電網郊外散歩道

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ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第3番」を聞く

2006年04月29日 21時59分13秒 | -協奏曲
温泉にて宴会の翌日、帰宅してから爽やかな午前中に昼寝をした。実に気持ちがいい。午後から、ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第3番」ハ短調、Op.37を聞いた。演奏は、レオン・フライシャー(Pf)、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団。1961年4月14日、クリーヴランドのセヴェランス・ホールで録音されたものを、デジタル・リマスタリングしたもので、比較的聞きやすい音質に改善されている。

新潮文庫版「ベートーヴェン」(平野昭著)によれば、第1および第2交響曲を完成し、ハイリゲンシュタットの遺書の危機を乗り越えた1803年、ベートーヴェンは、アン・デア・ウィーン劇場で二つの交響曲とオラトリオ「橄欖山上のキリスト」、そして自身のピアノ独奏でこのピアノ協奏曲第3番を演奏したとある。なんとも豪華で重量級のプログラムだ。

第1楽章、アレグロ・コン・ブリオ、モーツァルトの短調のピアノ協奏曲を思わせる、悲劇的な気分を持った序奏部の音楽。独奏ピアノが入って来ると、悲劇的な気分だけでなく颯爽としたテクニックを聞かせるところもある。「英雄」交響曲直前の時期を示す、若々しく充実した音楽だ。
第2楽章、ラルゴ。詩情にみちた深い演奏。ベートーヴェンの緩徐楽章の魅力はたとえようがない。
第3楽章、ロンド、アレグロ。管弦楽の響きは重厚で、しかもリズムは軽やか。フライシャーのピアノも自在に駆け回る。これは演奏家冥利に尽きると言ってよいのではないか。

ベートーヴェンの五曲のピアノ協奏曲の中で、唯一の短調の曲。しかも、ハ短調という調性を持つこの曲は、セルのきりっと引き締まったテンポの速い演奏によって、センチメンタルに流れない、いい音楽になっている。

この曲を最初に聞いたのは、たしか1970年前後で、ジョン・オグドンが来日し、N響と演奏会を開いた、テレビ放送を見たときだと思う。指揮は誰だったか忘れてしまったが、ハインツ・ワルベルクあたりだったろうか。ジョン・オグドンが、まだ不幸な病気に苦しむ前(*)で、元気な姿を見せていた頃だった。従弟が中学生か高校生で、音楽の宿題でこのテレビ番組を視聴し、レポートを出さなければならないとかで、一緒に見たのだったと記憶している。レオン・フライシャーもまた、難しい病気に悩み、先ごろ数十年ぶりにようやく回復したことが報道されたばかりだ。作曲家ばかりではなく、演奏家の悲劇にも心うたれるものがある。

参考までに、演奏データを示す。
■フライシャー(Pf)、セル指揮クリーヴランド管 (SONY SBK-47658)
I=15'21" II=9'45" III=8'34" total=33'40"
■アシュケナージ(Pf)、メータ指揮ウィーンフィル (F35L-50018)
I=17'25" II=10'23" III=9'12" total=37'00"

(*): Wikipediaの記述より、「ジョン・オグドン」
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2 コメント

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TBありがとうございます (yurukamome122)
2006-04-30 09:49:56
フライシャーさんはやっと両手で復帰したと聴きました。もう20年くらい前になるでしょうか、彼が左手だけのピアニストとして来日してラベルの曲と何かを指揮したのを覚えていますが、実はあまり印象に残っていなかったのですが、セルとのこのベトベン、セルとの演奏が合っていて認識を新たにしました。すばらしいピアニストでしたね。
2番のピアノ協奏曲も素晴しい (narkejp)
2006-04-30 18:50:21
コメントとトラックバックをありがとうございます。

ついでに、と言ってはなんですが、2番のピアノ協奏曲も聞いています。セルのバックは、聞きごたえがあります。アシュケナージと賞を分けあったジョン・オグドン、アシュケナージが今はN響の指揮者として活躍しているのを見ると、運命とはいえ、ほんとに気の毒でした。

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