小指ほどの鉛筆

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依存(ガル大)

2009年06月24日 20時13分00秒 | ☆小説倉庫(↓達)
身をすり減らしてでも守りたい物がある。
自分自身も、これからの人生も全て捧げてまでも、守りたい物。
この身は一つ。
けれども、守るべき物は、二つあった。
両者とも人間。
一人は恋人と呼ぶに等しい存在で、もう一人は上司という、ただそれだけのことだった。
それだけのことだと、思っていた。

―大佐・・・

―貴方はどうして・・・そんなにも・・・

月夜、彼の執務室に足を運んだことがあった。
普段ならばこの辺の通路すら通らない自分が、その日たまたま急用を思い出したのは、何かの因縁かもしれない。
本当にたまたま寄っただけのその部屋には、2人の人間がいた。
一人は、大佐。
そしてその傍にもう一人。
自分が最も毛嫌いしている人物、ジララ元大尉。
部屋に入れば、隠れたくとも2人は自分の存在に気が付く。
たまたまでも、この場に寄ってしまったことを後悔した。
大佐は椅子に座ったままで、ジララが、その額に口付けていたから。
大佐の瞳は優しげで、それでいて恐ろしいほどに冷静だった。
むしろジララの方が余裕の無い瞳で彼を見ていて、不思議な関係性に、頭が混乱した。

―どうしてあんなにも・・・綺麗なのだろう・・・

2人はすぐに自分に気が付く。
ジララは大佐の頭を撫でてから、すぐに退散した。
残った大佐は、細めた瞳で自分を見てから、微笑んだ。
何事も無かったかのように、「夜遅くまでお疲れ様。」なんて言葉までかけられた。
その場では、先程の行為について尋ねること自体がおかしなことのように思えて、だから、何も言えなかったのだ。

―羨ましい・・・?いや、ずるい・・・

帰ってからずっと、そのことを考えていた。
2人の関係について。
その間にいる、もう一人の男について。
そして、自分の立ち位置について。
考えすぎて、帰ってから、すぐに自室に篭ってしまった。
ゾルルを心配させたかもしれない。
けれども、こんなことを考えているなんて言えない。
大佐のことを考えて、考えて・・・そうして、こんなにも心苦しくなっているなんて・・・

―大佐・・・大佐・・・なんで・・・

微笑む彼の姿。
優しい言葉。
額への口付け。
彼はどれも、大したことではないようにやってのけた。
憎い彼のことを、あの人はどう思っているのだろうか。
自分が大佐に抱く感情と似た物が、そこにあるのだろうか。

―ダメだ。

思いを断ち切るかのように、寝返りをうつ。
ベッドが小さく軋んだ。
「はぁ・・・」
帰ってきてから初めて口にした言葉は溜息で、頭を抱えたくなる。
何を考えているのだろうか。
自分は何をどうしたいのだろうか。
大佐に何を想い、何を望み、何をしたいのだろうか。

―それでもやっぱり・・・ずるい。

彼は、何でも手の平で転がしてしまうから。
平然として、何でもやってのけてしまうから。
空振りしてしまうのが、怖いのだ。

―聞いてみるべきか?いや、このまま・・・

彼の本心を掴むことなど、出来やしない。
それは未だ、誰も成し遂げたことが無い挑戦。
巧みな話術も、感情を読ませようとしない笑みも、誰も崩せはしない。
ただ一つ、自分達の知らない過去だけが、彼の表情を歪ませることが出来るのだ。
それでも止まろうとはしない、彼への想いが憎らしかった。
ジララが憎い。
それは、愛おしい人を痛めつけたからだ。
自分はゾルルを愛している。
ゾルルに恋をしている。
けれども今は・・・
人間らしい心と感情を取り戻した彼の、何所を憎んでいるのだろうか。
それを悟ったとき、とても恐ろしくなった。
自分も、彼と同じ道を走っているのかもしれない。
叶うことのない、終わってしまった、過去の恋。
今の恋を経て愛を得た後も付きまとう、あの人の美しさ。
今ならジララの気持ちも分かる気がした。
だからこそ、更に憎い。
大佐に触れることの出来る彼が、憎い。
自分は何を望んでいるのか。
認めないわけにはいかないだろう。

―触れたい・・・

柔らかそうな髪。
シャイニングブラウンのその髪は、きっと指通りも良いことだろう。
長い指。
絡ませれば、さぞかし妖艶な光景になることだろう。
白い首筋。
噛み付けば、赤い花が咲くだろうか。
細い腰。
強く強く、折れるまで抱き締めてみたい。
すらりとした足。
首筋よりも白くて、美しいのだろうか。
想像すればするほど、自分は欲深くなっていって。
気が付けば、驚くほどの時間が経っていた。

