小指ほどの鉛筆

日記が主になってきた小説ブログサイト。ケロロ二次創作が多数あります。今は創作とars寄り。

いつも二人で

2007年09月07日 18時23分45秒 | ☆小説倉庫(↓達)
偶然二人で
たまには二人で
今日は二人で

でも、本当は・・・

      いつも二人でいたい。

__________________

二人でいることに抵抗を感じなくなったのはいつからのことか。
自分の一番嫌いなタイプだと思っていた。
でも弱い面を見てしまって、
ほっておけなくなってしまって・・・
それからどうしただろう?
確か、ラボに行って掃除をしたり、整理をしたりしてた。
それにしても嫌な奴といわれるだけのことはあった。
確かに嫌な奴だったから。
意地悪で
トラブル大好きで
孤独で
自分しか信じられなくって・・・
弱いじゃないか、と思った。
彼はとても弱くって
誰かを騙す事も
誰かの不幸を見ることも
常に一人でいることも
全てのことに逆らうことも
今まで普通にやってきたことなのではないのか?
ただこの人は、愛されることも知らない
可愛そうな少年のままなのではないか?
そう思うと少しだけ同情してしまいそうになった。
彼はそれを嫌う。
とてもプライドが高いのだ。
多分死ぬときも、微笑んだまま倒れてゆくことだろう。
だから、彼に心を与えたかった。
きっと彼にとっても僕は嫌な存在だったはず。
それでも、ずっと見守っていたかった。
彼を助けてあげたくてしょうがなかった。
そう思ってずっと、ずっと傍にいたが、いつの間にか最初にあったような嫌な気持ちは無くなった。
彼への嫌悪感はサッパリと消えうせていた。
僕に笑顔を見せるようになり、小隊のメンバーともよく話すようになった時は、自分自身のことのように嬉しかった。
そしていつからか、彼と僕は特別な存在となった。
僕自身、彼に救われていたのだとつくづく思う。
もしも彼がそれを望んでいないとしても、ずっと二人でいたい。


アイツは俺の一番嫌いなタイプだった。
純真な瞳で、表情豊かで・・・。
影の薄い存在といわれ皆に忘れられていたときも、俺はアイツを覚えていた。
アレでアサシントップなのだ。
過去に何があってもおかしくは無い。
徹底的に調べ上げた。
アイツの過去は壮絶なものだった。
精神面ではきっと、誰よりも弱いことだろう。
それを知っていてわざと辛い言葉をかけてみた。
一瞬表情が無くなるが、すぐにもとの笑顔に戻ってしまう。
悔しかった。
けれども、不思議と安心感もあった。
自分とアイツは同じ種類なんだ、と思った。
コイツになら、殺してもらっても悔いは無い。
そう思えるほどの存在となっていた。
いつから特別な存在となっていたのだろうか?
だが、今でも俺はアイツが心を開いていないように思える。
だから開いてやろうと思った。
無理やりにでもこじ開けてやろうと思った。
そして俺だけを見ればいい。
もしもアイツが束縛を嫌ったとしても、いつまでも二人でいたい。

_________________

whenever you're in trouble
won't you stand by me
oh stand by me,oh stand now…

いつ君が困難な状況にあろうとも
僕の傍にいてくれないか
僕の傍に、ねぇ、僕の傍にいて?

                     (stand by me)より

_______________________

完結。
ってか最後がこれかよ。

ひどすぎますね。
でも今までのお題をまとめるとこんな感じなのかな?って思って。
結局はお互いがお互いを求め合っているんですよvv←
それにしても、クルドロ書きまくっていたから他のカップリングが書けそうに無い。
特にガルゾルなんて難しいにもほどがある。
ゾルルの喋り方は文章向きじゃない。
だからガルゾルサイト様はすごいと思う。
ま、私もがんばって描こうと思っているんですけど・・・大丈夫かな?

じゃあね 2

2007年09月07日 09時20分28秒 | ☆小説倉庫(↓達)
「師匠、どうしてるかな?」
長い沈黙の後、先に話し始めたのはドロロの方だった。
その口調はゆっくりとしていて、昔話を語るように滑らかだった。
「師匠はとても優しくて、無愛想に見えるのにとっても話し上手で、時々笑顔を見せてくれた。」
「ほぅ・・・」
「そんな師匠が大好きだった。面倒見も良くて、変なところで勘の鋭い人だったかな。」
クルルは少し機嫌を悪くしただろうか、そう思いそっと顔をのぞいてみようと思ったが、クルルはすぐにドロロから視線をはずしてしまった。
やはり少し拗ねてしまっている。
「僕って惚れやすいのかもね。」
「惚れすぎだ。」
そう言い、クルルは口を閉ざしてしまったので、ドロロはまた過去を思い出す。



