小指ほどの鉛筆

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幸福【ハッピーエンド】の作り方(ガルゾル)

2008年11月05日 21時16分38秒 | ☆小説倉庫(↓達)
もしもあの時、自分が笑っていたら・・・

この仕事に絶望していなかったら・・・


そしたら


救世主【ナイト】は現れなかったのだろう。

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「・・・ハァァ・・・」
つい1時間ほど前にかかってきた電話を置き、ゾルルは長い溜息をついた。
ここは自分の部屋。
誰もこの溜息を聞いている人はいない。
「罪償い、か・・・」
ベッドの端に座り、倒れこむ。
そして再度溜息をつく。
―『ゾルル、入るぞ。』
部屋のインターホンから、人の声が聞こえた。
遠隔操作でロックを解除し、仕方無しに上半身を起こした。
「ゼロロ兵長との話は終わったのか?」
「あぁ。」
軽い返事に微笑んで、ガルルはゾルルの隣に腰掛けた。
「忙しいものだな。」
「あぁ。」
アサシンは、もうすぐテストがある。
ゼロロが居ない今、その監督を務めるのはゾルル。
そこで、ゼロロから直々に公正な審判の仕方を教えてもらっていたのだ。
「・・・ゾルル、表情が硬いぞ。」
「・・・」
少しだけ、視線が彷徨う。
それはそうだ。
アサシンの話をしていて、何も思い悩まないはずが無い。
「俺が来て緊張したか?」
ところが場違いな発言に、ゾルルは表情を引きつらせた。
「何故、そう・・・なる。」
「違うのか?」
首をかしげたガルルを、睨む。
するとガルルも、ハハハと笑った。
「まぁそう気を悪くするな。」
「・・・お前は、自信過剰、だな・・・」
「・・・そうでもないぞ?」
ガルルは肩をすくめるような動作をする。
「まぁ、出来るだけポジティブでいようとは思っているんだがな。」
「俺には・・・無理、だ。」
ネガティブまでではないものの、ゾルルは自分が、比較的消極的な考えの方が多いように思えた。
「なに、少し視点を変えればいい。例えば俺達軍人は、大怪我をして全治一ヶ月だったとしても、『生きていて良かった』と思うだろう?まぁ、多少の例外はいるが。」
例外というのは、ゼロロや自殺願望者のことだろう。
「そういうのは、大したポジティブだと思うぞ?」
そう言われると、それがとても簡単で身近なもののように感じた。
「お前、も・・・そういう考え、方をしている・・・のか?」
「そうなる。俺の場合は、元々ポジティブなのかも知れないが。」
「凄い、な。」
「そうでもないさ。おめでたい想像は、していて楽しいからな。」
想像だなんて、そんな。
それではそのポジティブな想像が、ただの妄想になってしまう。
だがそれを分かっていながら尚、気を確かに保っていられるのがポジティブなのだろう。
「で、お前は何に対してネガティブになっているんだ?」
未だどこか暗いオーラを出しているゾルルに、ガルルは尋ねる。
「・・・」
辛そうに目を細めたゾルルは、もぅ既にこの世界すらをも嫌っているかのように思えた。
そんなゾルルの方を抱き、ガルルは溜息をつく。
「言ってみろ。少しくらいは、お前の助けになれるかも知れない。」
今までだってずっと、ガルルはゾルルの心の助けになってきた。
そんな彼の存在に、ゾルルは少なからず感謝している。
「・・・」
けれどもだからと言って、何でも間でもガルルに話してしまっては、彼も憂鬱な気分にしてしまうのではないか?
自分の話を聞くのが嫌になってはしまわないか?
「ゾルル。」
早く話しなさい、と、親のような口調で諭すガルルは、そんなこと考えてもいないのだろう。
つまりはこの気持ちも、一方通行。
あぁ、憂鬱になる。
「なぜ話したくない?」
「話すような、こと・・・じゃ、ない。」
「話す事でもあるさ。お前がこんなに悩んでいるのだからな。」
肩に回された手は、絶対に離さないというような意味を持っているようだった。
ゾルルであっても、その手は退けられない。
「長くてもいいぞ。明日は遅いからな。」
「・・・しぶ、とい・・・」
「それも取り柄だ。」
ゾルルが溜息をつくと、ガルルは微笑んでその頭を撫でた。
その手つきは、とても優しい。

