小指ほどの鉛筆

日記が主になってきた小説ブログサイト。ケロロ二次創作が多数あります。今は創作とars寄り。

誰かが消えて得をする人間なんて。

2009年06月09日 20時36分52秒 | ☆Weblog

鬱?愚痴?随筆(←)?

あまりいい気持ちにはなれないので、注意。

見たくない方は、画面横のバーを下まで下ろして、そこからはじめよう。
中途半端なところで止めちゃうと、うっかり文章読めちゃうからね!
注意です。
申し訳ないです。



限りなく独り言に近い嘆き。






































































誰かが消えて得をする人間が一人でもいるなら、この世界は腐ってる。

まぁ、もぅ殆ど腐りきっているのだけれど。

人をいちいち嫌っていたら、キリなんて無いんですよ。
自分自身に降りかかった不幸なんて、それこそ覚えてもいないけれども。
それよりもずっと、人の不幸の方が多く覚えている。
近くに不幸な人がいれば助けたいとは思うけれども、方法が間違っていればどちらも加害者。
正しい方法なんて知らないけれど。

なんだか言い訳しかしてないな。

なんというか・・・私がこんなことを言うのも何なのですが、
我慢をして耐えられる問題なら、耐えて欲しい。
直して欲しいところをはっきり言えるのなら、言ってあげて欲しい。
自分の何が悪くて嫌われてしまったのかわからないんじゃ、あまりにも可哀想すぎる。
もしもその理由が理不尽なものや、どうしようもないものなら、それはもぅただの差別だと思う。
もしも相手の非を告げて嫌な態度を取られたのなら、そのときにその人を嫌えばいい。
相手に理解させずに自分ばかりが憎しみを募らせるのは、その方が理不尽だ。
ましてや今まで仲良く振舞っていた人が対象だとしたなら、それは卑怯だと思う。
友達として振舞うことで秩序が保たれるなら、もう少し相手を許容することは出来なかったのか、
もしくは、もっと気持ちが軽いときに相手の非を告げてあげることは出来なかったのか、

私はその子のことをあまり知らないから言えるのかもしれない。
近くにいないから平気なのかもしれない。
でも、やっぱり、一時期だけでも友達だったのなら、やっぱりその仲を険悪なものにはしたくないと思う。
なんだか私がこんなこと考えるのも可笑しな話ですけどね。
アイス食べながら考えることではないですけどね。

思っても、口に出しちゃいけないことって沢山あると思うんです。
もちろんそうやって溜め込んで、ストレスにしてしまう子だっている。
でも、それとこれはとは話が違う。
誰かに打ち明けるのと、言いふらすのとでは話が違う。
極端な話、どうしても嫌いなら、いっそ一人で避ければいい。
そうしているなら、むしろその子に同情できる。
他の人を巻き込まずに行動してくれるその子に、付いてきてくれる子がいる。
でも、違う。
人は一人で生きていく覚悟が持てるほど強くは無いのかもしれない。
だから、誰かを引き込もうとするのかもしれない。
誰かに分かってもらいたいと思うのかもしれない。
理解はする。
同情もする。
でも、どうしても、最近の周りの行動が嫌でたまらない。

大半の子が私のブログを知っているから、ここに書くけれども。
上に「注意」も書いたけれども、うっかり読んでしまった方には申し訳ないです。

相手の悪いところを、一番、二番、に告げるべきなのは、その相手じゃないのかな?
何人もの人がその子の悪口を言い始めてる。
最初から嫌いだったかもしれない。でも、我慢できていたはずの子だって、爆発したようにその子を貶す。
その子を嫌っていない子もいる。
なのに、その子の近くで悪口で騒ぎ出す。
本当に、やめてください。
本気で泣きたくなる。
私は別にその子のことが嫌いじゃないんだ。
なんにも分からないし、ちょっと冷たくされたのも、ちょっとした冗談程度に受け取れてしまう。
それはもぅ、今でも続いているとある友人の所為なのだけど。
そういう免疫はるんだ。
傷つけられるのも、貶されるのもある程度は慣れてるんだ。
だけど、こういうのは耐えられない。
どうしても言いたいのなら、言いたい人達だけで集まってください。
悪いけれども、私は付き合いきれない。
その会話が耳に入るのも耐えられない。
人を貶して笑えるほど、神経が太くない。
私が笑ってそれで場が和むなら、何度でも笑うけれど。

偽善者?