その寒い日以来、二人は互いに師匠と弟子以上の感情を持つようになった。
けれども、いつかは離れ離れになってしまうことを知っている。
だからなかなか踏み出せなかった。
それは師匠もゼロロも同じことだった。

「ゼロロ、お前ももうすぐ免許皆伝だな。」
その言葉に、時が一瞬止まったように思えた。
「免許・・・皆伝。」
いつか来ると分かっていたこと、辛くて考えないようにしていたこと。
それをこうもあっさりと、離れたくない人に言われてしまった。
「どうだ、今までやってきたことを実戦で使えそうか?」
実戦というのはアサシン課での残酷な任務でのことか、それとも別の何かなのか・・・。
「使えるように・・・なります。」
ゼロロには、今はそれしか言うことができなかった。
手に持ったまま動かすことが出来ないお茶に映った、自分の瞳をじっと見つめる。
何と言っていいのか分からない。
師匠に余計なことを考えさせてはいけないと、ゆっくりと言葉を選ぼうとする。
「えっと・・・」
「そういえばまだ聞いていなかったことがあったな。」
師匠の眼がゼロロに向いた。
その声に反応してそっと顔を上げる。
「聞いていないこと?」
師匠と過ごした日々はもう4年になる。
まだ教えてもらっていないこととはいったい何なのか、師匠の次の言葉を待つ。
「最初に言っていた、お前が強くなって守りたいものだ。」
ふと懐かしい顔が浮かんだ。
―ケロロ君、ギロロ君・・・。
今彼らは訓練所にいるはずだった。
最初こそはよく思い出しては逢いたいと思い続けていたが、最近ではもう忘れてしまうほど遠い存在となっていた。
―そうだ、僕は彼らを守るために師匠の弟子になったんだ。
当初の目的。
―今二人はきっと苦しんでる。傷ついている。守らなくちゃいけない・・・いや、 守ってあげたい。
ゼロロは二人の元気な幼馴染との日々を思い出していた。
走り回り、よく危険な目にあわされたりもしたけれども、決して苦痛ではなかった。
むしろ楽しくて、時間が止まればいいのにと何度思ったことか。
「僕は・・・」
うつむいて溢れてくる涙を隠そうとするが、どうしても止める事ができない。
一粒の涙が頬をつたう。
師匠が少しだけ手を動かしたが、すぐにその手を自分のひざの上に戻した。
「僕は・・・僕を助けてくれた友達を、今苦しんでいるだろう友達を、助けてあげたいんです。」
師匠と眼があう。
今はためらいも、哀しみも無い。
決意に満ちた目だった。
「強くなったな。」
今度は確実に手を伸ばし、ゼロロの涙をそっとぬぐう。
「だが、泣いたら弱く見えるぞ?」
そう言って微笑む。
―忘れてはいけない事を思い起こさせてくれた。
お茶はすっかり冷めていたが、ゼロロはそれで喉の渇きを癒した。



「ねぇクルル君。」
「あ?」
―昔は師匠が大好きだった。でも今は・・・
「クルル君、大好きだよ。」
「・・・は?」
突然のことに椅子を思いっきり回転させ、驚きと恥ずかしさが混じったような表情でドロロを見る。
師匠に似ているから?だからクルルを好きになったのか?
・・・いや、違う。
「師匠じゃなくて、ゾルルじゃなくて、今はクルル君が好き。僕の恋人はクルル君だけだから・・・。」
瞳の色は濃く深く、吸い込まれそうな青さをしていた。
「・・・クッ・・・。」
きっと機嫌はとてもよくなっていることだろう。

―師匠といたあの時以来、予想もしていなかったことが次々と起こり、自分を巻き 込んでいった。
師匠のことを覚えていたら、クルルのことは何とも思わなかっただろうか?
ドロロにはそうは思えなかった。
師匠とクルルが違うことはよく分かっていたから。



