電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

佐伯泰英『驟雨ノ町~居眠り磐音江戸双紙(15)』を読む

2009年02月13日 06時18分08秒 | -佐伯泰英
前巻で、無事に日光社参における役割を果たした坂崎磐音クン、久々に父・正睦に会いたいところですが、無断脱藩の身の上です。佐伯泰英著『驟雨ノ町~居眠り磐音江戸双紙(15)』は、そんなところから始まります。
第1章「暗殺の夜」。この章では、父正睦が、藩主実高とともに江戸城に招かれ、猿楽見物の席で、佐々木玲圓に会い、言葉をかわします。しばらくして、今度は正睦が、豊後関前藩の屋敷に、今津屋・若狭屋らを招き、藩主実高が直々に藩財政再建への協力を感謝する場を設けます。磐音も今津屋の後見として同席しますが、その席で、酔った勢いで由蔵さんがズバリ言っちゃった。

ご家老様、坂崎家のご嫡男には町娘にても構いませぬか

一応失礼を詫びた形にしてはいるものの、ちゃんとOKを取るとは、さすがに由蔵さんは老練な商売人です!
今度は磐音クン、宮戸川の屋根舟に、おこんさんと一緒に正睦・金兵衛の二人を招きます。で、正睦さんが金兵衛さんに、「倅の嫁に貰えぬか」と正式に申し込み。我が家の娘なら、「貰うだのくれるだの、アタシはモノではな~い!」と息巻きそうですが、一応舞台は江戸時代ですので、双方の親が承知しなければいけないわけですね。
最後の福坂利高による正睦暗殺未遂事件は、豊後関前藩大粛清の前触れとなりました。
第2章「暑念仏」。関前藩大粛清の後、磐音、おこん、由蔵が正睦らの船を見送ります。今度の難儀は、宮戸川で奉公中の幸吉の失踪です。おそめは気が気でないようですが、ことは単に幸吉の焦り、せっかちにすぎません。しかし、これに事件・捕物がからむとなれば、安否が気づかわれます。
第3章「鰍沢の満エ門」、第4章「富士川乱れ打ち」は、捕えられた盗人一味を護送する役目を引き受けた、磐音・柳次郎・武左衛門のトリオの苦難(?)の顛末です。正直、なんで南町奉行所のお役目を民間人が引き受けるのか、面白いことは面白いのですが、なんともこのむちゃくちゃな想定の理解に苦しみまする(^o^)/
第5章「蛍と鈴虫」。例によって3,500両を手にしたのは南町奉行所の笹塚孫一ですが、話の流れがいささか強引な展開のような気がしないでもない。むしろ、今津屋を狙った押し込み未遂事件解決のユーモアや、幸吉・おそめの再会のエピソードの健気さ・可愛さの方が、ずっと印象的でした。

どうも、前巻の日光社参という大きな流れの後のせいか、鰍沢の満エ門の話が、なんだか唐突な、座り心地の悪いエピソードに感じられてしまいます。また、作者の展開の常として、磐音とおこんの仲が少しずつ進展するたびに、引き立て役のように悲劇のヒロイン白鶴太夫こと小林奈緒さんが登場しますが、たぶん次巻で出番があるのでは?そんな野次馬気分も含めて、次巻に期待、といったところでしょうか。
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堀内都喜子『フィンランド 豊かさのメソッド』を読む

2009年02月12日 06時38分57秒 | -ノンフィクション
書店で平積みになっていた中の1冊、集英社新書で堀内都喜子著『フィンランド 豊かさのメソッド』を読みました。帯に大きく表示された「子どもの学力調査(PISA)1位、国際競争力ランキング4年連続1位の秘密」が見えるかという、ややミーハーな興味もありましたが、昨秋、数名のフィンランドの娘さんたちをお世話した際に、同国の事情に興味を持ったという理由もあります。
本書の構成は、次のようになっています。
第1章 不思議でとても豊かな国~失業率20%から国際競争力1位へ
第2章 学力1位のフィンランド方式~できない子は作らない
第3章~税金で支えられた手厚い社会~独立心が旺盛でたくましい女性
第4章~日本と似ている?フィンランド文化~異文化コミュニケーション
内容は非常に面白く、興味深いものでした。
社会体制が違うので日本との単純比較はできないのだろうと思いますが、要するに経済復興のために取った方策が、教育の質を上げることで国民の学力レベルを上げ、徹底したIT化と省力化で人件費を削減、高い税負担は社会保障の充実と使途の透明性を確保することで理解を得ている、ということのようです。
ただし、人口は少ないのに失業率は高く、リストラによる雇用不安も存在します。高い教育需要の背景には、学歴社会と失業問題もあるようです。実際、昨秋お世話した娘さんの一人は、働き口が決り、「働くところがあって嬉しい」とメールに書いて寄越しました。
著者が現地の大学院で学んだ体験から書かれた本書は、どうしても社会の底辺や暗部は視野に入って来ていないようですが、知られざる国の教育や福祉のレポートとして、興味深いものがあります。
個人的にとてもウケた一節:

