若い頃に、ある録音が大きな話題になりました。1969~70年頃でしょうか、スヴャトスラフ・リヒテル(Pf)、ダヴィード・オイストラフ(Vn)にムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(Vc)の三人に、カラヤン指揮ベルリン・フィルという組み合わせで、ベートーヴェンの三重協奏曲のLPが発売されたというのです。当時のチラシが手元にありますが、「一体、誰がこの顔合せを予想しえたか」「偉大な4つの個性、白熱の競演が生んだ人類の遺産!」というキャッチコピーに、LP全盛期の勢いを感じます。
当時の雑誌の批評には、噴飯物の文章もありました。今でも記憶に残っているのは、「ベートーヴェンが書いた駄曲を、偉大な演奏がよみがえらせた」というのです。世間知らずの若者(当方)は、それを素直に文字通り信じたのでした(^_^;)>poripori
時は流れて30数年、レオン・フライシャーとセル指揮クリーヴランド管弦楽団によるベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を購入し、「皇帝」協奏曲のCDの余白にさりげなく併録されたスターン・トリオとオーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏に、積年の大誤解が解消されました。「けっこういい曲、いい演奏じゃないか!」
ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための協奏曲、ハ長調、作品56。エロイカ交響曲の次の作品番号を持ち、ワルトシュタイン・ソナタと同年の作品のどこが「駄曲」というのかよくわかりませんが、野心的な、充実した作品と感じます。
第1楽章、アレグロ。低弦がつぶやくフレーズが、やがて朗々と歌われる旋律になっていきます。同じ主題でも、チェロとヴァイオリンとでは音域に伴い表情も違いますし、ピアノが奏でる主題は音色の面でも違います。でも、たしかに同じ主題によるもの。基本的には複数の独奏楽器が交互にオーケストラと協奏する合奏協奏曲のスタイルを取りながらも、三人のソリストがまるでピアノトリオのように絡み合う場面もあり、ピアノトリオとオーケストラが競演するような趣向にもなっている模様。
第2楽章、ラルゴ。出だしのチェロの独奏がいいですなぁ。そしてピアノにバトンタッチした後にヴァイオリンが引き継ぐ黄金のリレー。ここからの音楽は、まさしくピアノトリオの味わい。オーケストラは、まるで控えめに後ろで出番を待っている風情です。
第3楽章、ロンド・アラ・ポラッカ。ピアノトリオの出番が終わると、ひきつづき本命のオーケストラが登場。三人のソリストが絡み合いながらオーケストラに対抗し主張します。この楽章は、初めて聴く人にも人気が出そうな、魅力的なリズム、メロディ、そして盛り上がりです。
ユージン・イストミンのピアノ、アイザック・スターンのヴァイオリン、レナート・ローズのチェロ、ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏、カラヤン盤に先立つこと5~6年、1964年4月、フィラデルフィアのタウンホールでの録音(CBS SBK-46549)です。スターン・トリオの息はぴったりとあっていますし、オーマンディ指揮するフィラデルフィア管も素晴らしい演奏をしております。この演奏の存在を、30数年前の私が単に知らなかっただけなのでした(^_^;)>poripori
参考のために、演奏データを示します。
■イストミン、スターン、ローズ、オーマンディ指揮フィラデルフィア管
I=18'20" II=4'39" III=13'00" total=35'59"
当時の雑誌の批評には、噴飯物の文章もありました。今でも記憶に残っているのは、「ベートーヴェンが書いた駄曲を、偉大な演奏がよみがえらせた」というのです。世間知らずの若者(当方)は、それを素直に文字通り信じたのでした(^_^;)>poripori
時は流れて30数年、レオン・フライシャーとセル指揮クリーヴランド管弦楽団によるベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を購入し、「皇帝」協奏曲のCDの余白にさりげなく併録されたスターン・トリオとオーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏に、積年の大誤解が解消されました。「けっこういい曲、いい演奏じゃないか!」
ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための協奏曲、ハ長調、作品56。エロイカ交響曲の次の作品番号を持ち、ワルトシュタイン・ソナタと同年の作品のどこが「駄曲」というのかよくわかりませんが、野心的な、充実した作品と感じます。
第1楽章、アレグロ。低弦がつぶやくフレーズが、やがて朗々と歌われる旋律になっていきます。同じ主題でも、チェロとヴァイオリンとでは音域に伴い表情も違いますし、ピアノが奏でる主題は音色の面でも違います。でも、たしかに同じ主題によるもの。基本的には複数の独奏楽器が交互にオーケストラと協奏する合奏協奏曲のスタイルを取りながらも、三人のソリストがまるでピアノトリオのように絡み合う場面もあり、ピアノトリオとオーケストラが競演するような趣向にもなっている模様。
第2楽章、ラルゴ。出だしのチェロの独奏がいいですなぁ。そしてピアノにバトンタッチした後にヴァイオリンが引き継ぐ黄金のリレー。ここからの音楽は、まさしくピアノトリオの味わい。オーケストラは、まるで控えめに後ろで出番を待っている風情です。
第3楽章、ロンド・アラ・ポラッカ。ピアノトリオの出番が終わると、ひきつづき本命のオーケストラが登場。三人のソリストが絡み合いながらオーケストラに対抗し主張します。この楽章は、初めて聴く人にも人気が出そうな、魅力的なリズム、メロディ、そして盛り上がりです。
ユージン・イストミンのピアノ、アイザック・スターンのヴァイオリン、レナート・ローズのチェロ、ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏、カラヤン盤に先立つこと5~6年、1964年4月、フィラデルフィアのタウンホールでの録音(CBS SBK-46549)です。スターン・トリオの息はぴったりとあっていますし、オーマンディ指揮するフィラデルフィア管も素晴らしい演奏をしております。この演奏の存在を、30数年前の私が単に知らなかっただけなのでした(^_^;)>poripori
参考のために、演奏データを示します。
■イストミン、スターン、ローズ、オーマンディ指揮フィラデルフィア管
I=18'20" II=4'39" III=13'00" total=35'59"
そうそう、我らが山響でも、来年の1月の第265回定期で、黒岩秀臣さんの指揮、永田美穂さんほかの演奏で、この曲を聴くことができそうです。今から楽しみです(^o^)/
http://www.yamakyo.or.jp/concert/2018/01/concert_1232.html#info
ところがこの曲の評価が低いと聞いて、とてもショックを受けました。それでこの記事を見つけたんですが、詳しい方々の意見を読むことができて、ありがたかったです。
近年の演奏もいくつか聴いてみたのですが、やはりバレンボイムのがよかったのです。素人だからそう感じたのでしょうか。
みなさんの挙げられた過去の名演も聴いてみます。ありがとうございました。
ピアノパートを、弟子のルドルフ大公が弾けるように比較的容易に書いたのが、低い評価の一因とも言われるようですが、協奏交響曲的な社交的な機会作品ということもあるでしょうが、素人的には機会音楽のすべてが価値が低いわけでもないと思うのですが。
大スターたちの共演もよいですが、今朝の朝日のbeで話題になった井阪さんのカメラータ・トウキョウ盤のもの(若手のピアノトリオとアントルモン指揮)も結構親密で楽しいです。
予約販売の形で買いました。「本当にいい曲なのか?」と疑いながら予約したのを思い出します。
どこが「駄曲」というのか・・・難しいところですね。あえて言うなら、3つのソロ楽器の外見さに
比べて、楽曲の核心的(?)充実さに弱さを感じる
ような気がします。ベートーヴェン中期にかけての
創作欲に満ちた内面の強さ・輝き、うん、うまく
言えないが、聴いていて一寸寂しいんかな。
いや~、偉そうなこと書いてごめんなさい。
協奏曲として確かに野心的作品ではありますね。
オーマンディーのは知りませんが、私はアラウ、
シェリング、シュタルケル/インバルとニュー・
フィルハーモニア・オーケストラのLP盤を持って
います。
オケはカラヤンの甘美さでなく、もっとアクセントと
どすを利かせたような(第1,3楽章)感じがします。