修行の最初の目的を思い出し、次の日からの修行は実戦シュミレーションへと移っていった。
生死の狭間を何度も体験してきたゼロロにとっては、怖さは無かった。

そうしているうちに別れのときは刻一刻と迫ってきていた。
ちょうど4年目になろうという頃、師匠がついにこの言葉を放った。
「・・・がんばったな。」
「はい。」
「・・・もう教えることは、本当に何も無くなった。」
「・・・はい。」
最初は否定したかったこの瞬間。
けれども今のゼロロには、自分の目的をようやく果たせるようになった瞬間に変わった。
「友達を守れるようになったか?」
「はい。」
「・・・そうか。」
そのときの笑顔は、師匠がはじめて見せた哀しみの表情だった。
「師匠・・・?」
「・・・ん?」
ゼロロはその表情を読み取り、複雑そうな顔をした。
「なんだゼロロ。」
「・・・僕は、守りたい人のことを忘れていました。大事な人を、ずっと忘れていました。」
「あぁ。」
「でも、新しく出来た大事な人のこと・・・ずっと忘れません。」
「・・・あぁ。」
師匠が心から微笑んだ。
まるで「強くなった」と言ってくれたあの日のように。
「帰り道、分かるだろう?」
「はい。」
帰り道はしばらく前から分かるようになった。
修行の成果はさまざまなところに現れていたけれど、いきなり帰り道が分かるようになったときにはゼロロもとても驚いた。
「この刀はやる。ただ、守ると決めたものを守るためにだけ使え。」
「・・・はい。」
刀を受け取ると、胸が苦しくなる思いがした。
「俺が教えるのはここまでだな。後は自分で努力しろ。」
くるっと後ろを向く師匠の姿は、これが本当の別れなんだと実感させた。

「じゃあな」

そのとき、ゼロロの感情防壁が崩れ落ちた。
「師匠!!」
走って行き、腕をつかんで後ろを向かせる。背伸びをしてその頬に軽いキスを落とした。
「!」
「ありがとうございました・・・。」
そして涙を流して微笑み、走って山を下りた。
途中涙をぬぐう。
―師匠に言われたのに・・・泣いてたら弱く見えちゃうよ・・・。
切なさが溢れ、いつの間にか視界がぼやけていた。
何度この袖で涙を拭けばいいのか・・・そう考えるだけで、師匠の元が懐かしくも感じられた。
―ダメだ。僕には守ると決めたものがある。
強くなったという師匠の言葉が心に残っていて、また泣きそうになる。
その思いも振り切って、ただひたすらに山を下りた。

その後はアサシン課に進み、トップになり・・・小隊に組まれ、今に至る。



「クルル君の一言で思い出したんだよ。」
胸が締め付けられる。
「僕は大切なものを守るためにしかこの刀を使わない。まだ師匠のことを覚えていた頃に、アサシンの任務では違う刀を使うって決めてたんだ。」
「へぇ。」
「でも、無意識のうちに、地球に来てからはこの刀を使ってる。守るべきもののために。」
そっと刃を見る。
刃こぼれ一つしていない綺麗なあのままの姿。
これだけが時に流されずにここにある。
「また、会えるかな?」
「逢えんじゃね?」
「そっか・・・。」

―師匠、僕は元気です。いつかまた逢えますように。


(完)

___________

すげーネタだなこれ。
どんだけ創作すれば気が済むんだか・・・。
でもこれだけ長くかけて満足です。
(慢心するな幸村~~!!)
(親方様!?)
ま、まぁ・・・これからもがんばっていきます。

じゃあね 1

2007年09月07日 09時18分13秒 | ☆小説倉庫(↓達)
日向家地下、会議室。

「俺が説明すんのはここまでだぜぇ。後は自分で何とかしな。じゃあな。」
作戦会議、というよりもクルルの新開発したメカの説明会。
長々とした説明をするわけでもなく、ただ質問にはちゃんと答えて、クルルはめんどくさそうに退場の言葉を述べた。
けれどもラボへ帰ろうとしたそのとき、クルルの目はぽかんと口を半開きにしているドロロを捕らえた。
「何だよ?」
「へ?」
ハッとしたドロロが今まで無かったような抜けた声を出した。
「へ?じゃねぇよ。」
「え、あぁゴメン。前にも同じような事を聞いたような気がして。」


そう、確かに聞いたのだ。
あれは8年前のことだったけれど・・・


__________________

「強くならなきゃいけない。強く、強く!!」
アサシン課に進む前のドロロ、ゼロロは自分の能力の限界を感じ、ケロロとギロロとは離れた山の中での修行を決め込んでいた。
だがいざ山に入っても何をしたらよいのかは分からない。
ただがむしゃらに何かをやるべきなのか
それともきちんと計画を立てるべきなのか・・・
「とりあえず何かをやらなくちゃいけない。」
まずは自分の常識から離れることに努めた。
昔の自分のままではまたすぐに風邪を引いてしまうことだろう。母には自分がここに居ることなど知らないのだから、心配をかけてはいけない。

