小指ほどの鉛筆

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32 拒否権を持っているのはお前じゃない、俺だ。(クルゼロ) 24の続き。

2008年01月17日 17時36分25秒 | ☆小説倉庫(↓達)
次の日、クルルはアサシンの修練所へと足を運んだ。
ゼロロがもし任務についていないとすれば、クルルにはそこしか当てが無かった。
「クルルだ。」
大抵は名前を言えばどこにだって入れてもらえる。
それは少佐の特権。
「クルル少佐!?な、なんの御用で・・・?」
大きな門の前には、番人が二人。
そんなものつけなくても、アサシン相手に向かっていこうとする奴もいないだろうに。
「会いたい奴がいる。ゼロロはいるか?」
クルルがゼロロの名前をだすと、二人の門番は驚いたように顔を見合わせた。
そして困ったように腕を組むと、二人で話し合い、しばらくしてクルルに向き直った。
「・・・今、この修練所には3人のアサシンしかおりません。ゼロロさんの詳しい動向御教えできませんし、分かりませんが、ここには・・・。」
遠慮がちにそう言った彼らに、小さく舌打ちをする。
別に二人に向かってそうしたわけではない。ゼロロがいないということに苛立ちを感じたのだ。
―ガルルが慌てんのも、不思議じゃねぇのかもな。
アサシンが厳重に扱われているのにはそれなりの理由があるのだろうと、クルルはそっと頭の隅で考えていた。
「そうかよ。」
そっけなくそう言うと、クルルはまた来た道を戻っていった。


「ちっ、何でいねぇんだよ。」
イライラを募らせながら、ガルルが待つ自室へと戻る。次の角を曲がってからしばらく歩けば、すぐについてしまうことだろう。
クルルは今まで歩いた分の疲れが、今になってどっとこみ上げてくるのを感じた。
「のわっ!?」
「っ!!」
その角を曲がったとき、誰かとぶつかりかけた。
いや、普通ならぶつかってしまうはずなのだ。けれどもクルルがよろめいただけですんだのは、相手の反射神経がすさまじいことを物語っていた。
「おい、おま・・・!!」
文句を言おうとしたクルルを黙らせたのは、その青い瞳だった。
深く深く、透き通ったビー玉のようなその目を持つのは、クルルが知っている限り、一人しかいない。
「クルル少佐!?すみません!お怪我はありませんか!?」
「ゼロロ!」
慌てて駆け寄るゼロロと視線が合う。
その目は以前に会ったときとは違い、感情が見える、澄んだ瞳だった。
「あぁ、心配ねぇよ。お前が避けてくれたんだろ??」
「まぁ、それはそうですが・・・」
心配そうに眉を下げるゼロロが、そのときのクルルにはとても可愛く思えた。
「・・・俺、アンタを探してたんだよなぁ。」
「え?」
唐突に、クルルがそう言い出した。
「修練所まで行ったんだぜぇ??」
「え?えぇ!?す、すみません!!」
「他の任務でもあったか??」
クルルは、ゼロロが答えることが出来ないとわかっていて、そう聞いた。
「・・・御教えできません。」
小さな間が、肯定を示してくれる。
悪戯っぽく笑ったゼロロが、こっそり事実を教えてくれたのだと気づかせた。
「アンタって人は・・・。」
二人だけのときに見せてくれるその不意の笑顔が、クルルには何よりも嬉しかった。
「それで、私を探していたというのは・・・??」
ゼロロが首をかしげる。
「あぁ、ちょっと話したかったんだよな。」
「何をです?」
真面目に捉えられる。
「・・・アンタに会いたかったわけ。」
「??;」
困り顔のゼロロの腕を引っ張る。
「あーーーったく!!なんでそう鈍いんだよ!!!」
自室へと引っ張っていこうとするが、途中でゼロロに止められた。
「あ、あの!!お話したいことがあるなら、私の部屋に行きますか・・・?」
「あ?俺の部屋すぐそこなんだけど。」
「私の部屋、そこです。」
「・・・」
予想以上に近かった部屋に驚いて固まってしまったクルルを見て、ゼロロはクスリと笑った。
「行きましょうか?」
ゼロロは掴まれた手を握り返して、部屋の扉を開いた。


