最近自分は、やけにデスクワークが多いような気がする。
今日に至ってはまだ一度も銃を握っていない。
軍人がこんなことでいいのだろうか?
そんな自問をしながら、ガルルは一人事務室にいた。
「まぁ、隊長もまだ小さいからな・・・しょうがないと言えばそこまでだが。」
他の隊員は任務に出ていて誰もいない。
こうも静かだと逆にやりづらいのも本音。
音楽でもかけたい気分になる。
「今、戻った・・・。」
「おお、ゾルル!無事で何よりだ。」
そんなときに戻ってきたのはゾルル。
ここ一週間ほど任務で、顔を合わせていなかった。
「?」
周りを見渡し、誰もいないことに首をひねるゾルルに、ガルルは笑って答えた。
「他の皆は任務で居ないぞ。なぜか私はデスクワークだが・・・。」
「そう、か。」
ゾルルは普段自分が座っている椅子を引き寄せると、ガルルの横に居座った。
「Cケロロは・・・今、でも隊長・・・なのか?」
「そのようだね。本部はどうしても成功したクローン技術を手放したくはないようだ。」
「お前じゃ、ないのか。」
「あぁ。だがやっていることは隊長が本来やるべき仕事だからな・・・今は隊長として見てくれて構わないぞ。」
にっこりとして見せたガルルに、ゾルルは顔を背ける。
「・・・」
「さて、まだこんなに片付ける資料が残っているからな・・・今日も徹夜になりそうだ。」
再びデスクに向き直ったガルルが、ペンを持つ。
すでに仕事にも慣れてしまったようだ。
戦闘もデスクワークもこなせる軍人というのが、ガルルの女性から絶大の人気を誇る秘密なのかもしれない。
と、ゾルルは今ガルルが言った言葉に疑問を持った。
「今日、も?」
「ん?あぁ、昨日もほとんど寝ていないからな。・・・1時間寝たらノルマギリギリだ。」
ゾルルはデスクの上に積み重なっている紙の束を見た。
徹夜してまだこの量が残るのだ。いったい自分がいない間に何が起こったというのだろう。
「手伝う、か?」
「いや、この資料は責任者がやらなければいけないものだからな。それにお前は任務から帰ってきたばかりだろう?厚意はありがたいが、お前の方こそ少し寝たほうがいい。」
一瞬、本物の馬鹿だと思った。
印を押すくらいなら自分にも出来るし、機械のように動くだけの話だ。
石頭と言おうとした口を自分で塞ぐ。
「そうか・・・。」
けれども眠る気も起きない。
ゾルルはどうしようかと迷ったあげく、この場を離れないことにした。
「寝ないのか?いつもならもうとっくに自室に戻っているだろうに。」
「・・・俺の勝手、だ。」
「ハハ、そうだな。だが私には気を使わなくていいぞ?」
変なところで神経質な奴だ、とゾルルは思ったが、やはり口には出さなかった。
「だがちょうどいい。一人でここにいるのも寂しいものだと思っていたのだよ。」
「・・・そうか。」
ゾルルはこれで何度同じ言葉を口にしたかを考えた。
もしかしたら、これが自分の「口癖」というやつなのかもしれない。
「どうした?」
ボーっと考えていたゾルルの顔を、ガルルが心配そうに覗き込んだ。
「別に・・・。」
「やっぱり眠いんじゃないか?」
「・・・お前は、俺、が居ないほうが・・・いいか?」
あまりにも自分のことを気にかけてくれるガルルが不審に思えてきて、思わずムッとしたゾルルがそう問うた。
「まさか!むしろ嬉しいくらいだよ。一週間も顔を合わせることが出来なかったんだからな。だが・・・疲れたお前を見ているのは辛い。分かってくれるだろう?」
「・・・」
拗ねたようにひざを抱えるゾルルに、ガルルが慌てて言う。
「まぁ、お前がここに居たいというのなら別だが。」
「・・・そうか。」
何度目だろう。
「さ、私は本当に仕事に戻るからな。手が止まってしまった。」
こくりと頷くゾルルを見て、ガルルはペンを動かした。
けれども1時間もたたないうちにゾルルが口を開いた。
「任務・・・珍しく、苦戦した。」