そこで1ヶ月ほどたったある日、ゼロロはなんとなくだが山での生活というものを理解してきていた。
けれどもやはり限界というものは重く、何所までも現実味を帯びたものだった。
「強くなりたい・・・強くならなくちゃいけない・・・。」
自分自身への暗示として、何度言ったか分からない言葉をもう一度声に出した。
「強くなりたいのか・・・?」
思わない返答に驚いて後ろを振り返る。
もちろん今のゼロロが、気配なんて感じることが出来るはずも無い。
「こんなところに・・・人?」
誰かというよりも、こんな山奥に人がいるということに驚いた。
「遠回りをしただけだ・・・強くなりたいのか?」
自分の疑問にきちんと答え、さらに同じ問いかけを繰り返す。
自分の問いに答えてくれたのにこっちが答えないのもなんだと思い、ゼロロは思い切って返答した。
「は、はい。」
「なぜだ?」
「守りたい人がいるんです。」
ゼロロの答えにその人は軽くうなづき、ただ一言
「ついて来い。」
そう言って歩き始めた。
手に持っている酒が揺れる。
その後姿を見つめながら、ゼロロは言われた意味が分からずに困惑していた。
「早く来い、それとも道に迷ってるか?」
道に迷っているという言い回しがただ単に森で道に迷うこと以上のものだということを少なからず理解し、ゼロロは小走りでその後ろを追いかけた。

森に道などあるはずも無く、よく曲がるその人についていくのはやっとだった。
しかも道の途中には熊だの蛇だのが出てきて、ついでに足場が悪い。
前を歩くその人を見失わないようにしようと前を見れば見るほどつまずく回数は増えた。
とまろうとしない彼を追いかけて1時間とちょっと、ようやく少し開けたところに出ることが出来た。
長方形の住居が置かれたように佇むその場所は、人々から孤立した環境だった。
けれども相変わらず止まろうとしない彼を今度はダッシュで追いかけてその家の中に入ったゼロロは、いきなり止まり振り返った彼に思いっきり体当たりしてしまうこととなった。
「はふ!!ご、ごめんなさい!!」
とりあえず謝って見上げると、ちょっと驚いた顔のその人がいた。
「名前は?」
「ゼロロです。」
名前を聞かれて初めて、自分が知らない人について来てしまったのだという事を思い起こさせられた。
「ゼロロか・・・お前今から俺の弟子な。」
「・・・は?」
やはり唐突に切り出した彼にゼロロは困惑する。
「俺について来れたお前にはその資格がある・・・強くなりたいんだろう?」
強くなりたい。
その言葉は思いのほかゼロロの中に反復して広がった。
「強く・・・なりたいです。あなたが教えてくれるんですか?」
彼はその言葉にうなづいて、
「師匠でいいぞ。」
と、初めての笑顔を見せた。
けれども不安は多少あるわけで、ゼロロもここの場所を何度も聞いたのだが
「まぁ・・・拉致されたと思って気軽に学べ。」
それしか答えてくれなかった。
「拉致・・・?ぜんぜん気軽に学べそうに無いんですけど・・・。」
怖さは無かったが、疑問はどんどん湧いて出た。
「多分俺が認めるような実力をつければ、帰り道くらい分かるようになるだろ。」
ということで、ゼロロはこの人の弟子となり、師匠と呼ぶことにしたのだった。

後々思ったことだが、修行の合間の家庭的な雰囲気は嫌いじゃなく、ゼロロにはむしろ楽しくさえ感じられるものだった。
まるで住み込みの家政婦だ、と自分の産まれた豪邸の家政婦を思い出して懐かしく思ったりもするくらいだ。

一緒に暮らしてみると最初の印象はずいぶんと覆された。
聞けば答えるし、どうでもいいことを喋ったりもする。以外に喋る事は嫌いじゃないようだった。しかも優しい。
だからゼロロはものの一週間でなじむことが出来たが、修行は普通に修行らしいものだった。師匠が誰かと戦っているところを見たことが無かったために強いかどうかの判断はつけられなかったが、すごかった。
食事を作ったり掃除をしたりなどの家事は率先してゼロロがやった。
ここにおいてもらい、修行をさせてもらっている身なのだから、というゼロロなりのお礼の気持ちだった。

それからしばらく経つと、師匠はよくどこかへ出かけるようになった。
それが買い物だということに気づいたのは、最初にゼロロにぴったりの服を買ってきたからだった。
その後はどんどん二人分の日用品がそろっていった。
おかげで何の不自由もなく生活できるようになったのは言うまでもない。
というよりも、ここは山奥のはずなのに師匠が疲れた顔をせずにすぐに帰ってきたことに疑問が集中して、ゼロロも師匠の買い物にストップをかけるのが遅くなってしまったからなのだが・・・。



ドロロは屋根の上で一人考える。
爽やかな風が眠気を誘う。
白い猫がやってきたが、ギロロの呼び声ですぐに戻っていった。
ギロロは屋根の上のドロロにも気づいたが、ドロロがにっこりと微笑ですぐにどこかへ行ってしまったので声をかける暇も無かった。