そうかもしれない。

でも、偽ってでも善として生きたいと思うのは、悪いことじゃないでしょう?

今の苦しみなんかよりはずっと、身体の痛みのほうが耐え易い。
いつかはふさがる傷口なんて、なんて軽い代償だろう。
ダメだ、書かずにはいられない。
机に向かって一人になると、気が緩んで泣いてしまいそうになる。
弱い私。
弱い心。
弱すぎる。
今は姉と母がいる。
泣くわけにはいかない。

誰にも迷惑をかけないで、そっと生きていけたら良いのに。
宮沢賢治の本でも読もうか。
あの人の物語は、凄く綺麗だから。

→Girl?⑤ (にょたいさ総受け)

2009年06月09日 19時12分27秒 | ☆小説倉庫(↓達)
―ハンプティ・ダンプティは、誰だと思う?


大佐が少年達と共に本を開いてから、30分が経っていた。
長いと言われれば長い。
けれども、どうやら彼等は長らく飽きが来ないようだった。
「これは、どういう意味でありますか?」
「次のお話も読んで!」
「そしたら・・・これも。」
疑問も要望も尽きない子供達に、大佐は正直言って疲れていた。
実を言えば仕事も溜まっている。
それなのに彼等の相手を買って出たのはどうしてか。
それはもちろん、彼等が求めたからだ。
「大佐はお話を読むのが上手であります!」
「ありがとう。」
嬉しそうな顔も、楽しそうな声も、子供らしくて好きだった。
別に子供が好きなわけではない。
どちらかと言えば、苦手な方なのだ。
自分が同年代の子供と接して生きてこなかったからか、それとも、心のどこかでその成長を嫌悪しているからなのか。
それは分からないけれども。
ただ、純真無垢な笑顔を向けてくるときも、無邪気な声を上げるときも、彼等に罪などないだろうから。
自分はその存在を拒めずにいるのだ。
けれどもきっと、それだけではないだろう。
ステラというこの子の存在は、自分の中の何かを変えようとしている。
母性本能にもきっと近い。
けれどももっともっと、原点に近い何か。
それが今、動き始めているのだ。
「ママ!早く次ー!」
「はいはい、今読むよ。」
男の子だというのに、読書ばかりが好きな彼等に少しだけ同情する。
ガルルが言っていた推測も、あながち間違いではない。
どうやら感情というものは、人間が推し量ることが出来るほどに安易なものらしい。
同時に否定できるほど、容易なものでもあるが。
大佐はその白くて長い指で本のページを捲りながら、言葉を紡いだ。
少年達にその意味が分かるかどうかは定かではない。
後に分かりやすいように要約するのだが。
「はんぷてぃ・・・だんぷ、てぃ?」
「そう。ハンプティ・ダンプティ。」
どうやら彼等は、言葉のリズムと流れ、そしてテンポが好きなようだった。
口ずさみやすいフレーズは、この年頃に読んでおくと大人になっても忘れないものだ。
「ハンプティ・ダンプティは誰だと思う?」
笑いながら大佐は問うた。
自分はこれを読んだとき、実に愉快だった。
自分の知らないことについて、誰かが誘導してくれているような・・・
そんな、幻想じみた遊び。
謎かけとは、いやはや愉快なものだ。
「我輩達の知っている人でありますか?」
「さぁ、どうだろうね。」
クスクスと笑うと、意地悪だと拗ねられた。
そんな様子も可愛らしい。
「次を読もうか。これは宿題ね。」
「「えー。」」
だって、それが分かってしまったら面白くないから。
沢山の意見と、推測と、想像が生み出す物語を聞いてみたい。
それは自分にとっての御伽噺。
未だ知らない、新しい知識となる。
大佐は再びページへと指を滑らせた。
白くて長い指は、男のときとさほど変わりは無いように見える。
けれども幼いあの時よりは、ずっと大きくなった。
あの時よりもしっかりと文字を書けるようになったし、指は長く、すらりと伸びている。
「続きを読むよ。」
けれども、ページを捲るその仕草だけ。
たったそれだけは昔と何も変わっておらず、そのことに激しく絶望した。