「?」
ガルルが顔を上げないのも気にせず、ゾルルは話し続ける。
「子供、が・・・走り、回っていた。大人は逃げ・・・死にたくない、と喚いた。
だが・・・」
自分の左腕をなぞると、ゾルルは寂しそうに、重く言葉を繋げた。
「子供は・・・泣きもせ、ず、文句も、言わなかった。」
何も知らなかったのだ。
無知ゆえの、冷静さだったのだ。
「敵が居たら・・・ピン、を抜くようにとでも・・・言われたんだろう。何人か、は・・・自爆、した。」
「・・・」
ガルルのペンの動きが遅くなる。
それを見て分かっていながらも、ゾルルは話を止めようとはしなかった。
「何故・・・そこまで・・・する?」
思いの他手間取ってしまった。
普通なら女子供は隠すはずなのだ。それを爆弾のように、一つの兵器の様に扱うなんて・・・そんなのはアサシンの自分でもゾッとするものがある、とゾルルは言った。
「分からない、だろう?」
何故抵抗しないのだ。
どうして逃げないのだ。
「ゾルル・・・」
「なん、だ。」
「仕事が滞るから、そういう事はやめないか。;」
「そう、いう事、というのは・・・?」
「あー・・・その、なんだ、そういう暗い話はやめないか?」
「聞き、たくないなら・・・聞かなけれ、ば・・・いい。」
矛盾している。とガルルは思った。
「じゃあ何故お前は話を続けようとするんだ??;」
「・・・言いた、かった・・・だけだ。」
普段寡黙で、ガルルにでさえもあまりそういう話をしたことが無いゾルルがそんなことを言う。
「なにかあったのか?」
ただ事ではないと思って、詳しく話を聞こうとするが、ゾルルの赤い瞳はどこか違うところを向いてしまった。
「・・・なんでも、ない。」
「なんだ、さっきまでずっと喋り続けていたくせに。」
「お前が、聞いて・・・いな、かったからだ。」
「?」
やはり矛盾しているように思える。
「仕事、を・・・続けて、いろ。」
「あ、あぁ。」
続けろと言われても、話が気になってそれどころではない。
「・・・もういい。」
「?;」
「・・・寝、る。」
立ち上がったゾルルを目で追いかけ、ガルルは苦笑した。
きっとゾルルは本当に口下手で、恥ずかしがり屋なのだ。
話したい・・・が、真剣に話を聞かれてしまうと緊張してしまう。
だからこそ、自分がデスクワークをしていたのはとても都合がよかったのだと思う。
「ゾルル!!」
扉を開こうとしたゾルルを呼び止め、ガルルは椅子から立ち上がった。
「少し訓練に付き合ってはくれないか?」
どうせまだ眠くはないのだろう。
ずっと椅子に座っているのも身体によくない。
「今日は一度も銃を手にしていないんだ。鈍ってしまうだろう?」
「・・・いい、だろう。」
割と早い回答を出してくれたゾルルに、ありがとうと伝える。
「しばらくして火薬のにおいが嫌になったら、散歩にでも行こう。」
「・・・・・・・・・・」
何も言わない。
それがゾルルにとって一番早い肯定の返事だと気づいたのは、いつ頃だっただろう。
今ではもう、それが嬉しくて仕方が無い自分がいる。
「じゃあ行こうか。」
帰ってきてから徹夜すれば、きっと明日の昼には資料も片付くことだろう。
BGMはゾルルの語り声で、ゆっくりと仕事をしよう。
そう心に決め、ガルルはゆっくりと部屋を出た。
_______________________________________
大佐にしようかゾルルにしようか迷ったんですが・・・
ガルルの本命のお相手はゾルルなので(勝手な解釈)こちにしました。
うちの大佐は仕事しないしね。(オイ
これでなんだかお題が少しだけすっきりしたような気がします。
変に間が空いていてうずうずしてたんですよね。
ちなみに、私の小説に出てくるゾルルは、ガルルの前だと性格変わります。
甘くしようとすると台詞が多くなって大変だ(汗
ゾルルの喋り方はどう表現していいのか迷う。
でも大好きだ!!!