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―まるであの日のように・・・―


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「今日からお前は、私の隊の一員となった。異論はないな?」
「・・・」
広い、無機質な部屋。
真っ白で、時々天井の赤い光が点滅するだけの、寂しい場所。
そんなところで、ゾルルはガルル小隊への入隊説明を受けていた。
「私を隊長とした団体行動での任務が加わる以外では、特に変更は無いと思ってくれて構わない。もちろん、今まで通りにアサシンでの任務も行ってくれ。予定は、今後私から伝える。」
ガルルは簡単な説明をして、ゾルルの反応を見る。
ゾルルは頷く程度にしかアクションを起こさず、思っていることが相当に解り辛い。
それでもガルルは否定肯定を見分け、何とか20分程度で説明を終えることに成功した。
「さて、これからは顔も良く見るようになると思うからな。自己紹介といこうか。私はガルル。階級は中尉だ。スナイパーとして、銃を主に扱っている。趣味は読書だな。ゾルル、君は?」
いらないことまで喋り、ガルルはゾルルに自己紹介をするよう促した。
ゾルルは暫く黙ったまま立ち尽くしていたが、やがて小さく自分の名前と所属だけを喋って、口を閉じた。
「それは分かっているよ。だが、まぁ、良いとしよう。」
苦笑して、ガルルは腕を組んだ。
「他の仲間も紹介する。着いてきたまえ。」
白い部屋から出ると、やけに狭く感じる通路に繋がった。
言われるがままにガルルについていったゾルルは、その後の隊員紹介でも喋る事は少なく、無口を貫き通している。
それでもガルルは、ゾルルと目が合うたびに微笑んでいた。
どこか不思議なその笑みは、ゾルルには理解しがたいものだった。
数日が過ぎ、一週間が過ぎても、ゾルルは隊員達どころかガルルにも心を開こうとはしなかった。
アサシンとしては、それはとても有能なことなのだ。
けれども、ある程度の愛想というものは必要なものである。
ガルルは一つの部屋で、資料を片付けながら考えていた。
とりあえずは、自分が彼の感情を読み取れるようにならなければいけない。
そのためにはどうすればいいのか・・・?
「ガルル中尉!」
突然開いたドアの前で、一人の兵士が息を切らせている。
「なんだね?」
「○×△星の侵略で、ゾルルがまだ戻っていないとの報告が・・・」
「その星は、もぅ撤退命令が下されていたはずじゃないのか?」
「そうなんですが、戻っていないようなんです。」
ガルルは口をぽかんと開け、やがて大きな溜息をついた。
「勝手な行動をとったわけだな。」
「えぇ・・・」
「分かった。」
ガルルは片付けた資料をトントンと揃え、それから立ち上がった。
「私が行こう。」
「!そんな、中尉直々に!!」
「ゾルルは我が隊の暗殺兵だ。現隊長の私が行っても、問題は無いだろう?」
兵士は躊躇いがちに頷いたのだが、ガルルには十分な肯定だった。
すぐにコートを着て、足早に通路を進む。
船に乗り込むと、彼が残っているという星へと向かった。
「ゾルル・・・!?」
船から降りるとすぐに、目的の人物は見つかった。
ただしその姿は、赤く黒く染まっていたのだが。
「・・・隊長・・・?」
ゾルルは不思議で仕方がないとでもいうようにキョトンとした表情を見せた。
それはとても分かりやすい、混乱の感情だった。
「ゾルル!その血は・・・!!大丈夫なのか!?」
「・・・?;」
駆け寄ってきたガルルに、ゾルルは相当困っているようだった。
「怪我は無いか??」
瞳を真っ直ぐに見つめたその問いに、ゾルルはゆっくりと頷いた。
「それなら良かった・・・」
ほっと胸を撫で下ろしたガルルを見て、ゾルルは何度か瞬きを繰り返す。
そして、口を開いた。
「何故・・・?」
「何がだ?」
何故お前がココに居るのだ?
何故怪我をしなかったかなどと聞くのだ?