フィンランドの場合、義務教育では男女の比率は半々だが、高校になると女子が6割を占め、大学でも女子の方が男子より多い。どうして女子の方が成績が良く、向学心が強いのか。その理由はよくわからないが、友人曰く「女子は将来を考えて学校に通うが、男子は女の子のことばかり考えて学校に通うから」なのだそう。(同書p.72)

若い頃を思いだし、いささか心当たりがなくもないだけに、思わず苦笑い(^o^;)>poripori
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次ページからは会員限定?そんなときどうするか。

2009年02月11日 07時42分21秒 | ブログ運営
ネット上で見つけた記事を読んで次ページに行こうとしたら、そこは会員限定で、ログインするには会員登録をしなければならない。そんなケースがよくあります。私の場合は、通例そういう場合にはすぐにおさらばしてしまい、わざわざ会員登録したりはしません。この理由は、

(1)必要以上に個人情報を供給するつもりはない(*)こと、
(2)仮に会員登録をしても、そのサイトを定期的に訪れることはまれで、ログインIDもパスワードも、とても覚えていられないこと、
(3)第1ページめの筆者の書き方で、展開される内容はほぼ見当がつき、実際には確かめるためだけにログインするような場合が多いこと、
などです。

会員登録しても読みたいというサイトは、仕事や趣味に適合した、何度も繰り返し訪れるところで、こういうサイトは何度も会員登録画面に出くわします。5回も6回も出てくれば、これは意味があるかも、と判断するわけです。

(*):もっとも、個人情報をすべて真正直に記入しているわけではありませんが(^o^;)>poripori
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藤沢周平『闇の傀儡師』(下)を読む

2009年02月10日 06時29分04秒 | -藤沢周平
文春文庫の藤沢周平著『闇の傀儡師』下巻は、「春の雷鳴」の章の続きから始まります。
自裁した亡妻織江と行方不明の都留という二人姉妹の父親が、娘を探して源次郎のもとを訪れ、織江は諦めたが都留は助けてくれと言い残して行きます。源次郎は、八嶽党の一味のお芳を尾行し、武家屋敷に踏み込みますが、八木典膳という髭の男との闘いの途中で穴に落とされます。そこには、都留が捕らえられておりました。都留さんは安堵したのでしょう、心の抑制を解き放ち、思わず源次郎にすがりつきます。
源次郎・都留の二人が地下の座敷牢に捕らえられているうちに、将軍世子家基の鷹狩は順調に行われているように見えましたが、枝が撥ねて首筋を打ったあたりが赤くなり、家基さんは吐気を覚えます。さらに休息した東海寺で喫した茶にも、とどめの毒が仕込まれていたようで、二日後に崩御してしまっていました。
「暗い雲」
座敷牢での二人の生活は、すぐに殺そうとするものではないようで、都留はむしろ二人の時間を喜んでいるふうでもあります。そんな中で脱出の契機をつかむだけでなく、八木典膳が八嶽党の仲間を裏切り利用しているにすぎず、八嶽党も早晩崩壊することを知ります。長屋にもどると、世子家基の逝去を確認、老中松平右近将監は田沼の動きが一橋の策であると指摘します。しかし館林侯こと右近将監は病に倒れ、死去します。松平上総介は源次郎に引き続き協力を求めますが、源次郎はやんわりと断り、権力闘争から徐々に手をひきます。
「辻斬り」
一橋侯は、田沼のやり方を批判して見せ、松平上総介をも言いくるめます。このあたり、なかなかの狸です。偶然に助けたお芳の話では、八嶽党の者たちが次々に辻斬りに襲われ倒されていき、内部に裏切り者がいるのではないかと疑心暗鬼になっているとのこと。別件ですが、細田民之丞の苦悩はまた、異父妹ゆきの苦悩でもあったのでしょう。
「世子評定」
八嶽党の内部の裏切りは陰惨さを増し、ついに八木典膳は首領格の津野弦斎をも倒します。長屋に訪ねてきた伊能甚内からお芳の死を告げられ、源次郎は怒りを覚えます。一橋民部卿が策したわなにはまり、田沼意次もまた、ただ一言が命取りになってしまったようです。それにしても、大納言忠長の遺児が女子とは驚きました。そういえば、『用心棒日月抄・凶刃』でも、遺された娘にまつわる因縁が背景となっておりました。
「風刀・雷刀」
家基の急逝により、一橋の豊千代が将軍家治の養子に決まりますが、世間の暮らし向きはいっこうに変わらず、むしろ細田民之丞の画境は実際の異父妹ゆきよりも清らかな気品を帯びてきます。源次郎は、赤石道玄と大師匠・興津新五左衛門の試合に立ち合いますが、忠長の遺児・奈美を殺害しようとする一橋民部卿と八木典膳が放った隠密の一団の襲撃を受け、伊能甚内と協力する形で、これを撃退します。しかし、赤石老人は奈美をかばい落命、伊能甚内と二人、郷里に戻り幸せに暮らせと言い残します。源次郎は叔父から八嶽党抹殺の刺客が放たれたことを聞き、これまでの経緯もあり、八嶽党の残党の帰郷を見届けるために出立を決意します。その夜、源次郎は、生死を賭けることとなる闘争前の緊張感の中で、妻の裏切りの記憶を捨て、津留のひたむきな思慕に応え、初めて臥所を共にするのでした。
「往きて還らず」
せっかくの最終章のあらすじは省略いたしましょう。伝奇小説ながら、対決の重厚な描き方は読み応えがあります。