「楽しかったであります!!」
「ありがとう・・・」
結局、あれから読んだ本の数は3冊。
途中から大質問会になってしまったりもしたが、それはそれで楽しかった。
何も知らない子供達は、自分の頭の中で新しい物を作り出す。
大人はそれを、夢だの戯言だのと言う。
けれども、そうではないことを自分は知っている。
地球人に、こんなことを言った人がいた。
『無知の知』と。
どんな意味だかは聞いた事が無いが、恐らく自分の考えている意味でいいのだろう。
全ての知恵は、無知から始まる。
知らないからこそ、新しい何かを知るのだ。
全ては白から始まる。
そこに何を描くも、筆をとった画家の思い通り。
それが夢だか戯言だかは、他人が判断するものではない。
自分にとってそれが芸術ならば、たとえそれが一本の線だとしても、価値があるものなのだ。
同じこと。
たとえ大人がその想像をただの妄想だと思ったとしても、少年達にとっては一つの世界を垣間見たのと同じこと。
新しい世界を知ったのと、同じことなのだ。
自分はそれを大切にして欲しいと思う。
小さな生命には、無限の可能性があるのだ。
生まれ持った特質やら性格やらを別にしたとしても、その可能性は何所までも広がっている。
彼等には、その可能性を無駄にはして欲しくない。
どこまでもどこまでも、枝を広げ、葉を輝かせて欲しい。
妨げる物なんてない。
枝を手折るものもいない。
自分がそれを許しはしない。
彼等にとっての、なんという楽園!
自分は、それを望み、守りたいと思っているのだ。
「お疲れ様だな、大佐。」
子供達の頭を撫でている間にソファーへやってきたのは、今までボーっと突っ立っていた男3人。
大佐は微笑を返す。
何もしていない彼等だが、それを責めるつもりは無い。
ただそこに居て、見守っていてくれるだけで嬉しいから。
「隊長、楽しかったですか?」
「ガルルも、大佐に本を読んでもらうと良いであります!!」
とても嬉しそうなCケロロに、ガルルは優しく微笑んだ。
彼は自分がケロロ軍曹のコピーだということを知っている。
知っていても尚、ここまで明るいのは何故か。
それはやはり、少しの無理もあるのだ。
「良かったですね。」
そんな無理をしているのが辛くなったとき、彼は大佐の元へとやってくる。
大佐は、Cケロロをとても可愛がっている。
執務室へ入るのに、許可をとらせるようなこともしない。
Cケロロが大佐に会うためならば、軟禁状態も無条件で解除させる。
一緒に居るマッシュにしてもそうだ。
自我を持たせてしまったら、それは既に兵器ではない。
一人の子供として、Cケロロと同じように可愛がってた。
そんな大佐の優しさが、ガルルにとっても嬉しかった。
「ガルルは、ゾルルと大佐のどっちが好きなんでありますか?」
「・・・はい?」
そんな感傷に浸っていると、突然Cケロロが首をかしげてきた。
「ガルルがお父さんで、ゾルルがお母さんでありますから・・・大佐は、ガルルの何なんでありますか?」
「え・・・と、隊長、大佐は大佐であって、別に私とどうだとかいうのは・・・」
「家族じゃないでありますか?」
その言葉に、ガルルはそれ以上の声を発することが出来なかった。
困ってしまったガルルを、大佐は笑う。
そんな笑い顔にさえ見とれてしまって、ガルルは頬を染めた。
「おいおい、大佐は俺の嫁なんだぞー。」
ガルルの肩をトンと突き、シャインが苦笑する。
そんなことは分かっているのだと、ガルルはムッとした。
ただ、彼があまりにも美しくて、しかもこんなに子供がいるものだから。
少し照れてしまっただけだ。
「ママ!」
ステラは、これは自分の母親なのだと主張するように大佐にしがみつく。
その頭を撫でながら、大佐は溜息をついた。
なんとも忙しい日々だ。
忙しないというか、落ち着きが無いというか。
それは日常であると共に、楽しいイベントではあるけれども。
どうもいつもと違う自分に、付いていけない部分があるのも事実だった。
「ママ・・・?」
