルマロワ賞(仏G1・芝1600m)などに勝ったManduroの甥。母マンデラは独オークス(独G1・芝2200m)3着。母父Acatenangoは独リーディングサイアー。母方にはドイツとHyperionのスタミナが強く、全兄よりも持続力を感じさせる体質脚質のステイヤー。ただ大跳びでそれほど器用なタイプではない。阪神内回りだと日経賞のような差しになるので、外差しがきくバイアスならば。(距離◎スピード○底力◎コース○)



ディープボンド
ダンケシェーンの半弟で、ローレルゲレイロやリキサンマックスやアメージングムーンのイトコ。母ゼフィランサスはJRA3勝。そこにキズナでHalo4×4とLyphard5×4。Storm Bird≒NijinskyなどStorm Catの血脈構成もニアリークロスで増幅し、キズナ産駒の走る配合パターンといえる。血統も体型も長距離向きには見えないが、HaloやTom Foolのクロスで燃費よく走れる馬なのだろう。ここはむしろ高速馬場になってどうか。(距離○スピード○底力◎コース○)



カレンブーケドール
母ソラリアはチリの2歳女王&3歳女王で、スタミナ血脈Hawaiiの5×5を持ち芝2400のエルダービーに勝っている。その父Scat DaddyはJustifyやミスターメロディなどを出し成功したが早逝した。ディープ産駒にしては鋭さは並だが相手ナリにしぶとく、持続戦のほうがパフォーマンスが上がるのは戦績を見てのとおり。JCも3強に真っ向勝負で食い下がった。内回りは合うし、燃費のいいトボトボ走りだから牝馬でも長距離に対応できる。(距離○スピード○底力◎コース◎)



北村友の落馬負傷で急きょディアスティマの鞍上に指名された坂井瑠星は、12.8-58.9-61.7-61.3(レースラップ)と緩めずに11秒後半のラップを刻みつづけて逃げ、上がり3Fは12.1-12.3-13.0、文字どおりスタミナを振り絞る争いで、だいたいスタミナの順に入線したという阪神の天皇賞でした

ルメール&ノーザンのアリストテレスをおさえて和田&日高のディープボンドが1人気に支持され、それに応えるべく堂々たる横綱相撲で、改めてレースを見なおしても強い2着やったと思います

「中距離のスピードを意識した配合で、ここまで長距離適性があるとは思わなかった」と生産者の村田さんも仰るように、本当に字面の血統以上に持続力に富む馬で、距離が延びれば延びるほどスタミナや持続力が光り輝いてくるのが面白い

モガミヒメ、キングヘイロー、Storm Cat、Alzaoなどの血脈構成を絶妙にフックさせるのは村田のお家芸ともいえ、たしかにキズナ×キングヘイローのイメージどおり1800~2000あたりでスピードをみせそうな配合です

村田牧場が誇るモガミヒメの牝系も短距離王ローレルゲレイロに代表されるようにしなやかで軽快なスピードのイメージですが、モガミヒメの父カコイーシーズはキングジョージ2着、英ダービー3着と12Fのスタミナを誇った馬で、JCでもベタールースンアップやオードと叩き合ってアタマ・アタマの3着で、大レースの2着3着が多い馬でした

カコイーシーズの父Alydarは北米三冠で全てAffirmedの2着、Alydarの代表産駒Easy GoerはKダービーもプリークネスもBCクラシックもサンデーサイレンスの2着で、12Fのベルモントでついに一矢を報いたというのも有名なエピソード





日本で種牡馬入りしたカコイーシーズはAlydar系らしくダート中距離で成功し、帝王賞のコンサートボーイが代表産駒で、このコンサートボーイがまた南関三冠でオール2着で、羽田盃も東京ダービーも東京王冠賞も2着やったんですよね(^ ^;)

長い距離をワンペースでしぶとく走りつづけられるスタミナと、決め脚に欠けるというか勝負弱いというかゴール前で何かにやられてしまう惜敗の多さは、Alydarらしいしカコイーシーズらしいというべきなのでしょう

カレンブーケドールはBold Ruler的な無駄のないフォームでトボトボ燃費よく走るので距離はもつし、そんな走りなので内回りのコーナリングもいいので勝負どころの手応えはこの馬が一番、あれを見ると和田も追いかけざるをえなかったのですが、ステイヤーとまではいえないから最後の最後にスタミナが尽きた

アリストテレスはエピファ産駒らしく馬群に入ると行きたがるので、縦長になった馬群の切れ目でポツンと一頭になって折り合いをつけ、しかも前にディープボンドを見るというのはルメールが描いていたベストプランやったと思うし、それで最後はディープボンドに突き放されてしまったのだから、3200のスタミナで劣ったというしかない結果でした

オーソリティは外枠なので差しに回るプランやったようですが、早々とラチ沿いにもっていって終始馬群の中だったのが、エピファネイアの全妹の仔だけにそれが応えたのかなと

ワールドプレミアはひと叩きの良化が顕著で、パドックでも一番良く見えると書いておきましたが、晩成ステイヤーと見込んで早くから大目標を菊花賞に置いて開花させ、今年も春天に目標を定めてベストコンディションに仕上げてきた厩舎の手腕が光りました

ミスアンコールの仔で2400を勝ったのはワグネリアンだけ、ウィキウィキの仔で2400を勝ったのはマカヒキだけ、ムードインディゴの仔で長距離を勝ったのはユーキャンスマイルだけ、どうやらヨーホーレイクもクロウキャニオン仔最長の距離適性になりそうで、マンデラのスタミナを最も開花させたのが友道厩舎なのです

アドマイヤマーズを近藤会長にススメた後にセリ名簿を見て「あれ? これメジャーなのか(^ ^;)」と驚いたというエピソードがあるぐらいで、ダイワメジャー産駒でもマーズみたいな馬をチョイスする友道スカウター、それを理解して長いところを走れる馬につくりあげるスタッフ、「やっぱり長距離は友道やなあ…」とファンも唸るしかない

ディープ×ドイツ血統というのはPOG期間はギリギリ間に合わずちょっとガッカリということが多いんですが(その意味でもグレートマジシャンの今春には注目)、ワールドプレミアやサラキアのようなスタミナと成長力こそが本領で、上がり37秒4の天皇賞を勝つにふさわしい血統が勝ったと思います

コメント (1)
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