藤沢周平の作品の中では、甘いラブロマンスや色っぽさはごく抑制されたものとなっており、津留と初めて結ばれる場面の、いささかぶっきらぼうな描き方などは、むしろ女性には支持されにくいものかもしれません。ですが、上下二巻におよぶ物語は、八嶽党や隠密たちの過酷な定めとともに、異父兄妹の哀れな運命や、妻の裏切りによる痛手がその妹によって癒されるという、近親間の境遇の明暗をも描きわけ、苦さの中にも救いのあるものとなっています。
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ONKYOのUSBオーディオ製品を試す

2009年02月09日 06時22分09秒 | クラシック音楽
先日、ONKYO のダイレクトショップで、いわゆる「わけあり商品」の特売(*)をしているのを見つけ、7,980円というお値段に引かれ、だめもとで購入してみました。先にダウンロードしていたロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の MP3 音源の再生がなかなか魅力的なものですから、S/N比の悪いコンピュータの音をアンプで増幅するのではなく、USB 音源をアンプにつないだらどうだろうと考えた次第。製品名は、ONKYO の SE-U33GX+ というもので、「新品未開封箱不良品」と表示してありました。同社の製品ランクとしては普及型のレベルですが、特徴としては、MM式カートリッジによるLPレコード対応が挙げられます。ポータブルのノートパソコンに本製品を USB 接続し、使い慣れたレコードプレーヤーの音を取り込むこともできるようです。



まずは、自宅の WindowsXP 機に USB 接続し、Administrator で起動すると、デバイスドライバが自動的にインストールされ、添付の CD-ROM も全く使いません。音楽 CD を再生してみると、やっぱり再生音がだんぜん違います。一番嬉しかったのは、ヘッドホンで聴いてもノイズに悩まされることがなくなったこと。愛用している SONY の本式のヘッドホン(DR-6M)を持ち出し、プリメインアンプに接続して、アシュケナージのピアノで、ベートーヴェンのピアノソナタ第3番を聴きました。イヤホン型のものよりも、再生音が、特に低域が、ずっと豊かに感じられます。



では、Linux ではどうだろうか?