どうして忘れていたのだろうか?
もしかしたら師匠が何かの術をかけたのかもしれない、と一人くすくすと笑っていた。
そうしているうちに基地の廊下を歩き回ってしまった。
ナゼだろう・・・?
師匠を思い出すと落ち着かない。
と、ここでドロロは監視カメラの存在を思い出す。
さっきの一人で笑っていた自分の姿が映ってしまったのかと思うと恥ずかしくなる。なにしろ見ているのはあのクルルなのだから。
そう考えているうちにだんだん心配になってきて、ドロロはクルルズラボへと小走りで向かっていった。



修行を始めて一年目が終わろうとしていた9月、予想もしなかった客が訪れた。
―コンコン、
戸をノックする音に寝起きの師匠と髪を梳かしていたゼロロは顔を見合わせる。
こんなところに来る人なんて・・・そう思いながらゼロロが立ち上がり、戸に手をかけた。
「師匠、誰かに恨まれるような事してませんよね?」
「もちろんだ。」
念のため確認してからそっと戸を引いた。
「・・・。」
そこに居たのはゼロロと年の差感じられないような少年だった。
少年は立てかけてあった刀とキョトンとしている師匠、そしてゼロロを見て口を開いた。
「刃物の使い方を・・・教えろ。」
それが師匠に言った言葉だということがすぐに分かったので、ゼロロは二人が話せるように一歩横にずれた。
少年もそこから中に入り、ゼロロに進められるがままに師匠の前に座り、お茶を飲んだ。
師匠もゼロロから受け取ったお茶を一気に飲み干し、あくび交じりの伸びをした。
「何でこんなところへ?」
最初に問いかけたのは師匠ではなくゼロロの方だった。
「迷っ・・・た。」
あっさりとそう言い切る少年に、ゼロロは目を丸くした。
「そんなこと・・・どうでもいい。刀・・・強い、なら教えろ。」
まっすぐな目で師匠を見つめる。
けれども師匠は何の返答もしようとしない。
とっくに目は覚めているはずなのだが・・・。
「えっと・・・おなか、減ってない?何か食べる?」
ゼロロのその問いかけに、少年はしっかりとうなづいた。



ドロロはクルルズラボの前まで行くと大きく息を吸った。
「クルル殿・・・?」
その一言で魔法のようにドアはすんなりと開く。
中に入ればそこは別世界。ひんやりとした空気が、外で日に当たってきた体に心地よい。
「よぅ。何のようだ?」
振り向くことなく尋ねられる。
「えっと・・・」
そういわれると何と尋ねればよいのか分からない。
まさか「僕が廊下で笑っていたの見た?」なんて聞くことは出来ないだろう。
だが、聞かずともその答えは帰ってきた。
「何か嬉しいことでもあったのか?」
「!!」
「そういや、今日の会議でも変だったよな、アンタ。俺様と誰が同じようなことを言ってたって?」
クルルが心外だとでも言うように顔をしかめる。
ドロロは慌ててそれをごまかした。
「まぁ、いずれね・・・。」
果たしてそれでごまかせるかといえば、そんなわけが無いのだったが。