これからもガルゾルは増える予定ですww
今日に至ってはまだ一度も銃を握っていない。
軍人がこんなことでいいのだろうか?
そんな自問をしながら、ガルルは一人事務室にいた。
「まぁ、隊長もまだ小さいからな・・・しょうがないと言えばそこまでだが。」
他の隊員は任務に出ていて誰もいない。
こうも静かだと逆にやりづらいのも本音。
音楽でもかけたい気分になる。
「今、戻った・・・。」
「おお、ゾルル!無事で何よりだ。」
そんなときに戻ってきたのはゾルル。
ここ一週間ほど任務で、顔を合わせていなかった。
「?」
周りを見渡し、誰もいないことに首をひねるゾルルに、ガルルは笑って答えた。
「他の皆は任務で居ないぞ。なぜか私はデスクワークだが・・・。」
「そう、か。」
ゾルルは普段自分が座っている椅子を引き寄せると、ガルルの横に居座った。
「Cケロロは・・・今、でも隊長・・・なのか?」
「そのようだね。本部はどうしても成功したクローン技術を手放したくはないようだ。」
「お前じゃ、ないのか。」
「あぁ。だがやっていることは隊長が本来やるべき仕事だからな・・・今は隊長として見てくれて構わないぞ。」
にっこりとして見せたガルルに、ゾルルは顔を背ける。
「・・・」
「さて、まだこんなに片付ける資料が残っているからな・・・今日も徹夜になりそうだ。」
再びデスクに向き直ったガルルが、ペンを持つ。
すでに仕事にも慣れてしまったようだ。
戦闘もデスクワークもこなせる軍人というのが、ガルルの女性から絶大の人気を誇る秘密なのかもしれない。
と、ゾルルは今ガルルが言った言葉に疑問を持った。
「今日、も?」
「ん?あぁ、昨日もほとんど寝ていないからな。・・・1時間寝たらノルマギリギリだ。」
ゾルルはデスクの上に積み重なっている紙の束を見た。
徹夜してまだこの量が残るのだ。いったい自分がいない間に何が起こったというのだろう。
「手伝う、か?」
「いや、この資料は責任者がやらなければいけないものだからな。それにお前は任務から帰ってきたばかりだろう?厚意はありがたいが、お前の方こそ少し寝たほうがいい。」
一瞬、本物の馬鹿だと思った。
印を押すくらいなら自分にも出来るし、機械のように動くだけの話だ。
石頭と言おうとした口を自分で塞ぐ。
「そうか・・・。」
けれども眠る気も起きない。
ゾルルはどうしようかと迷ったあげく、この場を離れないことにした。
「寝ないのか?いつもならもうとっくに自室に戻っているだろうに。」
「・・・俺の勝手、だ。」
「ハハ、そうだな。だが私には気を使わなくていいぞ?」
変なところで神経質な奴だ、とゾルルは思ったが、やはり口には出さなかった。
「だがちょうどいい。一人でここにいるのも寂しいものだと思っていたのだよ。」
「・・・そうか。」
ゾルルはこれで何度同じ言葉を口にしたかを考えた。
もしかしたら、これが自分の「口癖」というやつなのかもしれない。
「どうした?」
ボーっと考えていたゾルルの顔を、ガルルが心配そうに覗き込んだ。
「別に・・・。」
「やっぱり眠いんじゃないか?」
「・・・お前は、俺、が居ないほうが・・・いいか?」
あまりにも自分のことを気にかけてくれるガルルが不審に思えてきて、思わずムッとしたゾルルがそう問うた。
「まさか!むしろ嬉しいくらいだよ。一週間も顔を合わせることが出来なかったんだからな。だが・・・疲れたお前を見ているのは辛い。分かってくれるだろう?」
「・・・」
拗ねたようにひざを抱えるゾルルに、ガルルが慌てて言う。
「まぁ、お前がここに居たいというのなら別だが。」
「・・・そうか。」
何度目だろう。
「さ、私は本当に仕事に戻るからな。手が止まってしまった。」
こくりと頷くゾルルを見て、ガルルはペンを動かした。
けれども1時間もたたないうちにゾルルが口を開いた。
「任務・・・珍しく、苦戦した。」
「?」