USB 端子を hp のデスクトップ s3450jp/CT に接続しなおし、電源を入れます。すでに WindowsVista は削除してしまい、160GB が Linux 専用となった Ubuntu-Linux 8.04LTS に、「アプリケーション」の「追加と削除」メニューから「サウンドとビデオ」の ALSA Mixer にチェックを入れ、導入しておきます。「システム」の「設定」メニューから「サウンド」を選び、「デバイス」の「楽曲と動画」を「USB Audio」に設定してやると、難なく音楽が流れ出しました。数年前には考えられなかった、驚くほどの簡単さです。
スクリーンショットは、音楽再生の Rhythmbox です。画像は実際よりもやや縮小してあります。



自作バスレフ箱に入れた Fostex の FE-103 から、ノイズの少ない音がくっきりと聞こえます。せっかくの小型スピーカの定位のよさを生かすために、なんとかスタンドを工夫し、せめて左右の高さと位置をそろえたいものです。今後の課題といたしましょう。

(*):e-ONKYO アウトレット
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画面デザインを変更しました

2009年02月08日 13時34分47秒 | ブログ運営
文字がにじんで読みにくいという声があり、少々気になっていた画面デザインについて、思い切って変更してみました。採用したテンプレートは、色のイメージの連続性に配慮し、「シンプル」カテゴリー中の「クリア・オレンジ(左)」です。文字色は黒々と濃く大きめに、写真が生きるように、背景は明るめのものにしたい。また、本文中に「画面左のサイドバー」とか「左下の検索ボックス」などの表現がありますので、検索ボックスは左側になければ困ります。そんな条件で、長く飽きのこない、シンプルなものを選びました。当面、これで継続したいと思います。
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ベートーヴェンのピアノソナタ第1番を聴く

2009年02月08日 08時42分19秒 | -独奏曲
若い時代のベートーヴェンの作品には、晩年には見られない、若々しく活動的な魅力があります。「モーツァルトやハイドンの影響を受け、未だベートーヴェンたりえていない作品群」とは決して言えない、「若いベートーヴェン」という独自の魅力の宝庫です。一例を挙げれば、ピアノ協奏曲第1番や弦楽四重奏曲第1番、そして作品2という番号を持つ、第1番から第3番までの3曲のピアノソナタなどです。この中で、今回聴いているヘ短調のピアノソナタ第1番Op.2-1は、1795年8月30日にハイドンの前で演奏したという、作品2の3曲中の最初の曲目。おそらく、当時のベートーヴェンにとっての自信作だったのでしょう。三つの曲の中では最も悲劇的な気分を持ち、作曲年代は不明とのことですが、ボン時代のものらしい。

第1楽章、アレグロ。ジャンプするようにスタッカートで上行する第1主題が、たいへん印象的です。逆に、第2主題のほうは、対比するように下降する音形が主となっています。悲劇的な気分を持っていますが、リズムは活発に動き、静止した彫像のような悲劇性ではありません。
第2楽章、アダージョ。ドルチェ(dolce)で始まる優しく美しい音楽。後年の、深淵を覗き込むようなアダージョではなく、ちょっとセンチメンタルな要素もなくはない、緩徐楽章です。
第3楽章、メヌエット:アレグレットで。繰り返しの表情が同じではなく、微妙にニュアンスを変えています。スケルツォと言ってよいほどに、すでにロココ風な優雅さではありませんが、それでも充分にチャーミングな短い楽章です。
第4楽章、たたきつけるような激しさを持ったプレスティッシモ。途中、sempre piano e dolce な部分もありますが、再び激しく速い主題に帰ってきます。全体として、動機を展開していく多面性、見事さを感じさせる曲になっています。

ピアノ独奏はウラディミール・アシュケナージで、LONDON POCL-3401という正規盤。第4楽章に頻出する下降スケールみたいなフレーズも、淀みなく一気に、実に見事の一言。1976年から79年にかけてアナログ録音されたもので、なにやらレコード・アカデミー賞とやらを取ったのだそうな。DECCA のアナログ方式のピアノ録音は、通勤の車中ではもちろん、自宅のステレオ装置で聴いても充分に美しいものです。

■アシュケナージ(Pf)
I=5'24" II=4'20" III=3'21" IV=7'10" total=20'15"
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本日夕方、NHKで「手塚治虫 漫画 音楽 そして人生」という特集番組

2009年02月07日 15時24分44秒 | Weblog
出張帰りの週末、自宅に戻り、何気なく新聞の番組欄を見ていたら、NHKの「プレミアム10」(*)で、「手塚治虫 漫画 音楽 そして人生」という番組が放送される予定だそうです。ネットで番組予告を見ると、なかなか興味深いものがあります。本日16時45分から18時まで、これはぜひ録画しながら観てみたいものです。