―触れたい・・・この手で・・・触れてみたい・・・

好奇心にも似た、狂気。
純粋な気持ちと混ざり合って、恐ろしく強大な想いとなる。

次の日も、いつものように軍へと仕事をしに行った。
休みなんて、無いにも等しい。
訓練も任務もしっかりとこなすが、休憩時間など、頭を掠めるのはやはり大佐のこと。
全ては、月夜に見た光景がいけなかった。
その日も、月が綺麗な夜だった。

「ガルル君、まだ仕事かい?」
執務室、背後はガラス張りのため、月が本当に綺麗に見える。
「月が・・・綺麗ですね。」
大佐の問いかけに答えるつもりなんて無い。
微笑んで、数歩彼へと近づく。
「その言葉、深い意味は無いんだよね。」
「えぇ。無いですよ。」
知っている。
地球には、かつてこんな口説き文句があったそうだ。
別に深い意味などは無い。
それは本当だ。
けれども、今からそれに等しいことを言うつもりで、ここに来た。
「今日も貴方がいるかと思いまして。」
「おや、僕に用事?」
「えぇ。私事ですがね。」
大佐はにっこりと笑う。
こんな笑い方をするとき、彼は全てを悟っている。
「昨日、私が来たとき・・・ジララと、何があったんですか?」
自分には関係が無いと言われればそれまでだ。
けれども確信があった。
彼は、そうやって自分を突き放しはしない。
残酷なほどに、優しいから。
「スキンシップ。」
「貴方の表情だけを見ていれば、そうともとれたでしょうね。」
ジララのあの瞳さえ見ていなければ。
「君はそれを聞いて、どうするつもりなんだい?」
「気になったんです。」
「好奇心なら止めておいたほうが良い。君は真面目だから、気に病むよ。」
「もぅ大分病みましたから。今更ですよ。」
その言葉に、大佐は一瞬目を丸くした。
そして、笑う。
「君らしくも無い。」
「えぇ。私らしくもありません。でも仕方ないでしょう。」
仕方ない。
どうしようもないのだ。
もぅ自分では収拾がつかないところまできてしまった。
この手が、腕が、身体が、貴方を手に入れたいと疼くのだ。
「貴方があんなふうに笑わなければ。」
それは、逆恨みにも近い。
「誰にでも優しくなければ、私だって、こんなに取り乱しはしなかった。」
ズキズキと、心が痛んだ。
どうしていいのか判らない。
こんなに近くに居るのに、手を伸ばせない。
瞳を真っ直ぐに見つめることすら、ままならない。
可笑しな話だ。
ジララとの力の差を、関係の強さの差を、感じざるを得なかった。
「ガルル君。」
「何なんですか。貴方は、誰が好きで、誰を愛していて、誰を大切に思っていて・・・」
混乱すればするほど、憎しみも恨みも愛情も募って。
ぐちゃぐちゃの思考回路に、危うく大佐の首を絞めてしまいそうになる。
触れることも出来ない自分に、そんな事は出来はしないだろう。
それでも、恐ろしくて仕方が無かった。
「ねぇ、ガルル君。聞いて。」
一歩。
大佐から歩み寄られ、鼓動が早くなる。
衝動が抑えられなくなりそうになる。
「答えて。」
「・・・はい。」
「ガルル君は、僕の存在が迷惑かい?」
こんなに混乱して、頭が痛くて、心が苦しくて。
それでも、誰が迷惑だなんて思っただろうか。
「いえ。」
「憎い?」
憎い。
とても憎い。
自分の硬派な頭を、どうにかしてしまうのだから。
「いいえ・・・いいえ・・・貴方は変わらず、私の大切な人です。」
大切で、大切で。
「守るべき義務も、使命もある。けれど・・・今はそれ以上の気持があります。愛おしい、と、そう思うんです。」
それが苦しくて、どうしようもない。
押さえ込みたくても、押さえ込むことが出来ない。
欲望が尽きない。
「ジララを思いやって行動をとる貴方を、恨みたくもなる。これはジララに対しての嫌悪感からくるものだと思い込んでいました。でも、違ったんです。」
違った。
全然、違ったのだ。
全く検討外れのところからやってきた事実に、頭が追いつかなかった。
「もちろん私にはゾルルという最高のパートナーがいる。貴方にもシャイン先輩がいる。それでも貴方はジララに対して、あれほどの慈愛の念を注ぐことが出来る。そこに、微かな可能性を見い出してしまったんです。」
優しげな微笑。
触れることを許された、彼への嫉妬が大きくなった。
「貴方に・・・愛してもらうことも出来るのだ、と・・・」
