日曜の午後、山響モーツァルト定期「アマデウスへの旅」第6年、第16回交響曲全曲演奏定期演奏会を聴きました。音楽監督の飯森範親さんによるプレトークの中で、印象的だったのは、ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲の説明です。飯森さんは、ヴァイオリンはモーツァルトで、ヴィオラはザルツブルグの大司教と考えたい、とのことです。その理由は、ヴィオラの調弦の仕方が、半音上げて行う、いわゆるスコラダトゥーラという変則的なものであること。こうすることにより、「意地悪な感じ」が出る、というのです。ふーむ。おもしろい!
さて、楽員の皆さんが登場。例によって、女性奏者の皆さんの多くはカラフルなドレスで、たいへん華やかです。最後に登場したソロ・コンサートマスターの高木和弘さん、髪の毛を耳の前の方でくるりとカールさせて、モーツァルトの時代のロココ風を意識したのでしょうか(^o^)/
ステージ上には、向かって左から、第1ヴァイオリン(8)、チェロ(5)、ヴィオラ(5)、第2ヴァイオリン(8)が配置され、中央奥に、フルート(2)とオーボエ(2)、さらにその奥にホルン(2)とファゴット(2)が位置し、いちばん後方にはコントラバス(3)が陣取ります。
交響曲第12番ト長調K.110は、1771年7月にザルツブルグで書かれたものだそうです。だとすると、モーツァルトがおよそ15歳のときの作品ということになります。日本で言えば中学三年生にあたる年頃で、なんて生意気で、なんて立派な中学生なんでしょう!
第1楽章:アレグロ、4分の3拍子。活発で生気に富む音楽です。第2楽章:アンダンテ、2分の2拍子、ハ長調。ホルンがお休みするかわりに、フルートとファゴットが活躍します。優美な緩徐楽章です。第3楽章:あまり踊りを感じさせないメヌエットで、ホ短調のトリオ部では第1・第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの各トップが、五重奏を繰り広げます。これが、室内楽みたいで実に良いのです。再びメヌエットに戻ります。第4楽章:アレグロ、4分の2拍子。弦楽セクションの推進力が感じられます。
続いて、ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲、変ホ長調K.364です。シンフォニア・コンチェルタンテとも呼ばれる協奏交響曲は、18世紀の後半から19世紀初頭にかけて流行したジャンルだそうですが、この曲は、モーツァルトの現存する唯一の作品だそうで、当方たいそうお気に入りの曲目でもあります(*)。本日の演奏会に期待する最大の作品は、実はこれだったりして(^o^)/
楽器編成は少しだけ変わりまして、左から第1ヴァイオリン(6)、チェロ(3)、ヴィオラ(4)、第2ヴァイオリン(6)、正面奥にナチュラル・ホルン(2)、オーボエ(2)、さらにその奥にコントラバス(2)と、ぐっと小さな編成になります。独奏者は、ヴァイオリンが犬伏亜里さん、鮮やかな濃青色のドレスで登場。メガネを取ったら、ちょいとドキッとするほど印象が変わりました。そしてヴィオラは、成田寛さん。いつもの細縁のメガネをかけて、シュロモ・ミンツさんのような黒のソフトな上衣を着ています。想像するに、自由に動きやすいんでしょうね、きっと。
第1楽章:アレグロ・マエストーソ、変ホ長調、4分の4拍子。独奏楽器が入ってくる前の、オーケストラだけの序奏部が終わり、満を持して独奏ヴァイオリンが入ってきます。続いてヴィオラも。今回、成田さんは半音上げた変則調弦で挑戦しているそうで、なるほど、ヴィオラの音がくぐもった音になって聞こえます。ザルツブルグの大司教の声は、キーが高かったのでしょうか(^o^)/
第2楽章:アンダンテ、4分の3拍子、ハ短調。ここは、ほんとに悲哀を感じさせるところです。それとも、モーツァルトが、思い通りにならないことを愚痴っているのでしょうか。編成が小さいだけに、独奏楽器とのバランスも絶妙です。
第3楽章:ロンド。プレスト、4分の2拍子。古楽奏法を取り入れ、はつらつとした、山響の実力を遺憾なく発揮した音楽です。ふだん聴いている、大オーケストラによる20世紀後半の演奏よりも、ぐっと軽やかで生き生きとしていて、澄んだ音色の演奏になっています。
ところで、客席の最前列中央のかぶりつきでじっと聴いていた女性、後ろに束ねたヘアスタイルや後ろ姿から、某今井さんかな?と思いましたが、いかに?
さて、ここで15分の休憩です。
後半の曲目は、交響曲第35番、ニ長調K.385「ハフナー」です。同い年の故郷の友人ジークムント・ハフナーが貴族に列せられることを祝って書かれたセレナードをもとに、これを抜粋して交響曲にしたものらしいです。
楽器編成は、フルート(2)、オーボエ(2)、クラリネット(2)、ファゴット(2)、ホルン(2)、トランペット(2)、ティンパニに加えて、弦楽合奏です。ところが、この構成がいささか変わっておりまして、第1ヴァイオリン(9)、第2ヴァイオリン(8)、ヴィオラ(7)、チェロ(5)、コントラバス(3)という具合に、ヴィオラの増強が目につきます。これは、白っぽい色のドレスに着替えてメガネをかけて、ヴァイオリンに犬伏さんが加わり、成田さんも着替えないままにヴィオラの席に座っていることもあるのでしょうが、曲目によって編成の大きさを変えている音楽監督の意図が感じられます。
第1楽章:アレグロ・コン・スピリト、4分の4拍子。速いテンポで劇的に。全体的に、響きが中低音に厚みが感じられます。
第2楽章:アンダンテ、4分の2拍子、ト長調。フルートとクラリネットはお休み。ヴィオラの増強が生きていると感じます。
第3楽章:メヌエット。同様にフルートとクラリネットはお休み。あまり舞曲という感じは受けませんで、いかにもセレナード風に音楽が進みます。おや?第1ヴァイオリンだけがクレッシェンドして音を持続し、他のパートは全部お休みする中、いきなり再開されますが、飯森さん、少しジャンプしたみたい。繰り返しでメヌエットのはじめに戻ってから終わりになったのでしょうか。
第4楽章:プレスト、2分の2拍子。フィナーレはプレストで。素人音楽愛好家には、音符がいっぱいあって、自宅に戻ってからスコアを追いかけるのもたいへんです。でも、演奏会ではそんなことは考えず、ひたすら聴いて楽しむだけで、いかにも祝祭的なフィナーレです。
終演後、拍手の中で音楽監督が少しだけ宣伝をしました。それは、17日までの限定ですが、インターネットの日経チャンネルで、先の「さくらんぼコンサート」東京公演のうち、西村朗さんの新作とブラームスの2番を、全部無料で聴くことができます、というものでした。それは、
これ ですね。
そうそう、もう一つ、この「アマデウスへの旅」演奏会のスタンプラリーで、いつのまにか12回を超えていましたので、山響のCDをいただけることになっていました。そこで、終演後にいただいたのが新譜「ブルックナーの6番」です。
実際に演奏会も聴いている(*2)だけに、これはうれしい。次は、来春に予定されているブルックナーの7番だな、と、ヒソカに狙っております(^o^)/
(*):
モーツァルト「協奏交響曲」K.364を聴く~「電網郊外散歩道」2006年1月
(*2):
山形交響楽団第212回定期演奏会でブルックナーの「交響曲第6番」を聴く~「電網郊外散歩道」2011年4月