(*):「手塚治虫 漫画 音楽 そして人生」~NHK番組表より
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ブログ記事に取り上げる本と取り上げない本

2009年02月07日 08時53分31秒 | 読書
当ブログには、読んだ本の感想等を記事としておりますが、実は読んだ本を全部記事にしているわけではありません。記事にする本は、結果的に、なんらかの形で整理して記事にしたいと思わせるものがあった、ということになります。逆に、読むことは読んだが記事にしていないものは、

(1) 個人的に参考にしたが、記事にするトピックスが見当たらない本。
(2) 自分の力では理解できなかった、手に余る本。
(3) 特に何の印象も残さなかった、素通りした本。
(4) 意図的に、黙殺することとした本。

のいずれかになります。(4) の、「意図的に、黙殺」とは穏やかならざる物言いですが、考え方・感じ方の相違というのはあるもので、たとえば著者はなぜこのような残虐な場面を何度も描くのだろう、と疑問を持つ場合などは、記事として取り上げるために再読したり内容を整理したり、要するに時間を使いたくはないからです。

残り少ない人生、平凡な中でも、せめて楽しく快く美しいもの、面白いもの、感動できるものを読みたいと思います。
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ヨーグルトの育て方の工夫(2)

2009年02月06日 23時50分10秒 | 料理住居衣服
やってみました。牛乳500ccに市販のカスピ海ヨーグルトを中さじ1杯、さらにややくたびれた自家製カスピ海ヨーグルトを小さじ1杯、これをよくかきまぜて容器をタオルでぐるぐる巻きにし、今は気温が低く寒いので、湯沸しポットに接するようにして、ほんのり暖かさ(30度以下)を維持するようにしたら、見事にとろり感が復活したヨーグルトができました。

さらにこれを種菌にしてもう一度「培養」し、成功を確認。スターターとして自家製の種菌が少し残っていれば、いつでも市販のカスピ海ヨーグルトを買ってきて、リフレッシュさせることができることがわかりましたので、かなり安心できます。

今晩は、バナナとヨーグルトをブルーベリー・ジャムでいただきましょう。ベートーヴェンのピアノソナタ第1番を聴きながら、コーヒーが格別に美味しく感じます。
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ヨーグルトの育て方の工夫

2009年02月05日 07時10分11秒 | 料理住居衣服
当方、知人にいただいたカスピ海ヨーグルトを、かなり長期間にわたり、「培養」してきています。残念ながら、長い年月の間には雑菌の混入が避けられないためか、独特のとろり感が低下し、なんだか情けない出来上がりになりつつありました。

最近、単身赴任でスーパーの食品売り場をめぐるうちに、市販のカスピ海ヨーグルトを見つけました。もしかしたら、これを種菌として使えないだろうか、という考えが、ふと頭をよぎります。

ところが、そうは問屋が卸しません。某社のカスピ海ヨーグルトのパッケージには、ちゃんと種菌には使えません、と書いてあります。当方はなんでもやってみるのが信条ですので、まずはやってみました。なるほど、増えません。おそらくは、常温で乳酸発酵が進むクレモリス菌等の特性から、流通時の変質を防ぐために、増殖のフェーズをコントロールしているのかと思います。

それなら、当方の、ややくたびれた種菌をスターターに加えてやれば、うまくいくかもしれない。さて、どうか?

【追記】
今晩から出張です。明日は遅い帰宅になる予定。更新はできるかな?行ってきます。
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春の足音

2009年02月04日 07時11分07秒 | 季節と行事
一番夜の長い冬至を過ぎてはや40日以上経過し、近ごろはだいぶ日が長くなってきた(*)と感じます。1月下旬から2月上旬、厳冬期に晴天の日があると、太陽熱であたり一面の積雪の表面が融解し、その水分が夜の放射冷却で固く凍り、いわゆる「かた雪」になります。体重の軽い子供ならば足が雪の中に沈まず、あたり一面の固雪の上をどこまでもまっすぐ歩いて行けるのです。この快感は、大人になった今でも忘れられません。残念ながら、体重が重くなったために、大人は少々雪の中に足がめりこんでしまうのですが、注意して歩けばけっこう歩ける日もあります。
固雪ができると冬はピークを過ぎて、もうすぐ春の到来です。固雪の上を歩く子供の笑い声は、春の足音に聞こえます。