―アサシンは、兵器でしかないというのに・・・

「・・・ココに来たのは、お前が帰ってきていないと聞いたからだ。」
「何故。」
「私は隊長だからな。隊員の面倒くらい見るさ。」
ゾルルは分からないと、首をひねる。
「お前が心配だったのだよ。」
ゾルルは、その言葉には特に驚かされたようだった。
「それにしても、本当に怪我はないのか?これが全て他人の血というのも・・・また凄いものだが。」
ガルルはゾルルに触れようと、何歩か歩み寄る。
するとゾルルは、物凄い勢いで飛びのいた。
「!!」
「触れ、るな・・・!!」
警戒心をむき出しにしたその行動に、ガルルは切なさがこみ上げてくるのを感じた。
まだダメなのか・・・
どうしたらいいのか・・・
何も、分からなかった。
「何故だ?」
「・・・」
ゾルルの、怯えた目。
それが嫌悪感でないことにだけ、ホッとした。
「何故だ。こんなに・・・綺麗じゃないか。」
その目が再び、驚きで見開かれた。
ガルルはゾルルの元へと進み、手を伸ばす。
「っ!!」
ビクッと肩をすくめたゾルルの頭に、優しく手を置く。
彼が怯えているのは、他人からの嫌悪感だ。
そう、理解した。
「・・・??」
もはや無表情ではいられなくなったゾルルが、上目遣いでガルルを見上げる。
その瞳は臆病で、内気で・・・ガルルにとって、とても愛おしかった。
「私も、怖いのだよ。」
朱色に染まった白い髪をそっと撫でながら、ガルルは言う。
「私も、お前に逃げられて拒まれるのは・・・嫌われるのは、とても怖い。」
「・・・何故・・・?」
ゾルルは何も知らなかった。
だから、ガルルの言葉に戸惑ったのだ。

―「    」

けれども・・・
ただ頭の上に置かれた手が暖かくて、優しかったから。
もぅそれだけで十分だと目を閉じた。
ガルルが何を言っていたのかなんて覚えていない。
心が温かくて、気持ちよかった事だけ、覚えている。