「まさかこんなに近いとは思わなかったぜ・・・。」
差し出されたティーカップをソーサーに戻し、クルルが不服そうにそう言った。
「クルル少佐のことですから、とっくに知っていると思ってましたよ。最近部屋を変えたんです。」
「何で?」
「少佐の近くに居たかったんです。」
儚げな瞳に、ドキリとしてしまう。
「・・・なんて、冗談ですよ。」
けれどもまたすぐに、いつもの表情に戻ってしまった。
少しだけ本気にしてしまった自分が恥ずかしく、クルルは一度戻したティーカップを、再び手に取った。
「ところで、何をお話しますか?」
「・・・あのさぁ・・・」
紅茶を一口飲み、一番気に食わない事をもう一度指摘する。
「敬語、止めろよ。」
「ダメです。」
「二人だけだろ?」
「それはそうですが、これは上官からの命令なんです。」
律儀なアサシンに、頭を抱えたくなる。
クルルは、馬鹿がつくほど几帳面な自分の護衛を思い出した。
今頃部屋でクルルの幸運を願っているだろうか?それとも・・・
「敬語禁止。」
「少佐、お願いですからそのようなことを言わないでください。」
「拒否権を持っているのはお前じゃない、俺だ。」
「少佐・・・」
困ってしまったゼロロを前に、クルルはちょうど良い温かさになった紅茶を飲み干した。
「・・・・・・・命令してください。」
「あ?」
ゼロロが小さく言った。
「私に命令してください。そうすれば、その通りにします。」
「・・・」
クルルは命令というものが好きではなかった。
自分が少佐であるということを認めてしまうような気がして、好んで使う気にはなれなかったのだ。
「頼みじゃ、聞いてくれねぇのかよ。」
「命令は絶対です。けれども少佐の地位を持つ貴方なら、命令を上書き出来るでしょう?」
「・・・それでタメ口聞いてくれんのかよ。」
「命令ですから。」
命令。
それがゼロロにとっての、アサシンにとっての、絶対。
「しょうがねぇな・・・じゃあ命令だ。二人でいるときだけでいい。敬語禁止。」
「了解。」
にっこり微笑むゼロロに、ホッとした。
ドロロにとって、苦にならない命令。
そんなものが自分に言えるのだと、少しだけ安心する。
「クルル君は、どうして命令をしたくないの?」
敬語を止めたゼロロが、突然聞いてきた。
「命令がしたくないわけじゃねぇんだよ。ただ、少佐ってのが気にくわねぇ。」
「もっと上に行きたいの?」
普通の人なら当然の質問だろう。
けれども、クルルはそんな普通の質問に、普通の答えを出さない。
「逆だ。処分されてぇくらいだぜ。」
処分という言葉に、ゼロロがピクリと反応した。
「こんな堅苦しいとこ、誰が好んで来るんだよ。気違いにも程があるぜ。」
「珍しいね。大抵の人は、もっと昇格したいって言うのに。」
「俺はそんな名誉も地位もいらねぇ。」
「そう。」
椅子を引いて、立ち上がるゼロロ。
「今日は僕、一日中フリーなんだ。珍しいでしょ?」
「そうなのか?アサシンの動向は全くわからねぇからな・・・。」
「そっか。そうだよね。」
その後姿が、少しだけ悲しげにも見えた。
だからだろうか?クルルも立ち上がると、そっとゼロロに歩み寄った。
「ゼロロ。」
そして、背後に立つ。
「何?」
振り向いたゼロロに、思いっきり抱きついた。
驚いたゼロロが数秒の間をおいて慌てだす。
「ちょ、クルル君!?どうしたの!?」
「・・・アンタは、どうなんだ?アサシントップになって、嬉しいか??」
ゼロロが驚いた顔でクルルの言葉を聞く。
「俺はそうはおもわねぇ。アンタも苦しいんだろう?その顔見てりゃ、なんとなく想像はつく。違うか?」
「そう、かも知れない・・・でも、違うかもしれない。」
「どっちだよ。」
力なく微笑んだゼロロを見て、もっと強く抱きしめた。
「どうなんだよ。ゼロロ。」
自分の前では本音を言って欲しい。そう願うクルルの思いが、ゼロロには痛いほどに感じられた。
「クルル君・・・僕ね、アサシンになりたくて、軍に入ったんだ。」
言葉を選ぶように、慎重に、ゆっくりと、ゼロロは話し始めた。
「でも、こんな強さはいらない。大切な人を守ることの出来る力が欲しかった。でも・・・それに気づいたときにはもう、遅かった。」
クルルを抱きとめた両手を、そっと離す。
クルルはいっそう強く、強く、抱きしめて放そうとしなかった。
「クルル君は、どうだったんだろうね。」
「・・・俺は、自分の決定に後悔なんてしてねぇ。少し戸惑っただけだ。」
「強いね。」
「強くねぇよ。」
強くなんて無い。今ゼロロは苦しんでいるだろうに、自分は何も出来ないのだから。
こんな地位、何の役にも立たない。
好きな人一人、助けてやることも出来ないのだから。
「ゼロロ・・・」
好きだ。
そう言おうとしたのに、言葉が出てこなかった。
「何?」
「・・・なんでもねぇ。」
なんてことだろう。
本当に、自分は何も出来ない。
好きな人一人、慰めることも出来ないのだろうか。
安心させてやることも出来ないのだろうか。
「クルル君、そろそろ帰ったほうがいいんじゃない?」
唐突にゼロロがそう言った為、クルルは一瞬思考が停止した。
「何でだ?」
自分といるのがイヤなのではないだろう。
だったら、何故??
「なんd・・・・」
不思議に思ったそのとき、来客を知らせるベルが鳴った。
ゼロロがそっと、腰に回されたクルルの手を解く。
「お迎えだよ。」
にっこりと微笑んで、扉を開ける。
そこには、ガルルが立っていた。