(*):山形市の日の入りの時刻は、夏至の6月22日に19:06、冬至の12月22日に16:22となっています。183日間の差は164分。1日に0.90分ずつ日の入りの時刻が遅くなっていますので、40日では36分。たしかに、夕方にまだ明るいと感じます。日の出の時刻も12月22日に6:52だったのが6月22日には4:16と早まります。183日で156分の差。1日あたり0.85分ずつ早くなりますので、40日では34分も早くなる計算になるのでしょうか。
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映画「おくりびと」を観る

2009年02月03日 06時33分43秒 | 映画TVドラマ
ついにオスカーの候補作にもなった、映画「おくりびと」を観て来ました。秋に上映が始まったときは、老父の葬儀の直後でもあり、とても観る気分にはなりませんでしたが、最近いろいろと話題にのぼるたびに、内心残念に思っておりました。そんな気配を察したのか、妻が東根市の「たんとくるセンター」での上映チケットを入手してくれましたので、先週末の午前の部に、二人で行ってきました。



全席完売だそうで、すごい人出です。なんでも、同市内の老人クラブでも多数参加しているのだそうで、テーマがテーマだけに、大丈夫なのかい?と心配しました。でも、それはまったくの杞憂でした。ほどよい笑いあり、ちょいと切ないエピソードありで、納棺師というなじみのない職業を通じて、人の世の生と死を見つめます。しかも、抽象的な生と死でなくて、どちらかというとこの世に残された側にシフトした見方です。
NKエージェントの女事務員を演ずる余貴美子さんが、棺桶を前にしてのセリフ「人生最後の買物は、自分では決められないのよね~」。いやいや、今は全部自分で決めて、覚悟の上で旅立つ人もいるのですよ。しかしこの女優さん、いい味出してますね~。巷で一時話題となった、ヒロスエさんが出てくる映画を、始めて見ました。なんだか蒸留水みたいな人ですね~。

美しい庄内の自然の中にあって、スナック「和」の内装は不思議なレトロ感たっぷりです。三角形のテーブルも、レトロでモダン。昔の西洋館ふうのNKエージェントの建物も、ローカルでありながら地元の伝統の中ではやや異質な存在として受け入れられていることを象徴しているようです。涙もたくさん流れましたが、後味の良いものでした。

そういえば、昔は葬儀屋さんというのは、町にしかないものと思っておりました。家族の誰かが亡くなれば、地域の長老や和尚さんの指示のもとに、その家の主や嫁さんが、死者の体を浄め、死装束を整えたものでした。死後硬直の起こる前に、下顎骨が下がらないように包帯や手ぬぐいで顎をしばっておくことなども、青年期に何度か目にして覚えました。いつのまにか、家族が死に向き合う機会が後退しているのは、悲嘆にくれる家族を支える近隣の地域社会の弱まりによるものでしょうし、その原因は、交替制勤務や長時間労働の会社勤めの人が増加したことによるものでしょう。隣人の死を悼むいとまもない、チャップリンの「モダンタイムス」のような世の中には、なってほしくないものです。

そういえば、第九の演奏シーンは、山響でした。チェロの茂木さんは何度も出ていましたし、ヴァイオリンの中島さんも、はっきりとわかりました。飯森さんにいたっては、主演男優級のどアップ。もし、「おくりびと」がオスカーを取ったら、山響の皆さんも、オスカー受賞俳優の仲間入りをするのでせうか(^o^)/
ピツィカートでお腹の子どもに聴かせた「ブラームスの子守歌」も良かったが、全編に流れる久石譲のチェロの音楽が素敵でした。
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『小泉八雲集』を読む

2009年02月02日 06時53分47秒 | 読書
新潮文庫で、上田和夫訳『小泉八雲集』を読んでいます。子供のころ、断片的に読んではいるのですが、大人向けの本として、全部を通読するのは初めてです。
「むじな」や「耳なし芳一」や「雪女」の話などはともかくとして、むしろ驚かされるのは、「日本人の微笑」についての分析など、日本文化や伝統についての考察です。本名ラフカディオ・ハーンの周囲には、よほど立派な日本人が集まっていたのではないかと思えるほど、教養ある日本人や日本文化への好意的な見方が印象的。ただし、それも西洋の文明や社会に対する、かなり皮肉で激しい絶望や嫌悪のもたらすものであるようで、礼賛を額面どおりに受け取ることはどうかと思われます。
にもかかわらず、「停車場にて」や「赤い婚礼」などの印象的な短編は、たいへんに劇的な効果を示しながら、記憶に残る文章になっています。
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山形弦楽四重奏団第30回定期演奏会を聴く