大佐は、瞳を閉じた。
考え込むような、受け入れるような、拒絶するような・・・
そのどれとも取れるような表情で、この告白を聞いていた。
そんな大佐の滑らかな肌に、目が釘付けになる。
自分が嫌になって、振り切るように目を背けた。
「違うのなら、私が勘違いしているのなら、そう言って否定してください。」
すると、大佐は目を開いた。
「私はきっと、それを望んでいるんです。微かな希望・・・この場合、ただの身勝手な欲望ですが、それを分かっていながらも尚、貴方に近づく自分に、キッパリと言い切ってしまいたいんです。自分勝手に貴方を苦しめるくらいなら、希望なんて断ち切ってしまった方がいい。そうでないと私は・・・いつか貴方の日常を壊してしまうような、そんな気がするんです。」
怖い。
大切な人だからこそ、怖い。
好きになるとか、愛するとか、それ以前に、大切に思っていたから。
「貴方は上司で、互いに好きな相手がいる。それは分かっています。」
諦めたい。
諦めきれない。
傍にいたい。
ずっとずっと・・・
「諦めるとか、そういう以前の問題なんです。これは。早くなんとかしないと、私が貴方の想いを拒絶した意味がない。貴方に冷たい態度をとった意味がないんです。」
出会ったばかりの頃、彼に好きだと言われたとき、自分はその気持ちを拒絶した。
ゾルルが誰よりも愛おしくて、守りたいと思うその気持ちが、理性となっていた。
「ジララに注がれている愛情も、シャイン先輩に注がれている愛情も、私には同じに見えるんです。」
その言葉には、大佐も口を開いた。
恐らく、否定の言葉を述べようとしたのだろう。
けれどもそれよりも早く、自分は小さな想いを口にした。
「同じほどに、羨ましいんです。」
大佐は、何も言えない様だった。
いや、何を言おうか迷っていた。
そんな困惑した様子に、ふと自分自身が戻ってきたような気がした。
「あぁ、何を言っているんでしょうね。これでは求めているのか拒絶しているのか分からない・・・実際、私もよく分からないんです。どうして貴方にこんなことを言ってしまったのか。どうして今まで通りではいけないのか。」
何故今まで通り、苦笑していることが出来なかったのか。
いつものことと、受け流すことが出来なかったのか。
自分から日常を壊すようなことをしてしまっているのか。
「ただ、ゾルルを悲しませるだけのようにも思える。・・・私は、最低です。」
昨日小隊へと帰ってきたとき、何も言わずに自室へと篭った自分を、ゾルルはそっとしておいてくれた。
今朝はいつものように朝食を用意してくれて、出かける前にも心配そうな瞳を向けてくれた。
それなのに、どうして自分はあいつのことを考えてあげられなかったのだろう。
どうして、大佐のことばかりが頭から離れなかったのだろう。
今もそうだ。
どうして、目の前の人物しか見ることが出来ないのだろう。
「大佐・・・貴方は優しい。だからこそ、甘えてしまいそうになる。」
大佐は黙って聞いていた。
冷静な目で、ジッとこちらをみつめていた。
「本当に貴方が優しいのなら、キッパリと言って下さい。それが今の私にとって、一番の優しさなんです。」
懇願するような、愚かしい、哀れな声で。
本当に、自分が情けなかった。
それでも、それを願う。
これ以上、貴方を困らせたくは無い。
ゾルルを悲しませたくは無い、と。
「今、この瞬間の言葉を遮って、くだらないと一蹴して下さい。未練もなくなるほどに、冷たく。」
黙って聞いていた大佐は、言葉を遮るようなことはしなかった。
話が一段落ついたのだとわかったその数秒後に、ゆっくりと口を開く。
「それで、君は満足するのかい?」
第一声が、それだった。
厳しい目で、真っ直ぐ正面だけを見据える。
「私はそんなにお人好しじゃない。君の望まない事だってキッパリ言うし、ある意味での絶望だって与えてみせる。」
本当に、それは絶望的だった。
ただし大佐は、別に意地悪をしているわけではないと知っていたから。
悲しそうな次の言葉に、しっかりと大佐を見つめ返すことにした。
「それは私の自由だから。」
自由を与えられることの無かった生活の中で、唯一の自由は思考。
考え、理解し、知識を得、言葉を紡ぐこと。
