ゆき様 一周年記念 お祝い品
+―+―+―+―+―+―+―+―+―+
夜風は冷たく、
けれどもそれ故に、温かかった。
ビルの上、大きな月の下に浮かぶ、小さな二つの影。
この無限の宇宙においては、人間一人だって蟻一匹だって、皆等しく小さい。
「見事なものだな。」
高い高いビルに上ったって取れない、大きな大きな月。
カゲゲはそんな存在に手を伸ばしてみる。
届きそうで届かなくて、届くはずが無いことくらい分かっている。
ただ、今日は特別なのだ。
そうでなかったら、わざわざ夜中に外へ出るようなことはしない。
カゲゲは少しはにかみながら、隣で座り込んでいる影を見た。
「まさか来てくれるとは思っていなかった。」
「気が向いた。それだけだ。」
隣の影、ジララは、それだけ言ってカゲゲを見た。
瞳は赤く、月の光を吸収して揺らめいていた。
「それでも、嬉しく思うぞ。」
「そうか。」
2人は月を見上げる。
首には2人を繋げるマフラー。
夜は冷え込むというのに、上着も着てこなかったジララにカゲゲが無理やり巻きつけたものだ。
最初は居心地悪そうにしていたジララも、今では慣れたもの。
隣にいるカゲゲを気にするでもなく、自然な表情で夜空を見上げている。
「何故俺を誘った。」
突然口を開いたかと思えば、そんなことを聞いてくるジララに、カゲゲは顔をしかめた。
「私の友人が、貴様しか居なかったからだ。」
「・・・そうか。」
それを聞いたジララの表情はが心なしか残念そうに見えて、カゲゲは思わず噴出した。
「フッ、冗談だ。」
「は?」
クスクスと笑えば、ジララは不機嫌そうに目を細める。
してやったり。といった感じだ。
「貴様と、見たかった。」
大きな大きな月を、高い高い場所で。
そしてその反対側に流れてくるだろう、星達を。
「星に願いをかけたこと、あるか?」
「ない。」
願いをかけるくらいなら、自分で叶える努力をする。
叶わない願いなら、願わない。
思えば可愛らしくない子供時代を送ったものだ。
気づいた頃から、何かを願うことなんて諦めていた。
「何か願ってみるといい。もしかしたら叶うかもしれないぞ。」
「・・・特にないな。」
「そうなのか?」
カゲゲは意外だといったように目を丸くした。
人には何かしら願い事があって、日々そのことに煩わされるものだと思っていた。
一つ願いが叶えば、また次の願いが浮かぶ。
人とはそういった欲深い生き物ではないのか?
「本当に、何もないのか?」
「・・・」
ジララは月を眺めていた視線をカゲゲに移し、言った。
「今、お前といられる時間が止まれば良いのだがな・・・」
「・・・え。」
「月が綺麗だ。」
「あ、あぁ・・・」
幻聴ではなかろうか。
いや、本当に聞こえた。
今彼は、自分と全く同じ願いを口に出したのだ。
「ジ、ジララ・・・その・・・」
「何だ。」
ジララの返事はそっけない。
けれどもそのそっけなさの中に含まれている照れ隠しを、カゲゲはちゃんと読み取っていた。
「私も、そう思うぞ。」
「そうか。」
小さな小さな願い
大きな大きな希望
月を見上げる2人の後ろを、一筋の光が流れていった。
願うは、今、この瞬間の幸せを噛み締めて
―ずっとずっと、貴方と共にいられますように。
+―+―+―+―+―+―+―+―+―+
遅くなりまして申し訳ありません。
ゆき様へ、一周年記念です。
ジララとカゲゲの願いは、私のゆき様へ捧げる願いでもありまして候・・・
これからもよろしくお願いします^^
+―+―+―+―+―+―+―+―+―+
夜風は冷たく、
けれどもそれ故に、温かかった。
ビルの上、大きな月の下に浮かぶ、小さな二つの影。
この無限の宇宙においては、人間一人だって蟻一匹だって、皆等しく小さい。
「見事なものだな。」
高い高いビルに上ったって取れない、大きな大きな月。
カゲゲはそんな存在に手を伸ばしてみる。
届きそうで届かなくて、届くはずが無いことくらい分かっている。
ただ、今日は特別なのだ。
そうでなかったら、わざわざ夜中に外へ出るようなことはしない。
カゲゲは少しはにかみながら、隣で座り込んでいる影を見た。
「まさか来てくれるとは思っていなかった。」
「気が向いた。それだけだ。」
隣の影、ジララは、それだけ言ってカゲゲを見た。
瞳は赤く、月の光を吸収して揺らめいていた。
「それでも、嬉しく思うぞ。」
「そうか。」
2人は月を見上げる。
首には2人を繋げるマフラー。
夜は冷え込むというのに、上着も着てこなかったジララにカゲゲが無理やり巻きつけたものだ。
最初は居心地悪そうにしていたジララも、今では慣れたもの。
隣にいるカゲゲを気にするでもなく、自然な表情で夜空を見上げている。
「何故俺を誘った。」
突然口を開いたかと思えば、そんなことを聞いてくるジララに、カゲゲは顔をしかめた。
「私の友人が、貴様しか居なかったからだ。」
「・・・そうか。」
それを聞いたジララの表情はが心なしか残念そうに見えて、カゲゲは思わず噴出した。
「フッ、冗談だ。」
「は?」
クスクスと笑えば、ジララは不機嫌そうに目を細める。
してやったり。といった感じだ。
「貴様と、見たかった。」
大きな大きな月を、高い高い場所で。
そしてその反対側に流れてくるだろう、星達を。
「星に願いをかけたこと、あるか?」
「ない。」
願いをかけるくらいなら、自分で叶える努力をする。
叶わない願いなら、願わない。
思えば可愛らしくない子供時代を送ったものだ。
気づいた頃から、何かを願うことなんて諦めていた。
「何か願ってみるといい。もしかしたら叶うかもしれないぞ。」
「・・・特にないな。」
「そうなのか?」
カゲゲは意外だといったように目を丸くした。
人には何かしら願い事があって、日々そのことに煩わされるものだと思っていた。
一つ願いが叶えば、また次の願いが浮かぶ。
人とはそういった欲深い生き物ではないのか?
「本当に、何もないのか?」
「・・・」
ジララは月を眺めていた視線をカゲゲに移し、言った。
「今、お前といられる時間が止まれば良いのだがな・・・」
「・・・え。」
「月が綺麗だ。」
「あ、あぁ・・・」
幻聴ではなかろうか。
いや、本当に聞こえた。
今彼は、自分と全く同じ願いを口に出したのだ。
「ジ、ジララ・・・その・・・」
「何だ。」
ジララの返事はそっけない。
けれどもそのそっけなさの中に含まれている照れ隠しを、カゲゲはちゃんと読み取っていた。
「私も、そう思うぞ。」
「そうか。」
小さな小さな願い
大きな大きな希望
月を見上げる2人の後ろを、一筋の光が流れていった。
願うは、今、この瞬間の幸せを噛み締めて
―ずっとずっと、貴方と共にいられますように。
+―+―+―+―+―+―+―+―+―+
遅くなりまして申し訳ありません。
ゆき様へ、一周年記念です。
ジララとカゲゲの願いは、私のゆき様へ捧げる願いでもありまして候・・・
これからもよろしくお願いします^^