2009年02月01日 12時18分06秒 | -室内楽
土曜の夕方、山形弦楽四重奏団の第30回定期演奏会を聴きました。当日は、あいにくの雪模様で、山形市内に入ると道路に雪の轍(わだち)ができていて、走りにくいことこの上なし。当方の田舎でも、もう少しきちんと除雪されているぞ、と文句を言いながら、予定よりもだいぶ遅れて、会場となる文翔館議場ホールには6:25頃に到着、Ensemble Tomo's のプレコンサートは、もうすぐ終わるところでありました。

今回のプレトークは、チェロの茂木明人さん。ブログ(*1)でもユーモアの感覚と独自の視点が面白い演奏家です。プログラムノートの曲目紹介も、教養主義的でなくて、伝統的駄洒落保存会へ入会をお勧めしたいようなユーモラスなもの(*2)でした。印象的だったのは、自分の楽器で自分の国の音楽を演奏できることの幸せについて語ったところ。学生時代に、世界各国の音楽家のタマゴが集まったとき、自分の国の音楽をやってくれと言われ、何も知らずに恥ずかしかった記憶を語ります。

さて、プログラムの最初の曲目は、ハイドンの弦楽四重奏曲ニ長調作品50-6「蛙」。ヴィオラの「らびお」さんのブログ「らびおがゆく Vol.3」の解説(*3)によれば、第1楽章、アレグロ、ニ長調・4/4、第2楽章はポコ・アダージョ、ニ短調・6/8、第3楽章はメヌエットで、アレグレット、ニ長調・3/4、そして第4楽章フィナーレは、アレグロ・コン・スピリート、ニ長調・2/4だそうです。これは、なかなか魅力的な音楽ですね!ハイドンの弦楽四重奏曲は、特に第1ヴァイオリンの役割の比重が大きいと感じています。この曲でも、第2楽章の超ハイトーンの音程など素人目にもたいへん難しそうですが、なんとか奏き切って、内心「やったね!」。チェロの調弦の後に第3楽章がスタート。軽やかなメヌエットです。そして第4楽章、なるほど、これが「ゲコゲコゲコ」ですか。おもしろ~い!今回は、えんじ色?緑色?ライトの当たり方でどちらの色にも見える、体にぴったりしたドレスの「だちゅ」こと駒込綾さん、退場する時の姿が、ファースト・ヴァイオリンの役割を果たし、るんるん♪に見えましたし、心なしか他のメンバーの皆さんも気分はハイテンションのようです。

続いて、第1ヴァイオリンが中島光之さんに交代し、駒込さんが第2ヴァイオリンにまわります。幸松肇「弦楽四重奏のための4つの日本民謡第1番」。こちらは、(1)さんさ時雨(2)そーらん節(3)五木の子守唄(4)ちゃっきり節、の四曲が、それぞれ第1楽章~第4楽章という構成になっています。
第1楽章、ヴィオラで「さんさ時雨」の旋律が始まります。次いでチェロが旋律を歌い、ヴィオラがハーモニーを。さらに第1ヴァイオリンに移り、という具合。耳に馴染んだ隣県の民謡の旋律が、なんともすてきなものであることをあらためて確認しました。
第2楽章、「そーらん節」はリズミカルに第1ヴァイオリンがリード。裏拍のようなリズムが面白い音楽です。古典的なソナタ形式なら、さしずめスケルツォ楽章に相当するのでしょうか。
第3楽章、「五木の子守唄」。始まりのヴィオラが旋律が美しく、ヴァイオリンに移り、広がりを感じさせるチェロが開放的に。半音階ふうの部分をはさみ、チェロのピツィカートの中で高音弦が旋律を再現します。これはまた魅力的な緩徐楽章です。
第4楽章、「茶っきり節」は、リズミカルで粋でいなせな風情がよく出た音楽です。快速なフィナーレ楽章に相当するのでしょう。とびきり楽しい音楽になっています。
昨年秋の、村山市東沢バラ公園でのミニ・コンサートでも同じ曲目を取り上げていましたが、今回は作曲家ご本人が来場という緊張感もあり、全体に活発な伸びやかさよりもシリアスなほうに深まり、集中力を増した演奏に感じました。