少年は出されたものを確実に腹の中に収めた。
ゼロロはにっこりと笑いながらそれを見ている。
師匠はというと・・・マイペースなことに、奥で着替えているのだった。
「名前は?」
ゼロロのその問いに少年は「ゾルル」とだけ一言短く答え、また箸を動かし始めた。
聞くべき事も無くどうしようかと考え始める頃、ようやく師匠が戻ってきてくれた。
そこでやっとゾルルという少年も箸を置く。
師匠の服装が少しばかり乱れているような気もしたが、ゼロロが早々に直してくれたために違和感は無くなった。
師匠はゼロロの持ってきたお茶を一口のみ、そっと溜息をつく。
「で?何だって?ゾルル君。」
「師匠聞いてたんじゃないですか。もっと早く来てあげて下さいよ。」
ゼロロはゾルルの横にちょこんと座り、師匠への抗議を口にした。
「まぁ、その辺は気にするな。」
その抗議の声はあっさりと流され、再び沈黙が訪れる。
「刀・・・」
以外にもゾルルが最初に話し始めた。
「教えて欲しいんだよね。」
ゼロロが首をかしげて確認すると、ゾルルの頷きが帰ってきた。
「基礎、だけで・・・いい。」
けれども師匠は何ともいえない表情で考えこんでいた。
「・・・ダメだな。」
やっと出した答えがそれだった。
「師匠!何でです?!」
「何でってなぁ、俺はここで塾を開いているわけじゃないんだぞ?」
「でも・・・」
「それに基礎だけでも2,3ヶ月はかかる。三人で住むっていうのか?ここに?」
「ぅぅ・・・。」
ゾルルは二人の会話をジッと聞いている。
やがてうつむいてしまった。
「ほら、師匠!ゾルル君落ち込んじゃったじゃないですか!!」
「それは落ち込んでいるのか?」
師匠とゼロロの討議は続く。
「第一なぁ、二人でも結構大変なんだぞ?」
「家事一般は僕がやってるじゃないですか!これからも師匠に任せるようなことはしませんから。」
「それでも俺が二人ぶんの修行を積んでやれる自身がない。」
「僕は後回しだって何だって構いません!大変なら最初にゾルル君に基礎を教えてあげちゃってください。それだけでいいって言ってるんですから。」
「あのなぁ~」
ゾルルが顔を上げた。
と、同時に手も動いていた。
「!!」
ゼロロの首に刃物が突きつけられている。
動いたら間違いなく切れてしまうだろう。
「・・・」
師匠が一瞬ピクリと動いたように見えたのは気のせいだろうか。
けれどもきわめて冷静に溜息をつく。
「了承しないと斬るということか?」
ゾルルがうなづく。
ゼロロは「どうしましょうか?」と困った顔をして横目でゾルルを見ていた。
「ぬけられるだろう?練習だと思って。」
「う~ん・・・」
ゼロロは少し考え、そして行動に出た。
瞬時に刃物から遠ざかり、手の長さを利用して拘束した。
「・・・こんな感じでどうですか?ごめんねゾルル君。」
「ん。」
良いという事なのだろうか、短く述べてからゼロロに放すように命じた。
「・・・」
「ゴメンねゾルル君。」
相変わらずゼロロはゾルルの隣に、律儀に正座で座っていた。
それには師匠も何度目か分からない溜息をついた。
「ゼロロ・・・自分のみに危険を及ぼした人のそばにいつまでも居るな・・・。」
「別にゾルル君は危険じゃありませんよ。」
脹れて言うゼロロに、師匠もとうとう折れてしまった。
「全く・・・しょうがない。教えてやる。」
「やった!!よかったねゾルル君っ。」
「・・・ん。」
ゾルルは軽くうなづいて、自分の食べた食器を片付け始めた。
「あ、やるよ?」
ゼロロが慌ててそう言ったが、ゾルルは首を横に振ってそのままスタスタと歩いていってしまった。
「ゾルル君もイロイロと手伝ってくれそうですよ?師匠。」
嬉しそうにニコニコと笑うゼロロに何も言えず、師匠はとりあえず相槌だけをうっておいた。



「まぁいい・・・いずれ聞きだしてやる。そうそう、クソガキから連絡が入ってな。ゾルルがお前と戦いたいんだって騒いでるらしいぜ?どうするよ。」
クルルが口にした名前にに電撃が走った。
「ゾルル・・・君?」
「あぁ。」
ドロロは衝撃を受けたように立ち尽くしていたが、やがて物凄いスピードでクルルに話し始めた。
「ねぇ!ゾルルってあのゾルル!?ガルル小隊の・・・あの切り裂き魔のゾルルなの!?」
「は!?他に誰が居るんだよ。」
ドロロは完全に全てを思い出していた。
「今すぐゾルルと話せない!?」
「出来るけどよ・・・」
クルルはしょうがないと、回線を繋いだ。
いくらかの雑音の後、ガルルがクルルと話をしているのが聞こえる。
「ゾルル頼む・・・あぁ。」
やがてクルルがドロロに席を譲り、二人だけの会話が始まった。
「ゾルル・・・。」
『ゼ、ロロ・・・?』
「ゴメン・・・ずっと忘れてた。師匠のことも、もちろん君のことも・・・。」
『思い、出した・・・のか?』
「うん。今、はっきりと。」
『そう、か。』
「本当に、どうして・・・どうして忘れていたんだろうね。あんな大切な人のこと。」
『さぁな・・・。』
クルルはそっと、後ろでその会話を聞いていた。



二人の修行はその日からすぐに始められた。
ゾルルに合わせて内容は刃物の使い方に変わっていたが、ゼロロにとってそんなことは支障にもならなかった。
「もうちょっと離れろ。ぶつかるぞ。」
師匠については、二人相手というのは大変だということだけ伝えておこう。
「師匠。100終わりました!」
「・・・」
ゾルルはほとんど喋ることなく、ただ肯定と否定だけはきちんと頭をつかって表していた。
「ん~、もう50くらいやってみろ。」
「はい!!」
ゼロロは返事を、ゾルルは頭を縦に振り肯定を示した。
昼にはゼロロが食事を作り、食器洗いは二人でやり、お茶はゾルルが運び・・・。
山の中での平和なひと時は2ヶ月も続いた。