マッシュは、言葉の意味が分からないとでもいうように大佐を見上げた。
彼にとっては、ケロロ軍曹が父親であり母親だったのだ。
男親なら父。女親なら母。その認識が、まだなかった。
「ママっていうのはね、パパと結婚した、君のお世話をしてくれる人だよ。」
こんなに小さいのに、結婚の意味は知っているのだから、不思議なものだ。
誰の教育が問題なのだろうか。
「んー・・・お世話してくれるの、大佐。」
「あらら。」
どうやら、自分は彼等にとっての保護者的存在らしい。
そう分かるや否や、大佐はこれからこれから起こるだろうちょっとした騒乱に頭を抱えた。
「でも・・・パパと結婚してないの。大佐、ママになれないの?」
なれないもなにも、自分は本来男であるべき人間なのだ。
普通ならばありえない状況。
これが以前なら、おじさん程度の扱いだっただろうに。
「ステラのママ!」
「でも・・・」
「我輩のママは、ゾルルだけじゃないんでありまーす!」
ギャーギャーと騒ぎ出した子供達に、男3人はキョトンとする。
最も、一番混乱しているのはガルルなのだろうが。
「大佐、どうします・・・?」
「どうするも何もねぇ・・・」
下手なことを言って、ステラが泣いてしまうのは困る。
Cケロロが不機嫌になるのも恐ろしいし、マッシュが地球に飛んでいってしまうようなことがあるのもまずい。
とは言えども、彼等には母親などいないのだ。
本当のことを言えば傷つける。
嘘やごまかしなど、その場限りだ。
どうするべきかと悩んでいると、おもむろにシャインが口を開いた。
「なぁ、チビさん達。」
チビさんというのは、子供達のことなのだろう。
シャインは彼等の背丈までしゃがみこむと、困ったように笑った。
その笑みに、子供達は一旦口を閉じる。
シャインの困った様子を察したのだろう。
こういう点、子供というのは恐ろしく洞察力が働くというのは、既に周知の事実だ。
「大佐は、皆に優しいんだぞ。そんな風に喧嘩してたら、大佐困っちゃうだろ?」
優しく、諭す様に喋りかける。
「優しくしてくれてんのに、そんなことしてていいのか?」
子供達は、そっと大佐の顔を見上げた。
大佐は困り顔で応じる。
「うぅ・・・」
シャインはしょぼんとしてしまったステラの頭を優しく撫でた。
そして、気まずそうな表情をしているCケロロの肩を叩いて元気付ける。
子供の扱いがとても上手いお父さんに、大佐は驚きと共に赤面した。
「友達と喧嘩しても、楽しくないだろう。」
不意に、ジララが口を挟む。
そして小さく丸まっていたマッシュを抱き上げた。
「どうだ?」
「楽しく・・・ないであります。」
Cケロロは、ジララの腕の中で泣きそうになっているマッシュを見て項垂れた。
ステラも、ごめんなさいと頭を下げる。
そんな子供達の様子に、シャインもジララも微笑んだ。
「意外だね・・・ジララがそんなこと言うなんて。」
最初と同じように、仲良しに戻った子供達を見つめて大佐は呟く。
ガルルは混乱状態から回復して、今は腕を組んで仁王立ちしている。
「いや、ただベタなことを言ってみただけだ。効果があったなら、言ってみるものだな。」
そっぽを向いたジララに笑いかけて、大佐はソファーに腰掛けた。
こういうことがあるから、母親というものは気が抜けない。
危険が無いか、問題を起こしていないか、いつだって緊張の糸を張っていなくてはいけないから。
それもこれも、愛情があるから。
そう自覚すればするほど、大佐はジララの言葉が気になった。
家族ごっこ。シャインの子供を作ってやれば良い、と。
そう言った彼の目は、冗談を言ってはいなかった。
今の自分を見つめた上で、彼はそう言ったのだ。
確かに、それが出来たらどんなに幸せになることだろう。
彼に愛情があるならば、きっとそれも可能だ。
けれども、やはりそれは許されないことだということも分かっている。
悲しいや虚しいというよりも、少しの悔しさに苛立った。
「全く、大変なことだな。母親というのは。」
「だね。女性って大変。」