そして注目の、幸松肇「弦楽四重奏のための最上川舟唄」(山形弦楽四重奏団委嘱作品・日本初演)です。チェロの茂木さんが、楽器を裏返して構えます。おやおや、何が始まるのかと見ていたら、チェロ、第1Vn、第2Vnが指で胴を打ちリズムを取る中で、ヴィオラが最上川舟唄のメロディーを奏し、第1ヴァイオリンがチェロのピツィカートにのって旋律を引き継ぎます。第2ヴァイオリンとヴィオラが内声部を支え、一部ややジャジーな、ややブルースっぽいところもある節回しです。続いて四人の奏者による緊密なアンサンブルによる響きが楽しめ、再びなじみの旋律に戻りますが、最後は鋭い現代的な終わり方。かっこいい!思わず拍手!です。

作曲された幸松肇さんが、黒っぽいブレザーにシックな暗赤色のタートルネックというダンディな姿(*4)でステージへ。団員一人一人と握手をかわし、聴衆のあたたかく盛大な拍手を受けて、笑顔で客席に戻りました。

休憩の後は、本日最後のプログラム、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第9番ハ長調Op.59-3、いわゆる「ラズモフスキー第3番」です。この曲は、いわばベートーヴェンの弦楽四重奏曲を代表するような名曲中の名曲なわけですが、「室内楽なんて堅苦しくて辛気臭くて好きでない!」という誤解のもとになっている、まさにその曲でもあります(^o^;)>poripori
なにせ、第1楽章の出だしが、まるで現代音楽のような不安定で曖昧模糊としたものですから、魅力的な旋律で聴衆の耳をキャッチするというわけにはいきません。山形弦楽四重奏団は、それほど前衛的なきつい響きは採らず、ヴィヴラート控えめの響きで、灰色の霧の中から徐々に黒っぽい姿が浮かび上がってくるような、そんな姿を描き出します。序奏はアンダンテ・コン・モトで、やがてアレグロ・ヴィヴァーチェに。活力ある緊密なアンサンブルは、常設の弦楽四重奏団ならでは、でしょう。
第2楽章、イ短調、アンダンテ・コン・モト・クワジ・アレグレット。印象的なチェロのピツィカートに乗って歌われる、憂鬱な主題が魅力的です。たぶん、暗~い音楽が好きな人には圧倒的に支持されるであろう音楽ですが、実は私も大好きです、この楽章。平均年齢がそう高くない楽団らしく、テンポはそれほど遅くない、気合や気力が感じられる演奏です。
第3楽章、メヌエット:グラツィオーソ。優美なメヌエットとはいえ、中期のベートーヴェンらしく力感のある音楽になっています。この曲の中では一番短い楽章で、コーダから続けて(アタッカで)終楽章へ。
第4楽章、アレグロ・モルト。4人の奏者がそれぞれしっかりした役割が求められ、ハイドンとは違って第2ヴァイオリンの指もヴィオラの弓も、目まぐるしく動きます。途中、例えば第1ヴァイオリンとヴィオラの2人が気迫で勝負するようなところも面白く、エネルギッシュなフーガが最後に四人の白熱したコーダとなって演奏が閉じられると、思わずブラボーの声もかかりました。

拍手に応えてアンコールとして演奏された、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.33-3「鳥」の晴れやかなフィナーレに、ああやっぱりハイドンはいいなぁ、とあらためて感じました。今日も、いい演奏会でした。地元ゆかりの委嘱作品もできた山形弦楽四重奏団、茂木さんのプレトークにあった、自分たちの国の音楽というだけでなく、自分たちの活動する土地に立脚した音楽を得て、ますます充実した演奏活動となりますように、心から応援したいと思います。

(*1):チェロリスト活動日誌
(*2):独りぽつねんと佇む蛙に一緒に飯でもと声をかけたら、一杯おごるとも言っていないのに「下戸、下戸っ!!」と言って行っちゃった、みたいな(^o^)/
(*3):ハイドン 弦楽四重奏曲ニ長調Op.50-6「蛙」~「らびおがゆくVol.3」より
(*4):山形Q第30回定期演奏会終了~「らびおがゆくVol.3」より

写真は、休憩時の文翔館議場ホールの様子です。文化財の建物の中での演奏会は、雰囲気も気分もまた格別です。
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