「さて、そろそろ基礎は学べてきた頃だろ?」
「・・・」
首を縦に振り肯定の意思表示をするゾルルは、相変わらず無口なままだ。
「師匠、後どれくらいでこの修行は終わるんですか?」
「1ヶ月くらいじゃないか?」
「・・・」
ゾルルはそっと、お茶を淹れていたゼロロに近づいた。
お盆に乗せたお茶を慎重に師匠のもとまで運んでゆくと、一つの使命を終えたように満足気な雰囲気を漂わせているのがよく分かる。
お茶を淹れるのはゼロロの役目、自分は運ぶ係りなのだと理解していた。
「じゃあゾルル君とはそれでお別れなんですか・・・?」
「そういう約束だったからな。」
ゾルルは横で静かにそれを聴いている。
「でもゾルル君・・・帰るところ、あるの?」
ゼロロの問いには首を横に振った。
「どうするの?」
「軍・・・。」
ゼロロはその答えに驚き、師匠は悟っていたように冷静だった。
「何課に進むつもりだ?」
「アサシン・・・。」
「!!」
ゼロロはお盆を落とし、愕然とした。
「ゼロロ、お前もアサシン課に進むんだろう?」
「何で・・・知ってるんですか?」
師匠はお茶を飲んで一息ついてからそっと、ゆっくりと語りだした。
「誰かを守るために強くなりたいってヤツは、アサシンに進むものだ。」
「・・・」
「ゾルルもアサシンとなれば・・・刀を交えることになるのはそう遠くないな。」
「・・・」
「ゼロロ・・・。」
ゾルルが比較的心配そうに顔をうかがう。
ゼロロは不安も切なさも必死で振り払い、笑顔を見せた。
「大丈夫。僕なんてゾルル君に追いつけるほどの力もつかないよ。」
「・・・」
師匠は複雑そうに見ていたが、やがて手を叩いて修行開始の合図とした。



「何があったかしらねぇが・・・教えてやろうか?」
「何を?」
クルルの突然の発言にドロロも驚く。
「覚えていない、思い出せなかった、急に思い出した・・・の理由。」
「分かるの!?あ、ちょっと待って。」
ドロロはゾルルとの会話を一旦止め、また連絡をすることを約束して準備を整えた。
「軍の記憶消去だ。」
「何で?僕は軍に支障の出るようなことはしていないはず。」
クルルは深い溜息をついて、ドロロから椅子を奪い取った。
「ゾルル。そいつの存在が十分な理由だろ。」
「?」
「アサシンは特別な存在を作ること自体が反則だ。」
ドロロは「あ・・・」とだけ、小さく呟いた。



一ヶ月というのはとても早く過ぎてしまうものだ。
ゾルルは剣術などをマスターし、それ以上を求めることはしなかった。
ただゼロロだけは、複雑そうな顔をしてその間を過ごしていたのだが。
「以上、免許皆伝だ。」
「ありがとうございました!!」
ゼロロは頭を下げて御礼をし、ゾルルもまた同じようにした。
けれどもゼロロが頭を上げた後でも、ゾルルはいつまで経っても頭を上げようとしない。
「ゾルル?」
師匠がそっと声をかける。
「・・・世話に、なった。」
キッパリとそれだけ言い、ゾルルは顔を見せる前に後ろを向いてしまった。
特に持ち物も無いゾルルのことだ、このまま軍へと向かうつもりだろう。
「突入する気か?」
「それ、しかな・・・い。」
「試験を受ける気は?」
首を横に振られる。
「・・・通っている時間も無いか。」
今度は縦に振る。
「生きる・・・必要が、ある。」
「そうだな。」
ゾルルが歩き出す。
けれどもそれはもう一つの声によって止められる。
「ゾルル!!」
「ゼロロ・・・。」
「もう行っちゃうの?休んでいかないの?僕たち・・・ここでお別れなの?」
儚げに見つめる瞳は一転の曇りもなく、純真に誰かを想う眼だった。
「・・・」
これにはゾルルも何も言うことができない。
「これをもって行かせるか。」
師匠がゾルルに何かを投げた。
「これ、は。」
「お前が使い慣れているだろうからな。修行で使ってるのと同じものだ。」
ゾルルはその刀をじっと見つめ、ギュッと握り締めた。
微かに視線が泳いでいる。
「ゾルル・・・ゾルルッ!」
しばらくじっと下を向いていたゼロロは、ゾルルに駆け寄り、真正面から飛びついた。
「!!」
ゾルルも流石に驚いたようで、ゼロロを抱きとめたまま顔を赤く染めてあたふたしている。
「もし、もしもだよ?僕もアサシンになれたのなら・・・もう一度、もう一度刀を交えてくれる?」
後半は声が震えていた。
ゾルルはゆっくり、そしてしっかりとうなづき、抱きとめた両腕を使ってゼロロをきつく抱きしめた。
「約束・・・しよ、う・・・。」
ゼロロは嗚咽をこらえながら、けれども透き通る涙を流しながら、ありがとうと呟くのだった。