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あの温かい手は今でもここにあるんだな、と・・・
何故だかそんな感傷に浸ったゾルルは、今自分の隣にいる人物が、誰よりも信頼できる存在なのだという事を思い出した。
少しだけ間をおいて、ゾルルは口を開く。
回りくどい言い方を考えて、考えて・・・そしてゾルルは、考えをまとめた。
「俺は今でも、ここにいて・・・良い、のだろう、か。ずっと、殺人ばかり・・・してきて・・・それは、何の役・・・にも、立たなかった。」
全て、無駄な犠牲だった。
血みどろになっていたあの時期は、もぅ幸せの時には変えられない。
後悔するのは仕方の無い事だ。
後にならないと、分かりようも無いのだから。
けれども、それが分かったときに何かを変えようとしなければ、同じ間違いばかりを繰り返してしまう。
気づいてしまったのだ。
ゼロロの生き方を見て・・・
「ゼロロの・・・ように、なれたら・・・一番、良いのだが・・・な。」
「だが彼も、そのことで苦悩しているだろう?」
「・・・あぁ。」
実は因縁の相手は、もぅとっくに新しい生き方に見当をつけている。
もちろん自分もそうしなければいけないという事にも気づいている。
なのに
過去が頭から離れない。
辛くて、苦しくて、悲しくて、醜くて・・・
どうしてあの日々があったのだろうかと、
どうしてあの殺戮を止められなかったのかと、
どうしてあの日々が戻って来ないのかと、
ずっとずっと、恨んでいた。
繰り返さないために、学ばなければならなかったのに。
その時が幸せであってほしかったと、
むしろ、何故幸せではいけなかったのかと、
そう思わずにはいられなかった。
「あの時、俺は・・・」
お前に会ったとき、俺は不幸だった。
それ以前も、それ以降も、ずっとずっと、不幸だった。
侵略した星で嘆き続けているときもあった。
「それで、お前は今どうしたい?」
ガルルが真剣な眼差しを向けてくる。
「ゼロロ君のようになって、お前は幸せなのか?」
「・・・」
それはあくまでも願望であって、自分はそうはなれない。
なぜかってそれは・・・
「俺、は・・・全てを、幸せに・・・したい。」
全てのものを、全ての人を・・・
そうではなく、
自分の全てを、今までの人生も全てを、幸せなものにしたい。
ゼロロは贖罪のために、苦しみを許した。
自分は・・・
「全く・・・」
ガルルが、盛大な溜息をついた。
呆れられたかと少し不安になったゾルルは、喋っていた口を閉じる。
「お前は今、幸せか?」
「・・・どう、だろうな・・・」
ガルルは片手でゾルルの頭を引き寄せ、自分の肩にもたれさせた。
「こうして一緒に居られる時間が、俺はとても大事だ。」
半身から温かい温度が伝わり、再びあの日を思い出す。
彼に出会えた事は、自分の中でも大きな変化をもたらした。
「お前を強引に引き止めてしまうくらい、大切なんだ。」
「だから、なん・・・だ。」
「だから、お前に会えて良かったと思っている。」
互いにそう想いあっているだろう?
「お前は今。幸せじゃないのか?」
改めて問われてみると、ゾルルは今という時がとても幸せな時なのだと実感できたような気がした。
「・・・幸せ・・・なのかも・・・な。」
にっこり笑ったガルルが、ゾルルの髪を静かに梳く。
「俺も、昔は随分と上官に恨まれていたものだ。今もか?」
「だな。」
「だがそのおかげで・・・お前に会えた。」
ゾルルだってそのはずだ。
酷い日々があったから、ガルルに会えたのだ。
今、この瞬間の温もりがあるのだ。
「・・・」
ゾルルはガルルの服の裾をギュッと掴み、その温もりを更に求めた。
この時間を、自分は幸福だと感じている。
そして彼は・・・
「不幸があって初めて、人は日常を幸福だと感じることが出来る。幸福ばかりを求めたって、そこに俺はいないぞ。」
あの日々があって、この日常が幸せだと感じる。
そして、彼がいる。
「お前は、今を大事にすることだけ考えればいい。過去は振り返らなくともどうせ付いて来る。そしてその忌まわしい過去が、少しだけ愛おしく思う瞬間もやってくるんだ。」
随分なプラス思考だ。
ゾルルがそう言うと、ガルルは微笑んだ。
「現実に想像をプラスする事が、プラス思考の作り方だ。よく覚えておきたまえ。」

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ゼロロを見ていて気がついた。
自分は、何もしていない、と。
罪償いも、何も。
けれども罪を償うには、自分はあまりにも不幸すぎた。
差し出すものも見つからなくて、自分があまりにも役立たずだった。
全てが幸せになればいい。
過去も、未来も。
そうすれば、いくらでも差し出せるのに・・・
だから、ずっと幸せについて考えていた。

そうしたら

彼が微笑んだのだ。

温かい手の温もりが、伝わってきたのだ。

暗い闇の底に手を伸ばし、彼は自分を引き上げてくれた。
冷たい身体を抱き締めてくれた。
ずっと傍にいると、約束してくれた。

その世界が明るいものだと気づけたのは、暗い底に居たから。
温かい温もりを感じたのは、自分が冷たかったから。
だから、ほら。
辛い日々も、幸せへの旅路に過ぎない事が分かる。
それに気づかなかったから、彼がわざわざやってきてくれたのだ。
手を精一杯、伸ばしてくれたのだ。

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―悲劇の姫【ヒロイン】にしか
 
 騎士【ナイト】はやって来ないのだから・・・―

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それを人は

【妄想の戯言】と言う

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イメージ的にはガルルって王子じゃなくて騎士だよな~って思いました。
個人的には、姫と対になる存在は騎士だと思うのですよw
ただ単純に騎士が好きなだけですが。(ぇ

昨日学校でコツコツ書いていたものに、色々付け加えたものなので・・・
まとまりは例の如くありません。
いや、本当学んでなくてすみません・・・;

そして、そろそろタイトルに困ります。