そっと横に立ったジララと、視線を交わすことなく会話する。
目を見ると、何故だか騙し合いを始めてしまうのだ。
全く、不器用な人間同士が向かい合うとろくな事が無い。
「女だというだけじゃない。お前だから、なんだろうな。恐らく。」
「・・・そう思う?」
「あぁ。お前だから、あいつ等と俺達がどたばたを起こすんだろう。お前じゃなければ、俺はここにいない。」
それは、一つの告白にも近かった。
ただしそれも戯言。
彼にはカゲゲがいて、もしも天秤にかけるようなことがあったなら、確実に大佐は浮き上がってしまうことだろう。
「僕だから、か。」
不思議なことだ。
奇跡のように現れた子供と、兵器たちと、自分はこうして遊んでいるのだから。
帰りを待つ恋人がいる男達と、談笑しているのだから。
自分とはいったいなんなのか。
そこまで考えるのは大げさかもしれないが、やはり自分という存在が不思議でならなかった。
「俺は、お前とシャインが望んだから、コイツがここにいるんだと思うぞ。」
唐突にジララがそんなことを言うものだから、大佐は反応が遅れてしまった。
「俺に言われて、少なからずお前は思ったはずだろう。アイツとの子供もいいかもしれないとな。願いも望みも、叶わないものじゃない。叶えたいと思うものだ。叶えたいものが叶えられないものだとは限らないだろう。叶う願いだってあるはずだ。お前の願いが叶ったところで、不思議でもなんでもない。最も、強く望んだのはシャインのほうかもしれないがな。」
それは大佐にとって魅力的な言葉であり、不可解な言葉でもあった。
意味は分かる。理屈も分かった。
けれども、現実離れした憶測ではないだろうか。
いや、そもそもの状況が既に普通ではないのだから、現実離れなど今更気にはしないが。
それにしても、だ。
「ジララ、本気でそう思ってるの?」
「あくまでも俺がそう思っただけだ。聞かなかったとことにしてくれても構わないぞ。」
別に、ジララの言う事が馬鹿げているなどとは思わなかったのだ。
むしろそうなのかもしれないとさえ思った。
「大佐ー!我輩たち、帰るであります!ステラ、また遊ぶでありますよ!」
「本読んでくれて、ありがとう・・・」
Cケロロ達は、ガルルに見送られて部屋を出て行った。
読み聞かせをしてもらい、喧嘩をして、眠くなったのだろう。
ステラも、シャインの腕の中でこっくりとしていた。
優しい面持ちでステラの髪を梳くシャインに、大佐は目が釘付けになる。
理想的な父親で、子供は可愛くて、自分は彼が好きで、それなのに幸せにはなれないという事実。
だって自分達は・・・
「星に願ってみろ。」
「え?」
隣で、ジララがそっと耳打ちした。
「ステラ(星)は、夜空から降ってくるものだろう?」
そんな言葉遊びじみた理由ではあったが、やはりジララの目つきは真剣で。
不思議なほどに、信用に値した。
「月ならもう出ている。」
それだけ言うと、ジララは一方後ろへと下がった。
ガルルが訝しげな目で見ていたが、そんなのはよくあることだ。
大佐は意を決して、シャインに問いかける。
「ねぇ、ステラのこと、育てたい?」
にっこりと問う。
いつも通りに。まるで冗談のように。
シャインも、いつも通りの笑顔だった。
けれどもきっぱりと、シャインは首を横に振る。
「無理だろ。育てたい・・・けどさ。」
その答えに、ガルルは少し驚いたようだった。
けれども、大佐はホッと胸を撫で下ろした。
自分達は軍人だ。
子供を育てるなんて、そんな罪深いことは出来ない。
窓の外、まだ白い月に向かって、大佐は願った。
感謝も謝罪も、この子の幸せも。
「何してるの?」
眠い目をこすったステラが、シャインの腕の中から問いかける。
この場の誰もが、自分の定めを呪った。
それは性別だったり、性質だったり。
「星を見ているんだよ。」
「どうして星を見るの?」
大佐は淡く微笑む。
冷酷なほどに、躊躇いなどない。
けれどもそれ故に、優しかった。
「星にお願いを叶えてもらうためだよ。」
「星に何をお願いしたの?」