「少佐!!心配したじゃないですか!!!」
「一人で行くって言っただろう!?」
「今何時だと思っているんですか!もうすぐ会議が始まるんです!!」
「はぁ!?会議だと??んなもんどうでもいいだろう!?」
「よくありません!!もうどれくらいサボっていると思ってるんですか!?連続5回はもういい加減厳しすぎます!!」
クルルを心配してわざわざゼロロの部屋を調べ上げてまで探しに来たガルルに、ゼロロは内心拍手を送りたい気分だった。
「さ、少佐。戻りましょう。」
「嫌だ。」
「わがままを言わないでください。」
「言ってねぇ。」
「言ってます。」
このままでは終わりそうにないと思ったゼロロが、途中で口をはさんだ。
「クルル少佐、お帰りになった方がよろしいかと思われます。私なんかでよければ、いつでもお話し相手になりますよ。」
その一言が、クルルの足を動かした。
「・・・しょうがねぇ。そうしてやるよ。」
クルリと後ろを向いたクルルに、ガルルが驚いたように目を開いた。
「帰るぞ、ガルル。」
「あ、はい。」
帰り際にクルルに笑顔を向け、ガルルからのお礼のお辞儀を受ける。
「さようなら、クルル少佐。」
一人呟いたその言葉は、消えそうなくらい小さかった。


それから約1ヶ月間、軍でゼロロを見た者はいない。


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はい終了~~~。
なんかまとまりがなくなってしまいましたね。
毎度の事ながら申し訳ありません・・・読みずらい文章で。

今まで結構お題を消化してきましたが、難しいものですね。
台詞というのも、そのキャラがどういう状況に置かれてそう言ったのか、毎回考えるごとに行き詰まります。

では。
そろそろ勉強せねば(汗