「僕は自分で言った約束を覚えていられなかったんだね。ゾルルは、あんなに必死に僕を追いかけてきてくれたのに・・・。」
ドロロがうつむいた。
そんな表情のドロロを見たクルルも、表情を曇らせる。
「記憶消去か・・・知らなかったな。まさか自分がね?」
今度は無理に笑いながら、相槌を求めるように問いかけた。
「そうだな。俺の集めた情報にも、アンタが記憶消去を受けたなんて書いてなかったぜ。」
「うん。そうだろうね。」
そうしてまた、沈黙の時間が訪れる。



「師匠・・・静かですね。」
ゾルルが去っていた後の室内はやけに静かに感じられた。
「喋るヤツじゃなかったのにな。」
「静か過ぎです・・・もっと、一緒に居たかったな。」
ゼロロは寂しそうにそう呟いた。
そんな弟子の姿を、師匠は視線だけで見守っていた。

夜、虫の声も小さくなってきた季節。
寒いと感じてしまうような冷気も吹き抜けてゆく。
「師匠、寝ないんですか?」
師匠は体が冷たくなるのも構わずに外を眺めていた。
ゼロロがそばに寄っても「ん」としか反応しない。
「師匠?」
流石に心配になったゼロロは、肩をチョンと突いてみることにした。
「・・・えいっ。」
「!!」
必要以上に驚く師匠に逆にビックリしてしまった。
「ゼロロ!」
「何でそんなに驚くんですか!?そんなに無心状態だったんですか!?」
思ってもいなかった出来事に逆切れまでしてしまう。
「あー、えっとだな・・・別にただの考え事だ。」
「本当ですか?」
疑わしく顔を覗き込んでみるが、逆に真正面から見つめ返されるとどうも顔が笑ってしまう。
「全く・・・。」
そう腕を組む師匠の顔にも、微笑が浮かんでいた。
「クシュッ!」
ゼロロがくしゃみをしたのと同時に、今は寒い夜なんだということを思い出す。
「そろそろ寝ないとな。」
「そうですね。それにしても少し肌寒いです。」
戸を閉めている師匠の背に向かってそう告げると、師匠は振り向いて口元を緩めた。
「じゃあそうだな・・・」
そうしてゼロロを手招きし、自分の布団の前で止まる。
「ん~~、あ。」
わざとらしく手を打って、師匠はゼロロを引っ張り、そのまま布団へとダイブした。
「!ししょっ!!」
いきなりバランスを崩されたゼロロは当然の如く布団に引き込まれる。
師匠は軽い手つきで上にゼロロと自分の二人分の布団をかぶせ、バタバタしていたゼロロをしっかりと引き寄せる。
「これで寝る気ですか!?」
「暖かくないか?」
確かに暖かかったが、それ以上に頬が熱くなっていくのを感じていた。
「・・・」
「ダメか?」
その問いはゼロロの最も弱い問いかけだった。
「別に・・・良いです。」
赤くなった顔は暗いおかげで見られる心配は無かったが、心臓の鼓動は抑えきることは出来ない。
「緊張するか?」
「・・・今度は眠れません。」
師匠はクスクスと笑い、さらに近くまで体を寄せた。
「寒いといったのはお前だからな。」
「予想外ですよ・・・。」
けれどもその体温は心地よく、心臓のリズムも手伝って、やっと眠気がやってきた。
「お休み。」
「おやすみなさい・・・。」
師匠のにっこりした笑顔を見るのは久しぶりのことだった。

___________(続く)

もうすぐ書きおわ・・・・

2007年09月07日 08時16分30秒 | ☆一言
今クルドロお題「じゃあね」をがんばって執筆中です。
執筆と言っても、タイピングですから筆は使いませんけどね。

そろそろお題もクライマックスなので、珍しく長いです。
二部に分かれています。
一回後半が全て消えたので物凄く絶望していますが、これを書き終わらないと・・・。
次のお題へ早く進むためにも、出来るだけ早く書き終わるようにしたいと思います。
最近お題更新できてませんからね。
さすがに難しいです。

では、出来るだけ早く書き終わろうと思っているので、今後もよろしくお願いします。