ガルルが顔を上げないのも気にせず、ゾルルは話し続ける。
「子供、が・・・走り、回っていた。大人は逃げ・・・死にたくない、と喚いた。
だが・・・」
自分の左腕をなぞると、ゾルルは寂しそうに、重く言葉を繋げた。
「子供は・・・泣きもせ、ず、文句も、言わなかった。」
何も知らなかったのだ。
無知ゆえの、冷静さだったのだ。
「敵が居たら・・・ピン、を抜くようにとでも・・・言われたんだろう。何人か、は・・・自爆、した。」
「・・・」
ガルルのペンの動きが遅くなる。
それを見て分かっていながらも、ゾルルは話を止めようとはしなかった。
「何故・・・そこまで・・・する?」
思いの他手間取ってしまった。
普通なら女子供は隠すはずなのだ。それを爆弾のように、一つの兵器の様に扱うなんて・・・そんなのはアサシンの自分でもゾッとするものがある、とゾルルは言った。
「分からない、だろう?」
何故抵抗しないのだ。
どうして逃げないのだ。
「ゾルル・・・」
「なん、だ。」
「仕事が滞るから、そういう事はやめないか。;」
「そう、いう事、というのは・・・?」
「あー・・・その、なんだ、そういう暗い話はやめないか?」
「聞き、たくないなら・・・聞かなけれ、ば・・・いい。」
矛盾している。とガルルは思った。
「じゃあ何故お前は話を続けようとするんだ??;」
「・・・言いた、かった・・・だけだ。」
普段寡黙で、ガルルにでさえもあまりそういう話をしたことが無いゾルルがそんなことを言う。
「なにかあったのか?」
ただ事ではないと思って、詳しく話を聞こうとするが、ゾルルの赤い瞳はどこか違うところを向いてしまった。
「・・・なんでも、ない。」
「なんだ、さっきまでずっと喋り続けていたくせに。」
「お前が、聞いて・・・いな、かったからだ。」
「?」
やはり矛盾しているように思える。
「仕事、を・・・続けて、いろ。」
「あ、あぁ。」
続けろと言われても、話が気になってそれどころではない。
「・・・もういい。」
「?;」
「・・・寝、る。」
立ち上がったゾルルを目で追いかけ、ガルルは苦笑した。
きっとゾルルは本当に口下手で、恥ずかしがり屋なのだ。
話したい・・・が、真剣に話を聞かれてしまうと緊張してしまう。
だからこそ、自分がデスクワークをしていたのはとても都合がよかったのだと思う。
「ゾルル!!」
扉を開こうとしたゾルルを呼び止め、ガルルは椅子から立ち上がった。
「少し訓練に付き合ってはくれないか?」
どうせまだ眠くはないのだろう。
ずっと椅子に座っているのも身体によくない。
「今日は一度も銃を手にしていないんだ。鈍ってしまうだろう?」
「・・・いい、だろう。」
割と早い回答を出してくれたゾルルに、ありがとうと伝える。
「しばらくして火薬のにおいが嫌になったら、散歩にでも行こう。」
「・・・・・・・・・・」
何も言わない。
それがゾルルにとって一番早い肯定の返事だと気づいたのは、いつ頃だっただろう。
今ではもう、それが嬉しくて仕方が無い自分がいる。
「じゃあ行こうか。」
帰ってきてから徹夜すれば、きっと明日の昼には資料も片付くことだろう。
BGMはゾルルの語り声で、ゆっくりと仕事をしよう。
そう心に決め、ガルルはゆっくりと部屋を出た。
_______________________________________
大佐にしようかゾルルにしようか迷ったんですが・・・
ガルルの本命のお相手はゾルルなので(勝手な解釈)こちにしました。
うちの大佐は仕事しないしね。(オイ
これでなんだかお題が少しだけすっきりしたような気がします。
変に間が空いていてうずうずしてたんですよね。
ちなみに、私の小説に出てくるゾルルは、ガルルの前だと性格変わります。
甘くしようとすると台詞が多くなって大変だ(汗
ゾルルの喋り方はどう表現していいのか迷う。
でも大好きだ!!!
これからもガルゾルは増える予定ですww