「君が良い夢を見られますようにって。」

窓の外はまだそれほど暗くは無い。
夜にはまだ少し早い、闇の成り始めの空を見つめる。
そして、願った。
彼が幸せでありますように。
幸せであるために、
僕等から彼を奪い去ってくれますように、と。
「ステラ・・・ありがとう。」
その言葉の本当の意味は分からなかったことだろう。
けれどもステラが最後に見せた笑みは、自分達の幸せを心から望んでくれているかのような、可愛らしい笑みだった。
だから、思う。
これでいいのだと。

「消えてしまいましたね・・・」
ステラは夜空に吸い込まれるかのようにして消えてしまった。
その直後に輝いた星は一番星で、きっとどこかの惑星に飛んでいった彼が笑っているのだと、そう思った。
「夢みたいだな。でも、マジなんだよな。」
名残惜しくないのかと聞かれれば、名残惜しい。
だって、彼は自分を母親だと言ってくれていたのだから。
けれどもどう転んだとしても、自分は彼の母親にはなれないのだ。
だって彼は、自分自身。
遠い何処かから来た、幸せな一人の人間なのだから。
関わることなど出来ない。
それは自虐的な解決かもしれないが、事実そうなのだ。
自分がこれ以上関わってしまえば、何か大きなことが変わってしまう。
夢で首を絞めた自分自身と、現実で微笑んだ自分自身と、そしてここにいる自分。
何か大きなものが、歪んでしまう気がした。
「もっと遊んでやりたかったけどな。」
少しずつ闇を濃くしていく星空を、シャインは見上げた。
それに釣られる様にして、ジララも空を見上げる。
あれから増えた沢山の星々は、もはや最初に光り始めた星など気にも留めさせない。
けれども一番星は霞むことなく輝いているのだ。
それは確かで、何故だかとても愛おしい感情を抱かせた。
「ステラ、か。」
本当に星になってしまった彼は、いつか何処かでまた会うことになるだろうか。
母親の胎から生まれてくる?
夜空から降ってくる?
それとも・・・
「ハンプティ・ダンプティ。」
「は?」
大佐は呟いた。
「そういえば、答えを教えて上げられなかったなって。」
ハンプティ・ダンプティ。
彼等が読んでいた、『マザーグース』の中のなぞなぞの一つ。
地球の本というのは、とても面白い。
「Humpty Dumpty sat on a wall.
 Humpty Dumpty had a great fall.
 All the king's horses and all the king's men
 couldn't put Humpty together again.」
すらすらと、大佐は流れるように言葉を紡ぐ。
リズムの良いなぞなぞに、シャインもガルルも、ジララでさえもが聞き惚れた。
「地球で本来使われていた言語を使えば、こうなるね。」
言い終えると、大佐はくるりと振り向く。
女性である大佐の口から紡がれた言葉は、子守唄に聞こえた。
「ハンプティ・ダンプティが 塀の上
 ハンプティ・ダンプティが おっこちた
 王様の馬みんなと 王様の家来みんなでも
 ハンプティを元に 戻せなかった。」
今度は誰にでも分かる言葉で訳す。
「ハンプティ・ダンプティは誰だか分かる?」
首をかしげた大佐に、3人は考え込んだ。
人間によって、元に戻せない物。
それがなんだか考える。
「水、ですか?」
「うん、良い線いってるね。」
ガルルの答えは、大佐をある程度満足させた。
なるほど、そう来たか、と。
そう思えば、このなぞなぞの答えは今の技術をもってすれば何とかできないこともないのかもしれない。
「人間だな。」
「それだったら、自力で戻れるじゃないか。」
ジララは見当違いなことを言う。
いや、理由を聞けばそうでもないのだが。
「塀から落ちて、死んだんだろうな。」
それは確かに、元には戻れない。
誰の手を使っても、二度と彼が立ち上がることは無いのだから。
「なるほど。それなら、良い感じかもしれない。シャインは?」