「愛とか、恋とか、そういうことはあんまり好きじゃない。だから出来る事なら、いつもみたいにごまかしてしまいたいんだけどね。それは流石にキツ過ぎるでしょ?あ、こういうのがお人好しなのか。なら、私はただの天邪鬼だね。」
クスリと笑った大佐に、また苦しくなる。
その笑みを、唇を、奪ってしまいたくなる。
拳を強く握って、理性を保つことだけに集中した。
「一つ、はっきりと言わせてもらうよ。君のこと、気に入っているんだ。」
その言葉に、眉をひそめる。
大佐は笑ってはいなかった。
とても、真剣だった。
「嫌いじゃない。どちらかと聞かれれば、好きだとも言える。ねぇ、それは君にとって苦しいのかい?」
応えることが出来なかった。
「私は君に守られているように思えるんだけどね。それに対して少しでも、好感を得てはいけないのかい?それこそ君のエゴだ。私の気持を無視した、ただのわがままだよ。」
知っている。分かっている。
百も承知だ。
それでも、それでも、苦しくて、苦しくて、愛おしくて、美しくて・・・
「私だってそこまで無責任ではないさ。自分が言った言葉くらい覚えてる。君に、好きだって言ったじゃないか。」
その言葉を覚えていたこと自体に、驚いた。
そして、それが真剣な話だったのだという事に。
てっきり、新入りだった自分へのただのスキンシップだと思っていたのだ。
「それはどういう意味ですか?困ります。」
「それはむしろ、私が聞きたいね。君は私に見放してほしいのかい?それとも、今まで通りに接していてほしいのかい?全てを告白して、それで、私に何を望んでいるんだい?言ってよ。その通りにするから。ただし、考えてみたの?」
首をかしげれば、溜息をつかれた。
「君が言っている言葉が、ゾルル君を裏切る言葉だって事。」
ハッとする。
もちろん、考えていなかったわけが無い。
けれども、少しだけ、この状況に霞んではいた。
「考えなしのろくでなしと会話を続けるつもりはないけどね。ただ、君は違うでしょう?私が望んでいるのは、それだよ。」
「・・・」
大佐は微笑む。
そして、もう一歩、近づいた。
「君が今まで通りの君で、周りの人間がこの世界の主役でいるっていう、その現実だよ。君が好きだ。でもそれは、恋とは違う。君もそうなんでしょ?だったらどうして、私に拒絶を求めるんだい?私だってそうなのに。何人もの人に、そんな愛情を向けて来たのに。」
貴方は違う。
自分よりももっと、純粋な動機を抱いている。
けれども自分は・・・
首を横に振って、その言葉の代わりとした。
「君は私を神聖視するつもりかい?崇めるつもりかい?違うでしょう?身体を求められるよりもずっとめんどくさい。君がその気持を欲望のためだと思うなら、無理矢理にでも抱けばいい。」
不覚にも、驚いてしまった。
大佐は、別に構わないなどと言ってこちらを見ている。
そんなことを言われてしまったら、本当に自分は目の前の相手を押し倒してしまうかもしれないというのに。
けれども不思議と、そう言われれば言われるほどに、理性はその力を増していった。
手を出さない自分の様子に、大佐は苦笑した。
「でも違う。君はそんなこと望んでいない。今まで通りの君だ。」
そう言われて、脱力してしまった。
安心して、嬉しかった。
「過保護で、無駄にさえ思える忠誠心を向けてくる、君だ。」
溜息をついた。
ここまで張ってきた何本もの糸が、次々と緩んでいった。
「ゾルルがいてくれて良かった。アイツが未だに、私のブレーキになってくれる。」
大佐は頷いた。
彼はいい子だ。
君は強い人だ。
と。
「貴方が考えているほど、私は純粋ではありません。それこそ貴方は、私を見くびっているんですよ?」
けれども未だ留まるところを知らない欲望に、自分は大佐を見上げた。
「今この瞬間に、私は貴方を壊す事だって出来るんです。それをしないのは、ゾルルのおかげですから。」
「うん。だから君は僕を壊せないでしょう?ゾルル君は、今この瞬間に存在しているんだから。」
これは弱みを握られた。
そう思った。
「そうだ。」
ポンと手を打った大佐に、何事かと呆ける。
そして、次の言葉に盛大に顔を赤くしてしまった。
「抱いてみる?」
僕を。と付け加えた大佐に、赤くなったり青くなったり。
その表情が面白かったのか、クスクスと笑いながら、彼は自分の手を握った。
「な、な、何を言っているんですか・・・!!今さっき、警告したばかりですよ!?」
「うん。いいよ?別に。君は暴走しないだろうから。ジララもそうだけど、多分、途中で我に返ると思う。」
「思う、って・・・」
「大丈夫。信じてるからさ。いいよ。ガルル君なら。」
その言葉は魅力的過ぎて。
握られた手が熱くて、頬も、身体も、何もかもが熱くて、熱を帯びていた。
大佐は、可愛らしく微笑んで密着してきた。
「あ・・・」
その瞬間からだろう。
自分の理性が吹っ飛んだのは。
握られた手とは逆の手で、その細い腰を引き寄せる。
思ったとおりの細さ。
本気を出して抱き締めれば、折れてしまうのではないかとすら思った。
勢いに任せて唇を合わせ、次第に深く、濃密なものにしていく。
許されがたい行為。
だからこそ、とても甘美なものだった。
握られた手をこちらから絡め、細い指の長さを、形をなぞって、確認していく。
「んっ・・・」
強張った身体に、指の間がクリーンヒットだったことを知る。
指も舌も、更に複雑に絡めていく。
そうすれば、自然と大佐の口からは熱い吐息が漏れた。
「はぁっ・・・んっ・・・」
通常よりも少ない酸素の摂取量に、顔がほのかに赤くなる。
それもまた、自分の欲を煽って・・・
唇を離せば、赤い舌がちろりと見えた。
「指、苦手ですか?」
そう問いながら、耳元へと口を寄せる。
ビクリとした様子に、むしろこちらが赤くなってしまう。
「耳もなんですね。」
舌を沿わせれば、甘い声を出して身を捩った。
そんな一つ一つの動作が可愛くて、あぁ、どうにかなってしまいそうだと、
馬鹿なことを思いながら、首筋に噛み付いた。
「っ・・・!!」
ガブリと、噛み付いた首筋にはもちろん形の良い歯型が残って。
「意外と君って・・・っ、鬼畜だね・・・」
ジララだって噛みはしなかったよ、なんて、そんなことを言うものだから。
「抑えきれないときだってありますよ・・・あなたがあんまりそそることをするものですから。」
意地悪なことを言って、次々とキスの雨を降らせた。
その間、指は絡ませたまま。
身体は引き寄せたままで、心地よい束縛を強いる。
大佐は困ったように微笑んで、それでも、嫌がる様子など微塵も見せなかった。
そうだ、この微笑だ。
この笑みが、ジララにも向けられ、自分を嫉妬させたのだ。
今、同じ笑みと愛情を受けて、自分はどうするのだろう。
事態の収拾を、どうつけるつもりなのだろう。
「大佐・・・」
「んっ」
彼の階級を呼ぶ。
そういえば、名前を知らない。
こんなに不確かな愛情があっていいのだろうか。
ゾルルには、もっとしっかりとした証拠があった。
互いの間には絆があった。
少し不安になって、大佐の髪を梳く。
軟らかな髪質は、自分を安心させて・・・それでも何か、物足りなかった。
「物足りない?」
「!!」
大佐は知的な瞳で、自分を見ていた。
悪戯っぽく笑っているのに、どうしてだか、悲しかった。
「・・・すみません・・・」
「そういうものだよ。だから言ったでしょう?ちょっとしたことで、我に返るものだよ。」
そういうものだろうか。
そんなに自分勝手で、いいのだろうか。
大佐は、物憂げな瞳で束縛されていた。
自分はまだ、彼を離せないでいる。
「いいんだ。君がゾルル君だけを好きでいることは知ってるから。」
悲しそうに見えたのは、自分の妄想だろうか。
辛そうに見えたのは、被害妄想だろうか。
安心しているように見えたのは、願望なのだろうか。
そのときの大佐の表情が、あまりにも複雑だったものだから。
「苦しいよ。ガルル君。」
わけも分からず、自分は彼を強く抱き締めたのだ。
強く、強く、折れてしまうのではないかなんて思いながら。
その間、大佐は自分の髪をそっと撫でていた。
彼の自分への愛情は、こんなところで注がれている。
何かもったいないような気さえしたのに、自分はもぅ、彼を喰らうことも出来なくて。
ただひたすらに、優しい彼に甘えていた。

「また、おいで。」

拒むことをしない彼だから、
きっと自分はまたこの部屋に来て、
いつものようにゆるい日々を送って、

彼を愛するのだろう。

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