様々な人の意見を聞いて、物語を聞きたい。
大佐にとっての、一番の娯楽。
「んーっと・・・トマト?」
「はい?」
「だからさ、トマト。」
何故トマトなのだ?
彼はトマトが好きだっただろうかなどと、こちらが見当違いなことを思ってしまう。
「潰れるじゃんか。」
「・・・あぁ、まぁ、ね。」
潰れる。
確かにそれは、元には戻せまい。
「もぅいいや。皆正解。」
そうか。
人によって、正解は異なるのだ。
沢山の答えがあって、一般的に答えとされるものは、あくまでも一般的でしかない。
そんな答えに縋ることしかできない自分は、なんとつまらない人間だろうか。
「なんですかそれ。」
「全部正解なのか?」
「本当はなんなんだ。」
尋ねてくる彼等に、大佐は笑う。
「卵。」
自分は、すぐに正解を導いてしまったけれど。
「なるほど。」
「トマトでいいじゃん。」
「硬いトマトもあるだろう。」
「硬い卵もあるぜ?」
討議を始めたジララとシャインを見て、大佐は目を細める。
こんな風に、沢山の可能性を導くことが出来たら・・・
そうしたら、なんて楽しいのだろうか。
「ステラは、なんて答えただろう。」
自分と同じ答えを導いた?
それとも彼等のような、面白い答えをくれた?
なんだかとても残念になって、俯いてしまった。
そんな大佐に、シャインは近づく。
「大佐。元気出せよー。」
彼が幸せなら、いいじゃないか。
それが自分達の幸せではないか。
そう決めたんだろう?と。
そう言って、励ました。
そんな優しくて強い言葉に、大佐は顔を上げる。
自分よりも大分高い場所にある顔を見上げて、微笑んだ。
「そうだね。」
彼が傍に居たことだけ、しっかりと覚えていて。
それ以外は、夏の夜の夢ということにしてしまおうか。
大佐はもう一度、しっかりと夜空を見上げた。
「Twinkle, twinkle, little star,
 How I wonder what you are!
 Up above the world so high,
 Like a diamond in the sky.
 Twinkle, twinkle, little star,
 How I wonder what you are! 」
あぁ、君は結局何者だったんだい?
僕を責めるための人形?
僕を愛するための使者?
知りはしないけれど、それでも、君は短い時を僕にくれた。
幸せになってほしいから、
手放したけれど。
「それは、どういう意味なんだ?」
訳を求めるジララに向かって、大佐は口を開いた。
その声は鈴の音のように美しく、可愛らしく、崇高だった。
「きらめく、きらめく、小さな星よ
 あなたは一体何者なの?
 世界の上空はるかかなた
 空のダイアモンドのように
 きらめく、きらめく、小さな星よ
 あなたは一体何者なの?」
彼が問えば、答えがかえってくるような気がした。
それほどまでにきっと、彼は宇宙に愛されている。
ガルルはそんな気がして、同時に、どうか彼まで星にはなってしまわないようにと、そっと願った。
もしかしたらステラは、大佐を愛した世界が作り出した、正真正銘の愛息子だったのかも知れない。

「あぁ!疲れたね!!」

いつもの笑みで、晴れ晴れとした彼の顔。
それが一番、輝いて見えた。

この嘆き、飲み込んでも尚…

2009年06月09日 17時35分17秒 | ☆Weblog
「全く人というのは、自分に都合の良い生き物だ。」
誰かがそう言っていた気がするぞ。
色んな意味で、色んな人に捧げたい。そして自分にも。

今日は骸の誕生日ですね(>∀<*)
友達と、駅の近くのケーキ屋さんでケーキを買ってきました。
私はただ単にケーキが食べたかっただけ。(笑
骸がチョコレート好きだということは、考慮に入れていない。←
次は誰を祝うかな。





美味しく頂きました^^
きの山さんとブラックサンダーとその他もろもろはまだ食べてないですが。
ケーキ美味いw